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小論文の特徴
小論文という科目にどのようなイメージを持っているでしょうか。
総合型選抜や推薦入試において課される科目といったイメージ、医療系の学部を志望する方ならば医療系学部の入試にも多く課されることを知っているかもしれません。また、後期入試で必要という方もいるかもしれませんね。
いずれにおいても、小論文とは「王道(典型的)な」入試の形とは異なった入試において必要となるのかもしれません。それでは、小論文で求められる力もこうした王道入試からとは異なったものなのでしょうか?
答えは ”No” です。
例えば、小論文の問題でも特徴ある出題をする慶應義塾大学環境情報学部の募集要項では小論文について以下のように説明されています。
問に対して自らの考えを論述する形式の試験です。この試験は受験生の発想, 論理的構成, 表現などを総
的に評価しようとするものです。どれだけ発想豊かに, 自分の考えを論文として論理的に構成し, 説得力
のある表現ができるかを問うものです。
次に、高校の現代文の学習指導要綱を一部抜粋します。
(筆者注:国語総合の内容について)
B 書くこと
‥イ 論理の構成や展開を工夫し, 論拠に基づいて自分の考えを文章にまとめること。
ウ 対象を的確に指摘したり描写したりするなど, 適切な表現の仕方を考えて書くこと。
最後に、同様に高校の数学の学習指導要綱も一部抜粋します
(筆者注:数学の目標における「創造力の基礎を培う」について)
ここでいう創造性の基礎とは, 知的好奇心, 豊かな感性, 健全な判断力, 直観力, 洞察力, 論理的な思考力,
想像力, 根気強く考える力などである。
以上のように小論文では発想→論理に基づいた構成と表現が求められています。また、現代文では論理の構成と表現が、数学では発想と同義と捉えられる創造性を養うことが目標とされています。ここでは誌面の都合から2科目のみを引用しましたが、他の教科においても似た記述が見られます。
つまり、小論文とは何か特別な科目などではなく、他の受験で使われる科目と同様の力が求められていることがわかります。小論文も他の科目と同様に対策をすれば結果を望むことができ、さらにいえば他の教科で培った力と一致していることから「コスパに優れた科目」であることも少なくないのです。
小論文の問題パターン
小論文がどのような科目かについて簡単に知った後に、小論文はどのように出題されるのかを出題形式の点から見ていきましょう。
小論文は主に3つの問題パターンに分類することができます。
- 問題提示型
- 課題文型
- 図表・グラフ型
問題提示型
問題提示型とは、「〇〇とはなにか」、「〇〇について意見を述べよ」のような出題形式の問題です。
参考となるデータに乏しく、1から問題を自分で検討しなければなりません。
一方で、問題に対して自由度が高いとも言えるので、自身の関心のあるテーマが出題されると納得のいく発想ができる可能性も高くなるという特徴があります。
例(名古屋工業大学後期2021)
人工知能やロボットの発展によって, 近い将来, 多くの職業が機械に取って代わられることが予想されている。今後, どのような職業を機械が担っていき, そして, どのような職業が, 人間が行うべき日毎になるのか, あなたの考えを, 理由とともに述べなさい。
課題文型
最も多く見られる形式です。
課題文型とは、課題文を読んだ上で設問に答える出題形式です。
課題文の要約や主張のまとめをさせた後に、それを踏まえた上での自身の考えを記述することを求められるパターンが多く見られます。
問題提示型との違いでいうと、課題文があるのでテーマへの理解がしやすい場合が多くなります。一方で、課題文の論理構造を正確に捉え、筆者の主張を理解しなければなりません。また、筆者の主張のコピーにならないように注意しなければなりません。
ちなみに、課題文のレベルは一般的な現代文で出題される評論文と変わりませんが、課題文が英文である場合もあります。
例1(北里大看護2016)
課題文:『ロボットとは何か 人の心を映す鏡』, 石黒浩
筆者の主張を要約し、それに対するあなたの考えを800字以内で記述しなさい。
例2(慶應義塾大文学部2022)
課題文:『使える哲学 私たちを駆り立てる5つの欲望はどこから来たのか』, 荒谷大輔
設問1:この文章を要約しなさい
設問2:「正しさ」について、この文章をふまえて、あなたの考えを述べなさい
図表・グラフ型
図表・グラフ型とは先に説明した課題文の代わりに図表やグラフを参照し、それに対する分析や自身の考えを記述する出題形式です。図表やグラフだけでなく、課題文も読まなければならないこともあります。
基本的な特徴は課題文型と同じですが、グラフの意味を読み取ることが苦手な生徒も少なくなく、そういった生徒にとっては鬼門となるかもしれません。課題文型では筆者の記述を引用できたものも、グラフなどの記述となると文章を自分で作らねばならないことも負担となるでしょう。
一方で、少し難しい論点となりますが、図表やグラフといった客観的なデータが提示されていることはメリットにもなります。どんな出題形式においても客観性に乏しい答案が見られますが、意図せずともこの出題形式ではその悪癖が緩和されることがあります。
例
以下の主要国の世界に占めるGDP比率を表しているグラフから読み取れることを300字で説明し、またその要因と思われる事項について300字で説明しなさい。
(参照元:総務省統計局「GDPの国際比較」)
小論文の要素と身につく力
小論文の問題パターンを知った上で、次の疑問が浮かんできます。
果たして小論文という科目はどのような要素で構成されているのでしょうか。そして、小論文を学習していくことでどのような力が養成できるのでしょうか。
小論文の要素と学習することで身につく力は一致しています。
先の慶應義塾大学の言葉を借りるのであれば、
- 発想力
- 論理構成力
- 表現力
の3つの力によって問題は構成され、正しい学習をすることでその実力を養成することができます。
こうした力を測ることを目的とした試験や問題に取り組むことで、同様のそうした力を伸ばすことができる科目が小論文だといえます。
それでは、具体的に小論文の問題のどの部分でこれらの力が求められ伸ばすことができるのかを説明していきます。
発想力
課題に対する解決策はもちろん、その解決策を導くまでの方策を思いつく力のことと説明できる力です。
「発想力」と聞くと、「センス」や「才能」といった言葉が浮かぶのではないでしょうか。「センスがないと結局小論文の問題には太刀打ちできないのでは…」といった疑問が浮かぶかもしれません。
しかし、発想力は養成することができます。確かに、発想力に富んでいる、または発想力を身につけることに長けている人がいることは事実です。一方で、こうした「センス」はなくとも、他の人から見たら発想力豊かな解答を生み出す人も珍しくありません。
こうした発想力豊かな人を支えているものは、演習量と分析だと考えられます。
多くの演習をこなすことで類似の問題やテーマに出会うことが多くなり、以前取り組んだテーマや解説をヒントに発想力に富んだように見える答案を書き上げることができます。
また、こうした大量の演習の中をする中で、効率的な解決のためには分析が必要不可欠です。テーマの分析、問題文の分析、設問の分析、模範解答の分析、自分の答案の分析、などを行う必要があります。
こうした分析作業は他の科目にも通じる力のため、得意科目の取り組み方を流用してみたりすることが有用です。難しい場合には、参考書を隅々まで読み込み、自分の答案や思考過程がどこまであっているかを確認しましょう。添削を頼む際には、自分で考え抜いた答案を持っていかねば効果は薄くなってしまうことに注意します。
論理構成力
論理構成力とは、「論理的な文章がかけているか」ということです。
では、「論理的な文章」とは何を指すのでしょうか。
「論理的な文章」とは「あるルールを共有した人々にとって、そのルールに沿って書かれているため理解しやすい文章」と小論文という科目においては定義できるでしょう。
つまり、小論文の攻略においてはこの「あるルール」の理解と習得が必要不可欠といえます。
「あるルール」とは現代文や英文においても共通しているものであり、その細かな表現技法は理数科目の考え方と共通しているものも少なくありません。要は、小論文には独特のルールがある、ということを意味しないのです。
とはいえ、ルールは小論文という科目において特にみられることから、小論文の参考書にさまざまな形で解説されています。つまり、論理構成力を養成するためには、小論文の書き方を説明している参考書に取り組むことが効率的な方法と言えます。また、追加で勧めたい方法として、先の発想力と同じですが、参考書や模範解答の分析があります。模範解答は実際に模写してから分析をすると効果的です。
表現力
表現力については「論理構成力」における習得方法がそのまま一致するでしょう。
また、「発想力」において推薦した演習量の確保と分析によって養成させていく部分と言えます。
具体的に何を「表現力」とみなすのかはいくつかのレベルに別れると考えられます。
決して、文学的な表現が求められている、ということではないことを理解することが重要です。
大まかに解説すると、まずは幼稚な表現をしていないこと、です。
小論文という科目に適した、入試問題に適した言葉の選択をしていることが求められます。
そうした事項を満たした上で次のレベルが求められます。
つまり、対比や譲歩などの論理的な表現を効果的に扱うことです。
この観点は論理構成力と明確な違いを設けられない点でしょう。論理構成の中もさらに論理的に扱う、といった何重もの論理関係を答案で用いることが一つの表現力の指標となるでしょう。
小論文の参考書の種類
書き方本
演習本
ネタ本
よくある質問
Q:対策にどれくらい時間が必要ですか?
A:個人差はありますが、書き方の理解、演習、情報収集で各10〜15時間、合計だと30〜45時間程かかります。
Q:志望校に小論文があるが受験プランを変えるべきでしょうか?
A:基本的にはありません。小論文は他科目に比べて対策時間が非常に少ない(英語や数学は各1000時間以上)ため、他科目の負担になる確率は低いです。しかし、英語や数学など、受験の軸となる科目が伸び悩んでいる場合はそちらを優先して取り組む必要があります。
Q:文才やセンスはやっぱり必要ですか?
A:必要ありません。小論文では自分の考えを論理的かつ簡潔に表現することが求められます。文学的な表現は、小論文ではむしろ、文章の意図が伝わりにくくなるマイナス要素です。
Q:そもそもアイディアがでてきません
A:当然です。理由は簡単で、対策をしていないからです。アイデアを出すためには情報と知識を持っていることが絶対条件です。例えば「終末期医療」に関する意見を書く場合、終末期医療自体とその具体例、かつそれらが倫理的な観点から問題視されていることを知らなければ、まともな意見は出てきません。ですので、小論文で議論されがちな問題やテーマについて知る作業を行なわねばなりません。
Q:アイディアは出ても自分だけのアイディアがでてきません
A:出す必要がありません。小論文で問われているのは発想力もそうですが、論理的思考力と記述表現力です。発想の奇抜さや独創性はそもそも採点の評価対象ではありません。
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