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物理とは-大学受験の物理勉強法①


理科3科目の中での物理の位置付け

最も必要なのは公式理解とイメージ

 後の「物理の特徴」でもお話しますが、受験において物理が得意になるには公式に対する「理解」が重要になってきます。ここでいう理解とは、「イメージ」を伴うものです。様々な公式や法則が、力学ならば小球のどのような運動を記述するのか、電磁気ならばどのような現象を表すのか、などといった「物理現象」に関連した「イメージ」を持つ必要があります。

 ただし、ここでいう公式の「理解」とは、必ずしも数学でいうところの「証明」ということではありません。例えば、数学の余弦定理などは、三角比と三平方の定理の計算結果として出てくるため証明は可能であり、これを通して「理解」が深まります。しかし、そもそも物理の公式は「物理現象の観察の結果」として求められたものであり、証明が出来ないものが多いのです。例えば、運動方程式ma=Fについて、「なぜ力Fが働くと加速度aが生じるのか?」という疑問を持つことは、意味がありません「世界がそうできているから」としか答えようがないのです。

 もちろん、波動の分野で登場するスリット干渉における光路差の近似式など、理解のために証明を要する公式もあるにはあるのですが、その数は決して多くはありません。

 証明よりも「イメージ」重視で公式をとらえる必要があり、それが受験物理攻略の第一歩です。

理系科目では得点源

 受験に使用できる理科科目の中でも、物理は点数の伸びと維持が比較的簡単な科目となっています。これは、物理が他の理科科目(化学や生物)と比べて暗記すべきものが少なく、公式や法則の「理解」が問題を解くカギになるためです。正しくそれらを理解し、使い方さえ知ってしまえば、問題を出されたときに何をしたらよいかは明確であり、自ずと手が動いているはずで、結果として物理の点数はぐんと伸びることになるでしょう。また、物理は「暗記」ではなく、一度定着してしまえば抜けることはそうそうない「理解と考え方」が重要な科目である特性上、得点の維持も簡単なのです。

 

物理の特徴

 そもそも物理とは、その名の通り物の理(もののことわり)、つまり「物ごとがどうしてそうなっているのか」を学ぶ科目になります。物理で勉強することになる様々な公式や法則は、身の回りの物理現象を実際に数式として記述するために作られたものです。日常で起こる「物事」が「どのようにして起こる」のかを解析するために生み出された学問、それが「物理」です。

 これこそが物理の最大の特徴なのですが、初めて物理を学習する方が最も躓きやすい理由もここにあります。「アクセルを踏み続けると速度が増していく」「救急車が近づくときと遠ざかるときでサイレンの音の高さが違う」といった、なんとなくイメージできるような身のまわりの現象が、全て「m,v,t,g,f」などといった「文字式」で表現されるためですそういった文字式の計算などに苦手意識があると、何を言っているのか分からないという事態に陥ってしまいます。

 しかし逆にそこを乗り越えてしまえば、漠然としていた物理現象のイメージが公式の理解を通じて鮮明になり、問題をすらすら解けるようになっていくでしょう。

 

 また、物理のもう1つの特徴として、「理科科目では得点源」の項目でもお話しした通り、一度公式や法則の理解・使い方を完璧にしてしまえばかなりの高得点が期待でき、さらに言ってしまえばそれだけで実質的に東大・京大の問題ですら解ける、というのが物理の特徴です。2020年の東大の物理で出題された力学の問題を見てみましょう。

 

一見、式の形がベクトル形式で表されていたり文字が多かったりしてその見た目に圧倒されてしまいそうですよね。しかし、実際には「変位=速度×時間変化」「速度変化=加速度×時間変化」という物理の基本的な式についての問題になっています。きちんと原理を理解し、問題の誘導に沿って計算をしていけば解答できるようなそこまで難しくない問題になっています。

 

 続いて、2021年の京大の物理で出題された力学の問題も見てみましょう。

                                     (2021京大物理第1問)

 

 小球とボールが斜めの方向に正面衝突しているという一見難しいテーマを扱ってはいるものの、問題を解く上での誘導が丁寧で、「斜方投射の位置や速度の公式」「反発係数の公式」「力学的エネルギー保存則」の基本的な式だけで解答可能な問題となっています。

 

 以上から分かるように、「問題で起こっている現象について式を使って説明していく」という物理という科目の特性上、どれだけ名だたる大学の物理の問題でも、高校物理で習う公式のみを使って表せるような現象しか出題されません。つまり、公式の理解と使い方に成熟してさえいれば、難しい参考書をマスターしていなくともこのような難関大学の問題が理論上は解けてしまうということになります。

 

物理の要素と参考書の種類

参考書の種類

 物理の参考書選びは、他の理系科目での選び方とは少し異なります。

 他の理系科目であれば、だいたい同じレベルの問題集同士で比較するならば基本的にそこまで大きな違いはありません(数学であれば青チャートとFocus Gold、化学なら鎌田の問題集と標準問題精講、生物なら重要問題集と標準問題精講などなど)。

 しかし、物理の場合はそうとも言えないのです。というのは、参考書の著者(予備校講師の方)によって、問題の解法や解く際の考え方などに違いがあるためです。ここでいう「解法の違い」とは、数学で言うところの「別解」とは異なります。

 数学の「別解」とは、一般的な解とは異なる公式や定理を用いた解答のことを指します。解答に至るまでの道のりが複数あり、一般解と別解とでそれぞれ別の道を選んでいる、ということです。

 一方物理では、どの問題を解く際にも、使うべき公式(問われている現象をよく説明している公式)が概ね定まっています。つまり、通るべき道は一本なのです。物理の「解法の違い」とは、その公式を適用するまでの準備方法や、公式を使うに思い至るまでの思考プロセスの違いを意味します例えるなら、通るべき一本の道を車で通るか自転車で通るか、の違いです。

 この違い、つまり著者の違いを理解せずに単に参考書のレベルを上げていってしまうと、自転車の乗り方しか知らないのに車の乗り方ありきで解答解説をされるといった風に、考え方が異なっていて今までの勉強法、解法が上手く活かせないという問題に陥ってしまう可能性があるのです。

 その問題を解消するために、まずは自分に合った解法を使っている予備校講師を見つけることをお勧めします。さらにそこで迷わないように、本項では物理の各参考書を著者の特徴別にまとめてみましたので、参考にしてみてください。

 

◎東進 橋元淳一郎氏

微積は適度に、イメージ重視

とっつきやすい、そのぶん網羅度は低い 難関大用の本質理解には向かない

基本から苦手な人向け

 

 
 

 

◎代ゼミ 漆原晃氏

 

微積使わない 網羅系テキストから入って問題を解きまくり、解法パターンを暗記して適用していく

帰納的な問題演習と言える

本質理解はできるが最上位レベルには至らない

 

 

 

◎代ゼミ 為近和彦氏

微積使わない どの問題にも当てはまる本質的なルールを重視する

演繹的な問題演習と言える

難関大向けの本質理解も進む

 

 

◎河合 浜島清利氏

微積使わない 学校の先生に人気 オーソドックスな解法

受験物理の超王道ルートといえばこの人

 

 

 

※微分物理

今まで習った物理の公式を、微分方程式を使って考えていくものを微分物理と呼ぶ

かなりの論理性重視 数学的処理も難しく、解答の表す物理的な意義の理解も必要

そのぶん理解できれば普遍的、分野横断的な理解が可能

東大物理満点狙うくらいのレベルならやってもよい

 

 

 

◎その他

 

※物理は必要な図は理解本や問題集に載っていることが多いので資料集はなくてもかまいません。

 

物理でよくある質問

Q.勉強時間をとっているのに点数が取れません


物理は、「物理の要素と参考書の種類」でも触れていますが、参考書ごとに解答の手法が多少異なります。そのため、様々な参考書に手を出してしまうと自分の中で解法が確立しにくくなってしまう可能性が出てきます。これを解消するためには、まず様々な理解本に触れ、自分に合った解法、自分の目指す解法をとっている理解本(問題集ではなく、公式の理解や解説をしてくれている参考書)を見つけることができたら、その著者が出している参考書を中心にマスターしていきましょう。決まった解法を踏襲することで、自分の中でその解法が確立され、点数が伸びていくはずです。

 

Q.何度やっても公式が暗記できません


 イメージを用いず、公式を式そのものとして覚えようとしてしまうと、そのような事態に陥りやすいです。

 等加速度運動の式v=v0+atx=v0t+12at2も、それぞれの文字が意味するものを把握し、「等加速度運動だから速度は一次関数のグラフとなり、位置は速度のグラフの下の面積である」という事実を理解していればすんなりと暗記できますし、万一忘れてもその場で導出することすらできます。

 どんな公式も物理現象を理解するためにある、つまり物理現象が公式に先行するので、必ず物理現象のイメージとともに公式を覚えるようにしてみてください。

 

Q.数学みたいにひらめきが必要ですか


 必要ありません。解答に必要な情報は全て問題文と図に掲載されていますし、公式は教科書に網羅されています。物理の問題を解くうえで教科書にも載っていないような斬新な解法を思いつくということは全くなく、物理現象に合わせた公式を使って計算を進めていけば自然と問題は解けます。

 問題が解けない場合は、公式や法則を正しく理解できていないだけだったり、その使い方がマスターできていなかったりするので、その都度教科書・理解本を再確認あるいは問題演習を積んで公式の使い方をマスターしましょう。

 

Q.力学はできるけど電磁気、波動になると苦手です


これは
かなりありがちな問題で、力学の場合は物体が飛んで行ったり衝突したりとイメージしやすい分野ですが、その他の分野は簡潔なイメージが湧きにくい分野になっています。

 この点に関しては、教科書やいろいろなWebサイトに載っているイメージ図を利用することをお勧めします。例えば、電磁気の分野で登場する起電力や電位差、電圧降下といった概念は難しく、質問に来る生徒が多い分野です。これに対し、電位とは”電”気的な”位”置エネルギーで、電池では水車のようなイメージで高さ(位置エネルギー)を与えているのだ、抵抗による電圧降下は摩擦のある床を滑ることでエネルギーが失われるようなものだ、と動画を見せながら説明するとよく理解してくれます。このように、学校の授業のみに頼らず、様々な媒体を駆使してイメージを築き上げるようにしてみてください。

 

物理で身につくこと

 皆さんは物理という科目にどのようなイメージがあるでしょうか。式で計算ばかりするような印象を持っている人も少なくないと思います。

 物理の魅力を一言で表すとすれば、「未来を見通す学問」です。

 化学や生物は、あらかじめ用意された実験と結果から考察する問題ばかりで、実験は既に完結しています。しかし、物理は違います。はじめに用意されているのは実験道具だけで、この操作をするとこの結果が生まれる、さらにこうするとこうなる、という風に実際に手を動かしながら自ら実験していくのです。しかも、はじめに与えられた条件から計算するだけで結果がわかってしまいます。与えられた条件から自分で実験を作り出してその結果を求めるわけです。実際に、NASAなどではスペースシャトルの軌道計算において、「今から何年後に発射して、発射から何年後にこの衛星軌道に乗り、ここでロケットエンジンで推進力を得て…」という途方もない量の計算を行い、実際にその計算通りにスペースシャトルを動かしているのです。まさに未来を決定していますよね。そう考えると、とても魅力的に思えてきませんか?

 しかも、冒頭のあたりで説明した通り受験物理は理系科目の中で最も点を取りやすく点数の変動も少ない、非常に効率の良い科目です。生物が異常に得意ということでもなければ、物理を受験科目として選択するのは大学受験において有利に働くかもしれません。ぜひ、選択の候補に入れてみてください。

 この世界を支配する奥深き自然法則の世界へようこそ。


物理の具体的な勉強法−物理勉強法②

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