大学の学費や受験料は、国公立大学と比べると高いという印象をお持ちではないですか?大学に入学してからも、授業料以外に施設設備費や実習費、教科書代などさまざまな費用がかかります。どのくらい卒業までに費用がかかるのか、あらかじめ知っておくことで備えもできるでしょう。この記事では、私立大学の学費や諸経費について、国公立大学と比較しながらお伝えしていきます。文系、理系、医歯系に分けて記載していますので、ぜひ希望の進学先をイメージしながらお読みください。また、最後には学費免除や奨学金制度についても解説しています。
目次
受験時にかかる費用
大学受験にあたっては、まず受験料が必要です。国公立大学や、共通テスト利用入試を使って私立大学受験をする場合は、1月に行われる大学入学共通テストを受験します。その後、2月から3月にかけて、国公立大学の2次試験や私立大学の一般入試の受験料も必要です。
下記が、共通テストおよび、国公立大学2次試験、私立大学一般入試の平均受験費用になります。
- 大学入学共通テスト(3教科以上):1万8000円
- 大学入学共通テスト(2教科以下):1万2000円
- 国公立大学2次試験:約1万7000円
- 私立大学一般入試:約3万5000円
入学時にかかる費用
大学入学にあたっては、入学金や学費、施設設備費などが必要です。
初年度納付金の平均は?
文部科学省の「国公私立大学の授業料等の推移」および「平成30年大学等納付金調査」によると、入学金、学費、施設設備費を合計した初年度納付金の平均は下記のとおりです。
入学金 | 年間授業料 | 施設設備費 | 合計 | |
国立大学 | 28万2000円 | 53万5800円 | なし | 81万7800円 |
公立大学 | 39万3618円 | 53万8633円 | なし | 93万2251円 |
私大文系 | 22万9997円 | 78万5581円 | 15万1344円 | 116万6922円 |
私大理系 | 25万4309円 | 110万5616円 | 18万5038円 | 154万4963円 |
私大医歯系 | 107万3083円 | 286万7802円 | 88万1509円 | 482万2394円 |
授業料が国で定められている国公立大学と異なり、私立大学では大学や学部により費用が異なります。私立大学は文系学部に比べ理系学部のほうが、実験を含めた少人数授業も多くなり教授陣の人件費もかかるため、費用が高くなります。とくに医歯系では実習費用や設備費用が高額になるため、初年度納付金も500万円近くと飛び抜けて高額です。
入学金等の支払時期
大学に合格すると、まず支払うことになるのが入学金です。一般的には合格発表から10日間前後が入学金の振込締切日に設定されています。たとえば早稲田大学政治経済学部の場合、2月28日に合格発表が行われ、第1次(入学金支払い)締め切りは3月8日です。初年度の学費は多くの大学で、前期分と後期分の2回に分けて支払いを行います。早稲田大学政経学部の場合は、第2次(春学期分学費等支払い)締め切りが3月24日に設定されていました。つまり、合格発表から約1か月の間に、入学金や前期授業料などを納入することになると考えておいてください。
在学中にかかる費用
大学在学中にかかる費用は、基本的には授業料と施設設備費になりますが、所属する学部によってはゼミ費用や合宿費用が別途必要です。また、在学中に海外留学をしたり、家庭の事情などで休学したりする場合には、留学費や休学費もかかってきます。大学院進学を考えている場合は、大学院の費用も合わせて考えておきましょう。
大学4年間の授業料・施設設備費の平均
文部科学省の「国公私立大学の授業料等の推移」および「平成30年大学等納付金調査」によると、大学4年間(医歯系は6年間)の合計授業料、施設設備費の平均は下記のとおりです。
入学金 | 4年間(医歯系6年間)授業料 | 施設設備費 | 合計 | |
国立大学 | 28万2000円 | 214万3200円 | なし | 242万5200円 |
公立大学 | 39万3618円 | 215万4532円 | なし | 254万8150円 |
私大文系 | 22万9997円 | 314万2324円 | 60万5376円 | 397万7697円 |
私大理系 | 25万4309円 | 442万2464円 | 74万152円 | 541万6925円 |
私大医歯系 | 107万3083円 | 1720万6812円 | 528万9054円 | 2356万8949円 |
国公立大学の場合、施設設備費は原則かかりません。私立大学と比べると授業料の差も大きく、合計金額が文系で約150万円、理系で約300万、医歯系だと約2000万ほど安くなりますちなみに施設設備費や研修費が高額になる医学部でも、千葉大学など多くの国公立大学で施設設備費は無料となっています。私立大学の医歯系学部では、施設設備費として500万円以上必要です。
休学した場合の学費は?
留学や家庭の事情などで休学をした場合、学費の支払いは国公立大学と私立大学で異なります。国公立大学では定められた期日までに手続きを行えば、基本的に学費は全額免除となりますが、私立大学は下記のようにそれぞれ異なります。
- 学費、在籍費とも無料
- 学費は無料、在籍費が3万円~20万円程度必要
- 休学届を出す時期によって、半期分の学費支払いが必要
私立大学では学費以外に「在籍費」が必要な大学が多いことに注意しましょう。金額は大学によって異なりますが、安い場合は数万円、高い場合は20万円ほどです。なお、国公立大学の場合は、休学手続きを行えば学費と同じく在籍費もかかりません。ちなみに、休学中は奨学金の受け取りもストップするので注意してください。
留学した場合の学費は?
日本の大学に在学中、たとえばアメリカの大学に1年間留学した場合、現地の大学授業料が100万~300万程度必要です。しかし、利用する制度によって実際に支払う金額が異なります。
- 日本の大学を自主休学して留学
- 日本の大学の交換留学制度を使って留学
たとえば、私立大学の例として青山学院大学を見てみましょう。
留学方法 | 大学在籍状況 | 留学先 | 留学先授業料 | 青学授業料 |
大学経由 | 在学 | 派遣交換留学 協定校留学(私費) | 派遣交換留学→不要 協定校留学→必要 | 必要 |
個人 | 休学 | 個人で選定 | 必要 | 不要(在籍費は必要) |
上記のように、留学先大学の学費については、交換留学制度を使った場合は無料になりますが、学内の私費留学や、自主休学して留学する場合は自己負担です。つまり、留学先の学費の支払いは、無料の人からおよそ300万円と大きな違いがあります。
しかし、留学中の日本の大学学費の支払いはどうなるのでしょう?日本の大学を休学扱いにした場合と、在学扱いにした場合によって下記のように異なります。
- (大学経由)交換留学→日本の学費を支払う
- (大学経由)私費留学→日本の学費+留学先の学費を支払う
- 個人で休学留学→留学先の学費を支払う(日本の学費や在籍費を一部支払う場合もある)
大学院に進む場合は?
大学院の費用は国公立の場合、学部に限らず53万5800円(年間)と決まっています。入学金は28万2000円のため、2年間の修士課程だと約135万円です。私立大学の場合は大学や専攻によって変わりますが、基本的に国立大学よりも高い費用がかかります。たとえば早稲田大学の先進理工学研究科の学費は、107万1000円(年間)です。近年では、1年制の修士課程を設置する大学院も増えてきました。こういった大学院を選ぶことで、全体の学費を抑えることも可能です。
入学金や授業料以外にかかる学費
入学当初に支払う入学金や毎年の授業料以外にも、さまざまな費用が掛かります。
- テキスト代
- ゼミや実験などの研修実習費、合宿費
大学で使う教科書は専門書が多いため、1冊の価格も数千円~数万円と高いものがほとんどです。すべて新品でそろえると万単位の出費になります。節約したい場合は、ゼミやサークルの先輩から譲ってもらったり、メルカリなどを利用して中古品を購入したりすることもできます。実習費や合宿費については、所属するゼミや学科によって大きく異なります。大学入学時点では詳細が分からないことがほとんどでしょう。少し余裕をもってこれらの費用を用意しておくと安心です。
大学生活における生活費や通学費
大学では、授業料はもちろん生活費や通学費用がかかります。入学当初はパソコンを購入したり、入学式に合わせてスーツや靴を新調したりする人もいるでしょう。実家から離れて寮やアパートでひとり暮らしをする場合は、引っ越し費用や生活費が思いのほか必要かもしれません。下記を確認してください。
引っ越し費用
実家から運ぶものが少なく運べる距離であれば、自家用車やレンタカーを借りて自力で引っ越しができる場合もあります。その場合は引っ越し費用を抑えることが出来るでしょう。実家から大型家具やテレビなどを持っていく、あるいは持ち出し荷物は少ないけれど新居まで距離がある場合は、引っ越し業者に依頼することになります。おおよその金額目安ですが、たとえばアート引越センターでは「学割パック」を提供しており、荷物の量や移動距離次第で約3万円~9万円ほどかかるようです。
ここで注意しなくてはならないのが、引っ越し時期です。3月前後は就職や転勤などで社会人も多く引っ越し業者を利用するため、繁忙期で価格が高くなります。通常価格通りとはいかない場合もあることを念頭に置いておいてください。
生活費
親元を離れて寮やアパート、マンションで暮らす場合は下記の費用がかかります。
- 家賃(敷金、礼金、仲介手数料、火災保険料も)
- 電化製品や家具の購入費(アパートやマンションの場合)
- 光熱費
- 通信費(携帯、Wi-Fiなど)
- 食費
上記に加え、女性を中心に美容費用や、人によっては医療費も必要です。とくに費用が変動する要素は家賃です。都市部なのか、郊外なのか、地方都市なのかによっても大きく異なります。参考までに、家賃相場は下記になります。
ワンルームマンションの家賃相場
- 荻窪(東京、都市部)7万5600円
- 浦和(埼玉、郊外)5万8200円
- 熊本(熊本、地方都市)4万3600円
間取りがワンルームより広ければもちろん家賃は上がりますし、築年数にもよりますが、一般的には駅近の物件は家賃が高めです。一般的に、大学の寮はアパートやマンションを個人で契約するのと比べて格安です。たとえば上智大学の祖師谷国際交流会館は月額4万5000円、東京大学の三鷹国際学生宿舎は月額8850円と破格の値段になっています。
通学費
大学のそばに住んでいて通学費がかからない人もいますが、多くの人は電車やバスなどで通学をすることになります。その場合は通学定期代が必要です。自転車やバイクなどを利用する場合は、駐輪場の費用やガソリン代がかかることも忘れないでください。
娯楽費
大学の友人との食事代やサークル活動に必要な費用は年間でどのくらいかかるのでしょうか?日本学生支援機構の「平成30年度学生生活調査結果」によると、国公立・私立大学に通う学生の年間平均娯楽費は33万7500円でした。1か月平均で3万円弱です。
娯楽費は個人差が大きいですが、毎月一定の金額がかかることを考慮に入れておいてください。
学費免除や奨学金制度
これまで述べてきたように、とくに私立大学の授業料は高額です。2020年4月から、世帯年収約380万円以下の家庭については高等教育が無償化され、国公立大学では入学金と授業料の全額、私立大学でも入学金と授業料を合わせて年間約96万円が支給されることになりましたしかし、無償化の条件に当てはまらず、学費の支払い総額をできるだけ抑えたい場合はどうしたらよいのでしょうか。
【大学独自の学費免除制度】
まず、大学ごとによって支給基準や金額は異なりますが、大学独自の奨学金制度を利用する方法があります。たとえば上智大学では「上智大学修学奨励奨学金」を支給しており、下記の条件を満たす場合、授業料の全額もしくは半額、3分の1相当額を給付しています。
- 学修意欲が高く、成績優秀
- 家庭収入700万円(税込)以下が基準
この制度を利用して、2020年度は合計422人の学生が給付を受けました。大学によって基準は異なりますが、多くの場合は上記のように、家庭の経済状況および成績が基準を満たしているかで支給の判断を行っています。
【公的機関の奨学金制度】
「日本学生支援機構」の奨学金制度が広く利用されており、下記の3種類の奨学金が利用可能です。
- 給付奨学金:返済不要
- 第一種奨学金:無利息の貸与型
- 第二種奨学金:利息付き貸与型
奨学金は月額制で、月2万円~12万円から選択できます。しかし給付は大学入学後となるため、入学金や前期の授業料など、入学前に支払うものについては利用できないため注意が必要です。
【教育ローン】
日本政策金融公庫が行う「国の教育ローン」や金融機関が行う「民間の教育ローン」があります。
- 国の教育ローン(貸与上限350万円、子供1人の家庭で世帯年収790万円以下)
- 民間の教育ローン(貸与上限は審査による、所得制限はない場合が多い)
高等教育無償化での支援
令和2年4月から新しく、高等教育の修学支援新制度が施行されました。支援対象となる学校種は、「大学・短期大学」、「高等専門学校」、「専門学校」とされています。対象となる学生は、住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯など要件を満たしており、学ぶ意欲がある学生が対象になっています。
主な支援内容は、「授業料・入学金等の免除またはまたは減免」と「給付型奨学金」の2つがあります。支援対象者の要件として、
- 成績だけで判断せず、レポート等で本人の学習意欲を確認。(進学前)
- 大学等への進学後の学習状況に厳しい要件
授業料等減免
減免にかかる費用を公費から支出し、各大学が授業料の減免を実施しています。
授業料等減免の上限額(年額) (住民税非課税世帯)
学校 | 国公立 | 私立 | ||
入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 | |
大学 | 約28万円 | 約54万円 | 約26万円 | 約70万円 |
短期大学 | 約17万円 | 約39万円 | 約25万円 | 約62万円 |
高等専門学校 | 約8万円 | 約23万円 | 約13万円 | 約70万円 |
専門学校 | 約7万円 | 約17万円 | 約16万円 | 約59万円 |
給付型奨学金(住民税非課税世帯の学生対象)と組み合わせた金額例は、
①国公立大学の場合
入学金:約28万円 授業料:約54万円/年 + 29,200円/月*(自宅生)または 66,700円/月(自宅外)
例) 国立A大学 入学金が282,000円、授業料年額が535,800円 の場合
約82万円-817,800円に加え、29,200円/月*(自宅生)、66,700円/月(自宅外)が給付されます。そのため実質無償で大学に通うことが出来ます。
②私立大学の場合
入学金: 約26万円 授業料:約70万円 + 38,300円/月*(自宅生)または 75,800円/月(自宅外)
例) 私立A大学文系学部 入学金が200,000円、授業料年額が974,600円 の場合
約96万円-974,600円 + 38,300円/月*(自宅生)または 75,800円/月(自宅外)が給付され、私立大学も同様に実質無償で大学に通うことが出来ます。*住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生は、上記金額の2/3又は1/3の給付額になります。
上記のような、大学無償化になるためにはいくつか条件があります。まず前提として、高等教育の修学支援新制度の「授業料・入学金の免除または減額」と「給付型奨学金」の両方を使うことを認められなければなりません。主に3点条件が設定されていますので、確認してみてください。
- 住民税が非課税世帯またはそれに準ずる学生
この対象となる世帯年収の目安は約270万〜約380万円になっています。さらにそこから、「住民税の第Ⅰ区分」、「住民税の第Ⅱ区分」、「住民税の第Ⅲ区分」に分けられ、所得金額に応じて減額されていきます。満額支給は「住民税の第Ⅰ区分」の世帯のみとなっているので注意してください。注)世帯人数によって目安年収は変動します。
- 資産が2,000万円以下であること(生計維持者が2人の場合)
世帯の生計維持者が2人の場合、資産(不動産を除く)が2,000万円以下、生計維持者が1人の場合は、資産が1,250万円以下であれば、大学無償化の対象になります。
- 学業等に係る要件
支援を受けた学生が大学等で学んだ上で、社会で活躍出来るようにという願いの元作られた支援制度です。そのため、明確な進路意識と強い学びの意欲や進学後の学習状況を強く審査されます。
入学1年目(入学前年度申請)
高等学校在学時の評定平均値、または学習計画書の提出などにより、学習意欲があると認められた人が対象になります。主な確認方法としては、高校3年生時に、進学後の支援を予約する場合、2年生(申込時)までの①評定平均値が3.5以上なら進路指導など、②3.5未満の場合はレポート又は面談などで、学習意欲を確認され認められた人が対象です。
入学2年目(在学中4月)
在学中の①GPA(平均成績)上位1/2以上であること。②修得単位数が標準単位数以上であり、学修計画書を提出し、学習意欲があると認められた人が対象になります。
- 大学在学中に申し込む場合(入学年4月申請)
以下の4点の内からいずれかに該当することが在学採用の要件になります。
- 高校の評定平均値が3.5以上であること。
- 入学試験の成績が入学者の上位1/2以上であること。
- 高卒認定試験の合格者であること。
- 学修計画書の提出を求め、学修の意欲や目的、将来の人生設計が確認できること。
まとめ
大学受験から入学、卒業までの期間、どのくらいの費用が必要なのかについて解説してきました。
- 受験料
- 入学金
- 学費
- テキスト費
- 施設設備費
- 研修合宿費
- 留学、休学費、大学院費
- (ひとり暮らしの場合)引っ越し費、家賃、光熱費
- 通学費
- 娯楽費
これらの費用が国公立大学と私立大学では異なり、文系と理系、医歯系でも大きく異なることがお分かり頂けたでしょう。大学生活を有意義なものにするためには、学費の不安は取り除きたいものです。必要であれば学費免除や奨学金、教育ローンなどの利用を検討し備えていきましょう。
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