近年で注目を浴びている総合型選抜。多くの私立大学や国公立大学で実施されており、入学する人も増えています。今回は、今さら聞けない総合型選抜の基本を解説します。
総合型選抜(旧AO入試)について
大学の入試方式には、一般選抜、学校推薦型選抜、総合型選抜があり、その中の一つです。
以前はAO入試(アドミッションズ・オフィス入試)と呼ばれていましたが、2020年から始まった大学入試改革の一環により名称が変更され、2021年4月の入学者を選抜する入試から、総合型選抜と呼ばれるようになり、その中身も変更されました。
選抜方法は大学が求めている学生を選抜するようになっています。そのため、志望する大学で「どんなことをしたいのか」「何を学びたいのか」といったことを重視して見られるようになっているため、自身がその大学を志望する理由や意欲を強く伝える必要があります。
学校長の推薦書は必要なく、志望理由書や調査書から行われる書類審査や面接、小論文などにより、知識や思考力、表現力等々が多面的に評価されます。面接ではプレゼンテーションやグループディスカッションなどか課される大学もあり、また、学力試験が課されることもあります。
これらは大学によって特色がありさまざまです。
他の入試方式との違い
様々な入試形式が近年では実施されています。しっかりと違いと理解することで、メリット・デメリットを把握していきましょう。
一般選抜との違い
一般選抜は基本的に学力検査の得点によって合否が決まりますが、総合型選抜では大学によって選抜方法が違ってきます。前述のように書類審査や面接、小論文、大学によっては学力検査が課されることもあります。
一般選抜のスケジュール
一般選抜の選考は1月〜3月に実施されます。総合型選抜の場合は、それよりも早い9月〜11月が多く、一般選抜よりも先に行われます。また、共通テストを課す大学の場合は1月に共通テストを受ける必要があるため、一般選抜と比べて選考期間が長くなることもあります。
学校推薦型選抜との違い
学校推薦型選抜との違いは、高校の推薦が必要ないということです。それに伴い、学校推薦型選抜では学校長からの推薦状が必要ですが、総合型ではそれを必要としません。
また、学校推薦型選抜は基本的に出願条件には評定平均が定められていますが、学校推薦型選抜は大学によって異なります。ただし、調査書を求められることは多いです。
試験内容はどちらも小論文や面接があることは共通していますが、総合型選抜ではグループディスカッションやプレゼンテーションが求められることもあり、こちらも大学によって異なってきます。
また、実際に大学の授業を受けてレポートを書いたり、筆記試験を受けるといった試験を課されることもあります。
学校推薦型選抜のスケジュール
学校推薦型には指定校推薦と公募制推薦があります。
指定校推薦のスケジュールは6月〜8月にかけて公開され、校内選考は10月までに完了します。その後、10月〜11月頃に面接、小論文、学科試験などが行われ、合格発表は12月頃になります。公募制推薦の募集要項は私立大学の場合6月下旬頃から、国立大学の場合は7月下旬頃からです。
出願期間は11月以降です。会場での試験は11月〜12月に実施されます。総合型選抜の9月〜11月と比較すると、開始時期は学校推薦型選抜の方が早い傾向にあります。
総合型選抜と学校推薦型選抜の入試の種類や違い
| 学校推薦型 指定校制 | 学校推薦型 公募制 | 総合型選抜 | |
| 内容 | 大学が特定の高校を指定する選抜 | 大学側の出願条件を満たし、かつ高校からの推薦がもらえれば誰でも出願できる推薦入試制度 | 大学・ 学部が求める学生像(アドミッション ・ポリシー)にマッチした受験生を採用する方式 |
| 入学比率 | 国公立15.9%、私立41.4% | 国公立5.4%、私立17.3% | |
| 学校の成績 | 3年生1学期※ までの成績 | 基準や点数に加点する場合もあるが、不要なときもある | 出願 基準にない場合もある |
| 校長の推薦 | 必要 | 必要 | 基本的に不要 |
| 現役・既卒 | 現役 | 大学によっては既卒者も可 | 既卒者も出願可の大学が多い |
| 専願・併願 | 専願 | 併願もある | 専願がほとんど |
| 選抜方法 | 調査書や書類などのほか、 小論文や面接 | 国公立は共通テストを課すもの、課さないものがある。調査書や書類などのほかに、小論文や面接、基礎学力試験 や適性検査など | 公募制と似ているが、小論文と面接が中心b英語外部試験が必要になる場合も |
| 特徴 | 希望者が多い場合は校内選考 学校の 評定が必要 | 併願可であれば公募推薦を複数受験 することも可能。特別推薦でスポーツや英語検定、ボランティアなどを評価したり、商業科や工業科などの定員枠がある場合もある | 出願時に書類が多い |
※前期・後期制の場合は前期までの成績
学習成績概評
「学習成績の状況」は、履修した全科目の評定を平均したもので、 「評定平均値」と呼ばれていました。この「 学習成績の状況」をもとに、高校3年間の成績を A~Eの5段階で表したものが 「 学習成績概評」です。学習成績概評は、Aが学習成績の状況5.0〜4.3、Bが4.2〜3.5、Cが3.4〜2.7、Dが2.6〜1.9、Eが1.8以下となっています。大学によってはAでないと出願できないところもあります。
| 全体の学習成績状況 | 学習成績概要 |
| 5.0〜4.3 | A |
| 4.2〜3.5 | B |
| 3.4〜2.7 | C |
| 2.6〜1.9 | D |
| 1.6以下 | E |
高1〜高3の1学期※までの前評定合計の平均値(5点以上
=全体の学習成績の状況
※前期・後期制の場合は前期までの成績
総合型選抜の基本パターン
選抜型
- 書類+面接
- 書類+小論文+面接
- 書類+学力試験+面接
国公立大学や難関大学に多いパターンです。小論文やレポート、志望理由書や自己推薦書などを課して、その内容をもとに面接をします。国公立大学の場合、共通テストを課す場合もあります。
実技・体験型書類※+セミナー・スクーリング・プレゼンテーション+面接
※書類:調査書、推薦書、志望理由書など
模擬授業やセミナー、実験などのプログラムがあり、その参加が出願条件となっています。その中で、レポート・課題提出などを行います。出願が夏前から始まり、先行が長期間になりやすいという特徴があります。
国立大学の総合型選抜
【共通テストを課さない選抜】広島大学 理学物理学科の場合
出願書類(調査書及び自己推薦書)+面接+筆記試験
筆記試験:数学の基礎知識・思考力・表現力を見る問題
【共通テストを課す選抜】横浜国立大学 経済学部の場合
第1次選考 英語試験・検定試験のスコアによる選抜
第2次選考 面接+出願書類
(調査書・外部英語試験の成績証明書・自己推薦書)
第3次選考 2次選考の成績+大学入学共通テスト
※変更の場合があるため、詳細は必ず大学HPをご確認ください
私立大学の総合型選抜
法政大学 キャリアデザイン学部の場合
専願・学習成績の状況が3.8以上
第一次選抜 書類審査(調査書・志願理由書等)
第二次選考 小論文・面接
立命館大学 政策科学部の場合
第一選考 書類選考(エントリーシート)+セミナーのレポート
講義→質問→レポート作成
第二次選考 個人面接+グループディスカッション
総合型選抜のスケジュール
総合型選抜の出願開始は9月1日からです。そして、合格発表は11月1日以降に行われます。
大学によってはオープンキャンパスや個別説明会への参加を出願要件としているところもあるため、その場合は9月1日の出願のタイミングよりも前に実施されることがあるので、エントリーを忘れないように注意しましょう。
一般選抜や学校推薦型選抜と比較すると早めに試験が行われるため、準備や対策も早めに行う必要があります。
総合型選抜を受けている人の割合
文部科学省の令和4年(2022年)度の大学入学者の入試区分別割合をみてみると、総合型選抜で入学している人は全体で13.6%でした。
国公立大学と私立大学では、私立大学の方が総合型選抜で入学した人が多いことが分かります。総合型選抜を実施する大学は国公私立全てにおいて年々僅かですが増加傾向にあり、入学する人も年々増加傾向にあります。
参照:令和4年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要
総合型選抜の対策方法
総合型選抜では面接や小論文、プレゼンテーションなどの選考方法があり、これらはなるべく早めに対策をしておきたいです。
また、各大学ごとに求める学生像が違います。そのためには、高1や高2のうちから志望大学をしっかりと定めて、その大学の学部・学科をよく調べておく必要があります。
オープンキャンパスにはなるべく参加をして、学部・学科の情報を聞いてくる、資料請求やインターネットを使ったリサーチをするなど、その大学・学部・学科のアドミッションポリシーをよく理解するようにしておきましょう。
特に、オープンキャンパスは参加することが出願要件に含まれていることもあるので、しっかりと確認しておくようにしましょう。
総合型選抜では学力が問われないと思われることもありますが、特に国公立大学の選抜の中では大学共通テストが課されることが多いです。また、私立大学でも面接で志望分野の知識を問われることがあり、どこの大学でも、各教科・科目に係るテストや口頭試問、レポートなどが課され、何らかの形で学力が問われます。
そのため、総合型選抜だからといって学習を疎かにしないことが大切です。

次に、総合型選抜では活動報告書、学修計画書、大学入学志望理由書といった書類審査があります。
そこには学内外での諸活動を書く必要があり、部活動やボランティア活動等でどのような結果を残したかが重視されます。これらは3年生になってから取り組もうと思っても難しいので、1年生のうちから積み重ねて努力していきましょう。
また、これらの結果を大学側にしっかりと伝えるために、書類選考や面接の対策をする必要があります。
3年生の6月頃には各大学で募集要項の公開が始まるので、志望校に合わせて自分かこれまでに行ってきたこと、またそこから得られたことや努力してきたことといった自分の強みをしっかりアピールできるように、論理的思考を養っておくようにしましょう。
語学検定や資格について
総合型選抜では、実用英語技能検定、TOEIC(R)テスト、TOEFL(R)テスト、GTEC等の語学検定や学部・学科に関わる資格・検定を評価対象にする大学があります。
こういった資格や検定を取得しておくと選考の際に有利に働くので、募集要項の確認を早めに行なって、対策から取得までを目指すと良いでしょう。
総合型選抜の注意点
総合型選抜は学校推薦型選抜の指定校推薦とは違い、学校長の推薦状は必要ありませんが、大学ごとに求める学生像が違い、募集定員もあるため不合格になる可能性もあります。
また、出願には学習成績(評定平均)の状況が条件にある大学もあり、その条件を満たしていなければ出願することもできません。そのため、前述の通り大学ごとに合わせた対策が必要であり、1年生の時から学内外での諸活動から学習まで幅広く努力していく必要があります。
また、もう一点注意しておきたいこととしては、他大学の入試と併願できないことが多いということです。
大学側としては、強く入学を希望する生徒を求めており、そこが合否の判断基準でもあります。そのため、併願は不可で専願であることがほとんどです。また、合格したら必ず入学しなければならないことが多いのも特徴なので、絶対入学したいと思える大学を絞り、徹底的にリサーチを行い、しっかりとした意思を持って受験をすることが大切になってきます。
ただし、入試要項に専願という記載がなければ併願することは可能なので、併願をする際は第一志望の大学と受験日が被っていないか注意してスケジュールを立てていくようにしましょう。
総合型選抜の良い点、悪い点
総合型選抜の良い点は、受験の時期が早いことから、不合格になってしまっても学校推薦型選抜や一般選抜といった他の受験方式で受験をするチャンスがあることや、出願書類の作成や面接の対策を行うことで、受験を通して自分と向き合えるといった点です。また、自分の得意分野や強みが評価されるのも総合型選抜の良い点といえるでしょう。
総合型選抜の悪い点は、高校1年生のうちから学校内外の諸活動に力を入れていく必要があるので、遅れてからでは対策が難しい点です。また、総合型選抜は上記のようにやることが多く、一般選抜も同時に目指そうとするとそちらがおざなりになってしまいがちなことです。
受験の機会は増えますが、多くのことを抱えながら多方面の対策を行うには、それをするための努力、すなわち精神力も体力も必要になってきます。
総合型選抜で落ちてしまったら
もし総合選抜に落ちてしまったとしても、総合選抜は9月から受験が始まることもあり、その後に学校推薦型選抜や一般選抜といった他の受験方式で受験することもできます。
そのためには、学校推薦型選抜や一般選抜の対策をしておく必要がありますが、そもそも総合型選抜では前述の通り1年生のうちから良い学習成績(評定平均)を収めるための努力が必要であったり、学力検査のための対策を必要とするため、その積み重ねを他の受験方式に応用することができます。
相応の努力は必要ですが、総合型選抜で落ちてしまった時、他の受験方式にシフトできるようにしておくと安心でしょう。
総合型選抜を受ける人がやるべきこと
総合型選抜は志望する分野に関する学習や大学入学後に学ぶことへの意欲が重視されます。そのため、日頃からそれらにどれだけ興味関心を持ち取り組むことができるかが重要です。
そういった日々の積み重ねを書類ではしっかりと書けるようにして、面接ではしっかりと語れるようにすることが一番重要で、やるべきことです。
これらは短期間で行えることではなく長期間取り組む必要があるので、総合型選抜は自分自身が学びたいことに興味や関心がある人に向いている受験方式といえます。
そのため、無理に総合型選抜を受けるのではなく、まず、総合型選抜が自分のスタイルに合っているのかも今一度考えてみると良いでしょう。

次に、総合型選抜を受ける人は2年生の夏には志望する大学や学部・学科を絞り、オープンキャンパスに参加するようにしましょう。オープンキャンパスでは、受験相談に参加したり、大学のアドミッションポリシーについて理解を深めることが必要です。
そして、そこからは書類や面接に備えて、自分が学びたいと思うテーマを見極めて探究をしていく期間になります。書類や面接の対策であれば短期間で行うこともできるので、どちらかといえばその中身についてどれだけ深掘りすることができるかが重要です。それができていないと、書類や面接の内容が薄くなってしまうので、自身の定めたテーマについて探究することを常に心掛けていきましょう。



