目次
物理を勉強する基本的な流れ
物理の勉強をする基本的な流れは、
①基本事項を理解するための参考書(理解本)や教科書で基礎知識を習得する
②典型問題集を使って、①で習得した基礎知識を基に問題を解く力を養う
③過去問に挑戦
となります。物理の問題を解く流れの大前提は、「問題の中で起こっている物理現象を説明する式を立てる」ということです。物理現象を説明する、と言われても、何も勉強していなければどう説明したらよいのか分かるはずもありません。そのためにまずは、あらゆる物理現象を説明する最適な道具として、速度やエネルギーなどの色々な物理量やそれに関連する公式などを①を通じて学習していきましょう。理解本や教科書では物理量の特徴を抑えること、公式が何を表しているのか日本語で説明できるようになることがゴールです。そのあとに②で道具を正しく使いこなす練習をして、物理量や公式への理解を深めていきます。志望校のレベルに応じて典型問題集の後に応用問題集を実施しましょう。実力がついてきた段階で③に進んでいきましょう。
学年別の勉強法の詳細は勉強法⑤以降で扱いますが、物理は道具を使いこなすことまでがセットなので、どの学年も理解本→典型問題集を分野ごとに進めていきましょう。高1高2で学習中の人は先取りせずに、学校で習った範囲を教科書や理解本で復習しセミナーなどの問題集を並行しましょう。物理は分野を超えた融合問題が少ないので、力学や波動など学校で習った分野ごとに深めていくことができます。受験生になってから学習した範囲を一から学ぶ場合や浪人生も、分野ごとに理解本で理解して典型問題集で使い方を学ぶという流れで進めていきましょう。以下で物理を勉強する際のポイントを詳しく見ていきます。
物理勉強法のポイント
① 道具を知るー基礎知識の習得
物理には様々な物理量や公式・原理が出てきますが、例えば化学と比べればその数は圧倒的に少なく、暗記量は理科主要科目の中で最も少ないと言ってよいでしょう。しかし、その使い方が難しいのです。物理が不得意な生徒は、例えば「運動量」という物理量を中心に考えてほしいのに「エネルギー」という別のものを考えていたなど、一つ一つは覚えているのに使い方が分からずに問題が解けない、という方が多いのです。初めから何を使うか全て間違えないということは不可能かもしれませんが、この初めの段階からなるべく正しいものを使えるような意識をもって学習をしていきましょう。以下でそのポイントを解説していきます。
まず1つ目のポイントは、物理量の特徴を抑えること。問題を解くための物理量が決まっているということは、一つ一つの物理量それぞれに得手不得手があるということになります。例えば、「運動量」はベクトル(向きを持つ物理量)であるため物体の運動の向きなどを議論することに向いていますが、「エネルギー」はスカラー量(向きを持たない物理量)なので向きを議論できません。これだけでも、適切な物理量を用いなければ答えにたどり着けないのは明白かと思います。物理量固有の特徴などもきちんと理解しておきましょう。
2つ目のポイントは、公式が何を表しているのか日本語で答えられるようにすることです。例えば、もっとも単純な公式として「運動方程式:ma=F」というものがあります。この公式は、「質量mの物体に対して外力Fが働いた結果、この物体はFと同じ力の向きに加速度aで運動する」というベクトル量の力と加速度を関連付ける公式になっています。これをきちんと上記のように理解していないと、例えば台の上に箱が乗っていて箱にのみ外力が与えられているのに、質量mを台と箱の合計の質量にしてしまう(当然外力は箱のみにかかっているので質量は箱のみの質量にするのが正解です)、というミスをしてしまいます(実際これをする人は多いです)。きちんと公式が何を表しているのか、自分で説明できるまで理解しましょう。これができなければ、物理現象を適切に数式に落とし込むことができず、いつまで経っても問題を解くことができません。物理は具体的な数字を使って計算するよりも文字を使って計算することが多いので、文字で表されているものが何を意味しているのかを正しく理解することが大切です。
この2つのポイントは本当に重要で、物理が苦手な生徒はこれらができていないことが多いのです。時間を有効に使うためにも、最初の段階から意識して道具を知っていきましょう。
※物理の公式について
物理に出てくる公式などの暗記について少しお話しします。例えば数学で公式を暗記するにはやはり一度証明をしなければ、ということを耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。確かに物理は多少なりとも数学に似ている面があるため、公式を暗記するにはやはり証明をすることが必要だと思う方もいるかもしれませんが、物理の公式は目の前の現象を説明したものであるため、必ずしも全てが証明できるわけではありません。
例えば、理想気体の状態方程式PV=nRTは、証明することができません。なぜなら、現象の観測の結果としてボイルの法則、シャルルの法則が生まれ、それを結びつけるために人類が気体定数Rを定義して状態方程式にまとめたからです。要は、「何やら気体の圧力P、体積Vの積は、物質量n、絶対温度Tの積に比例しているようなので、その比例定数をRとしようか」ということです。決めた側もこのような感じなので、勉強するこちら側も「まあそうなっているらしい」という程度で暗記をしていきましょう。特に、上記の状態方程式を含む気体の分野、あるいは電磁気学の分野では、単純に暗記するしかない公式が多いです。
この証明できないということは、別にそれほど悪いことではありません。むしろその点を利用して、その公式の意味、導くに至った過程を理解することに重きを置きましょう。状態方程式のほか、コンデンサーに加えられる電圧Vと蓄えられる電荷量Qの比例関係として「Q=CV」という公式がありますが、これも「コンデンサーにこれだけ電圧をかけるとこれだけ電荷がたまったから、その比例定数をCとしたのだな」とか、あるいは反発係数eと呼ばれる物理量にマイナスがついている理由に対して「衝突前の相対速度と衝突後の相対速度の比が反発係数と呼ばれていて、向きが逆だからマイナスがついてるんだな」という風に、公式の数式としての成立理由などは一旦置いといて、上記の2つ目のポイント同様に物理現象として捉えてください。
どうしても暗記が苦手という人は、おすすめの方法として「カード暗記法」を紹介しておくので、参考にしてみてください。
そもそも物理は概念が理解しにくい科目だと思います。どうしても苦手だという方は、本来は基礎事項の理解から問題演習という流れが理想ですが、一旦とりあえず公式を暗記して問題演習をやり、その公式が使えるようになってから理解していくという形でもかまいません。公式を暗記する→典型問題集を解く→教科書(理解本)という流れで進めてみてください。
②道具を正しく使いこなすー演習
さて、①で正しく道具が習得できたら、②の演習の段階に移ります。物理の問題を解くという事は、物理現象を説明する式を立てることに全て帰着します。①で道具を習得するだけでは問題は解けません。正しく道具を使えるようにならなければなりません。正しく道具を使うには、とにかく演習量を確保します。数をこなすことです。
例えば、①で「運動方程式」「運動量保存則」「エネルギー保存則」「運動量と力積の関係」「モーメントのつり合い」「慣性系」・・・など様々な道具を入手します。この数ある道具の中から、「どれ」を「どういう場合」に「いつ」使うのか、それを問題演習を通じて定着させましょう。ここで注意したいのは、やみくもに数をこなしてしまうことです。ただ数をこなすだけでは意味がありません。あくまでも演習は、道具の使い方を学ぶ練習です。「なぜこの問題ではこの道具を使うのか」それを意識しながら問題演習を行ってください。
ひとえに問題演習といっても、様々なレベルの問題がありますので、レベル別にその勉強法を紹介します。
<典型問題集の勉強法>
典型問題集とは、主に公式(道具)の使い方を学べるような比較的易しめな問題から、少し条件や現象が複雑で何が起こっているのかイメージがしにくい難しい問題まで様々な問題を扱っている問題集のことを指します。教科書併用問題集の「セミナー」のようなものがその代表例です。こういった問題集では、問題がレベル別に(例えば「基本問題」「発展問題」「総合問題」など)分けられていることが多いので、まずは条件がシンプルな基本的な問題で正しい物理現象の捉え方と公式の使い方を覚えていきましょう。この時、上記の通りなぜその公式を使うのかも理解しながら演習を積んでいきましょう。
具体的な演習の進め方を説明した「理解度別マーク法」「プロセス要約法」をここで紹介しておくので、参考にしてみてください。
<応用問題集の勉強法>
応用問題集は、先程の典型問題集の発展的な内容以上のレベルの問題がそろった問題集です。条件が複雑で、物理現象のイメージがしづらく、そのためその現象を説明するための数式を立てることが非常に困難な場合が多いのです。典型問題集をある程度マスターしていれば、あとはどれだけ初見の物理現象に対応していけるのかという力が必要なだけなので、とにかくたくさん問題を解いて慣れていきましょう。まずは落ち着いて問題の物理状況を図を描きながら整理する。そのあと、与えられた文字から使える物理量を思い浮かべる。問題を解くために使える公式や原理を考える。式を立てる。一つひとつを丁寧にやっていけば、間違いなく力はついていきます。問題を解いていくうちに新たに気づく公式の意味などもあるはずです。同じ問題も何度でも演習し、志望校の過去問に対応できる応用力をつけていきましょう。
③正しいイメージを持つ
問題演習をしていると、「一体何が起こっているのか分からない」というような状況に陥ることが多々あります。とにかく「問題文を正しく理解し、また解いた結果の解答を咀嚼すること」が大事です。例えば以下の問題を例に考えてみましょう。
【例題1】
質量Mのロケットが速さVで右向きに運動している。ある時、このロケットのうち質量mの部分が、ロケットから見て後ろ向きに速さvで打ち出された。残ったロケットの速さを求めよ。
【解答】
運動の向きは右向きを正とする。分離前後で運動量保存則より、求める速度をuとおくと、
M*V = m(V-v) + (M-m)u
これを解いて
u = V + m/(M-m) v
この問題を正しくイメージするポイントは、質量mの噴出された部分の記述です。まず、ロケットから見て後ろ向きに速さvということは、実験室系では速度(V-v)で運動しているということになります。相対速度の考え方と日本語をきちんと理解できていなければ、正しい運動量保存の式は立てることができません。
次に、少し問題を変えてみましょう。
【例題2】
質量Mのロケットが速さVで右向きに運動していたところ、このロケットの半分の質量をもつ部分Aがロケットから打ち出された。残ったロケットは、速さV/2で右向きに運動していた。Aのロケットから見たときの打ち出された速さと向きを答えよ。
【解答】
運動の向きは右向きを正とする。分離前後での運動量保存則より、Aがロケットから見て打ち出された速度をvとすると、
M*V = M/2*(V+v) + M/2*(V/2)
これを解いて
v = V/2
よってロケットから見て前方に、速さV/2で打ち出された。
となります。
まず例題1は、問題文を言い換えれば「右向きに速さVで運動する質量Mの物体が分離して、速度(V-v)をもつ質量mの物体と速さの質量(M-m)の物体に分かれたので、後者の速度が知りたい」となります。この現象の図を自分で描いて、誤字に気を付けながら運動量保存則をたてて答えを導きましょう。典型的な問題です。
例題2は、例題1で分かっていた打ち出す向きと速度が分からず、残った部分の速度は分かっているような状況です。考えることは全く同じなのですが、発射する向きが分からないので未知数として設定したvは相対速度としています。
これらの問題は、運動量保存の式を立てる時に相対速度をきちんと理解していなければ何を物体の速度としてよいか分からなかったり、運動量保存はベクトルの式なので運動の方向を曖昧にしてしまったり、また勝手に打ち出す向きを後ろ向きとしていた人は答えを出したときに負が出てきて「え?前方?どういうこと?」となったり、基礎ができていなければすらすらと解けないかもしれません(答えが負なら前方でいいのか、なるほど。と思える人は良いのですが)。
このように、しっかりした基礎のもとに問題文をきちんと読まないと「ん?結局どっち向きなの?」となったり「どうやって式を立てたらいいんだ?」「え、こっち向きでいいの?」となったりして問題を解くうえで不安要素しかありません。基礎事項の理解と、問題文をしっかり読むことを大事に、正しく物理現象をとらえる力を問題演習を通して鍛えましょう。
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