作業療法士になるには？大学や学校・国家試験・必要なスキルなどを解説

「作業療法士に興味があるのだけど、どうやったらなれるのかな？」と思っていませんか。作業療法士は、大学や専門学校など定められた教育機関で3年以上学び、国家試験に合格することで資格を取得することができます。理学療法士とは異なり、身体だけではなく心のリハビリも担当するため、精神科で働く人も多くいます。本記事では、作業療法士になるために入学する学校にどのような特徴があるのか、国家試験について、また、知識や技術以外に必要なスキルについてもお伝えしていきます。

作業療法士とはどんな仕事？

作業療法士は、Occupational Therapist（OT）とも呼ばれるリハビリテーションの専門職です。リハビリを担当する人と聞くと、立ったり歩いたりをサポートする人を想像するかもしれませんが、立つ・座るなど大きな動きを担当するのは、作業療法士ではなく理学療法士です。

作業療法士は、日常生活で行う「顔を洗う」「お箸で食べ物をつかむ」「字を書く」といった応用的な動作能力の改善をうながし、その人らしい生活ができるようサポートします。また、作業療法士は身体だけではなく心のリハビリも担当するため、精神科の病院などで勤務する場合もあります。

作業療法士になるには？

作業療法士になるためには、養成校で3年以上学び課程を修了した後、国家試験に合格しなくてはなりません。養成校については次章で詳しく説明しますが、以下のような学校があります。

• 4年制大学
• 3年制短期大学
• 3年制専門学校
• 4年制専門学校

作業療法士の勉強ができる学校

すでにお伝えした通り、作業療法士になるためには3年以上養成校で学び、国家試験の受験資格を得る必要があります。養成校では、リハビリテーション医学、運動学、病作業概論、解剖学、生作業、臨床心作業などについて学んだり、実習を行ったりします。大学や専門学校でどのような特徴があるのか、以下で解説していきますのでご覧ください。

大学

3年制の短大と4年制の大学がありますが、多くは4年制大学です。

作業療法士になるために必要な専門科目を学びますが、一般教養科目や外国語なども履修します。他分野への理解も深められるため、作業療法士以外でも、一般企業や公務員、教員などさまざまな分野での就職がしやすくなります。また、さらに研究を続けたい場合は、大学院に進学することも可能です。

専門学校と異なる点としては、入学においてより学力面が重視されることや、費用が高くなることなどが挙げられます。しかし大学では、附属病院がある場合は附属機関で実習ができるのが大きなメリットです。また、医学部や薬学部などが複数ある大学では、学部の垣根を越えて受講できる共通授業があったり、チーム医療について学べたりもします。

専門学校

専門学校には3年制と4年制があり、夜間部を設置している場合もあります。3年制のほうが授業スケジュールがハードですが、4年制と比べると学費が安く済むのがメリットです。しかし4年制の学生よりも1年早く課程を修了するということは、毎日の勉強や国家試験に向けての準備が、より大変になるということを覚えておきましょう。

専門学校は、大学のように学問を追究する場ではなく、実践的な職業教育を目的としているため、一般教養科目はあまり多くは履修しません。それよりも、医療現場で実践できるスキルや知識を身に付けることに重点が置かれています。

大学と比べると、入学の際に学力面が求められることはあまりありませんが、授業内容が劣るわけではなく、国家試験対策もしっかり行われています。

作業療法士の国家試験について

作業療法士の国家試験は、毎年2月下旬に行われます。1日目は筆記試験、2日目は重度の視力障害者に対して行われる、筆記試験の実地問題に代わる実技試験です。以下で、試験科目と内容について解説していきます。

試験科目や内容

厚生労働省のページに詳しく説明されていますが、以下が出題範囲となります。

• 一般問題

解剖学・生理学・運動学・病理学概論・臨床心理学・リハビリテーション医学（リハビリテーション概論を含む）・臨床医学大要（人間発達学を含む）及び作業療法

• 実地問題

運動学・臨床心理学・リハビリテーション医学・臨床医学大要（人間発達学を含む）及び作業療法

過去問が、厚生労働省のサイトで公開されています。試験時間は午前2時間40分、午後2時間40分です。問題数や配点は以下をご覧ください。

• 一般問題→計158問（配点1点、158点満点）
• 実地問題→計39問（配点3点、117点満点）

合格するためには、一般問題と実地問題の合計275点のうち、最低6割（165点以上）が必要です。また、実地問題の得点が41点以上あることが求められます。

国家試験の合格率

320分の長丁場となる作業療法士の国家試験ですが、厚生労働省の発表によると、令和4年2月に実施した国家試験合格率は80.5%でした。また、そのうち新卒者が88.7%を占めています。

例年の合格率は平均して80％前後と高めですが、20％程度は不合格となるため事前準備が大切です。また、新卒者の合格率が90％近くを占めているということは、一度不合格になると、2回目以降の受験で合格することが大変な試験であると言えるでしょう。

作業療法士免許の申請

国家試験に合格したら、そのまま作業療法士として仕事ができるわけではありません。免許申請を行い、免許証が交付されるまでには、2か月～3か月ほどかかります。

以下を、住所がある保健所に提出します。

• 免許申請書
• 診断書（発行日から1ヶ月以内）
• 住民票の写し（発行日から6ヶ月以内）
• 9000円分の収入印紙
• 登録済証明書用はがき

そのほか、資格申請について詳しくは、厚生労働省のホームページを参考にしてください。

作業療法士に必要な4つのスキル

作業療法士は、専門分野の知識以外にも、以下のようなスキルを身につける必要があります。

根気強さやコミュニケーション力

作業療法士は、患者とコミュニケーションを取りながら、いま相手が何を求めているのかを観察し、的確に判断する力が必要です。そのためには、根気強く患者の話を聞き、対応することが求められます。

リハビリは毎回順調に進むとは限りません。やる気がしない日もあれば、体調が悪く進まない日もあるでしょう。また、リハビリそのものに疑問を抱いて、「こんなことをしていて本当に良くなるのかな？」と不安になる患者もいるかもしれません。

そのような際にも、患者とコミュニケーションをはかっていくことで、本音を引き出すことができ、お互いの信頼関係を築くことができます。そしてその結果、本当に患者のためになるリハビリが行えるようになるはずです。

うまくいかない場合もあきらめてしまうのではなく、根気強く患者と向き合うことを忘れずにいてください。

好奇心と向上心

作業療法士は、国家資格を取得したらそこで勉強が終わりではありません。医学の進歩は日進月歩です。仕事を始めてからも、最新の知識や技術について学び続ける向上心が欠かせません。

作業療法では、折り紙や絵画、体操や手芸などさまざまな活動が行われます。機能を回復したい場所はもちろん、性別や年代、患者の性格や嗜好を考慮しながら最適なプログラムを考える必要があるため、あらゆる分野にアンテナを張り、知識や情報を得ようとする好奇心が重要です。

思いやりの気持ち

毎日のリハビリや治療の際に、身体の痛みや、精神的にダメージを受けているなどさまざまな理由で、前向きに治療に取り組めない人もいるでしょう。そういった時に、「決まっているプラン通りに進めなくては！」と焦るのではなく、患者の気持ちに寄り添って「今は何をしたら一番良いのか」を考えて判断することが重要です。

人間は機械ではありません。時にはモチベーションが下がってしまうことがあるのも当然です。身近にいる作業療法士が、患者の気持ちに寄り添い、思いやりをもって接することで、回復も早くなることでしょう。

フットワークが軽い

作業療法士は、医師や看護師はもちろん、理学療法士（PT）や言語聴覚士（ST）といった専門職と協力して業務を行います。患者の状態を改善させるためには、ほかのスタッフと情報共有を行い、目的に応じて柔軟にリハビリの方法を変更するといったフットワークの軽さも求められます。

作業療法士として、患者のためにリハビリ計画を立てても、理学療法士や医師からプラン変更を依頼されることもあるかもしれません。そのような場合は、お互いに連携して話し合いを行い、患者にとって最善のプランに変更していきましょう。

まとめ

本記事では、作業療法士になるためにはどのようなステップを踏む必要があるのかについてお伝えしてきました。作業療法士は、養成校で3年以上学び既定の課程を修了したのちに、国家試験を受験し合格することで資格を取得できます。大学や専門学校などで知識を学び、実習や演習を通して技術を身に付けることができますが、それに加えて必要な4つのスキルについても解説しました。本記事が、作業療法士を目指す人にとってお役に立てば幸いです。

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