理学療法士は、運動やトレーニングで患者さんの機能回復をサポートする職業です。医療や介護の分野で欠かせない療法で、個人に合わせた対応が求められることから、社会的なニーズが高まっています。今回は、理学療法士を目指している方が資格を取得するために通うには、大学と専門学校のどちらが良いのか、その違いとメリット・デメリットについて解説しましょう。進学先を考える際の参考としてみて下さい。
目次
理学療法士になるには
理学療法士はPhysical Therapist(PT)とも呼ばれ、ケガや病気などで身体に障害のある人などに対し、運動療法や物理療法などを用いて、自立した日常生活が送れるようリハビリテーションを行う専門家です。理学療法士になるには、定められた養成校を卒業し、毎年行なわれる理学療法士国家試験に合格しなければなりません。
国家資格
理学療法士は、厚生労働省が認定する国家資格です。理学療法士になるには、毎年2月に実施される国家試験に合格する必要があります。 試験の合格率は毎年80〜90%台ですが、受験するためには理学療法士養成校を卒業しなければなりません。
カリキュラム
養成校は3年〜4年制の専門学校と4年生の大学がありますが、いずれも卒業すれば理学療法士試験の受験資格を得られる点は同じです。いずれの学校も、理学療法士に必要な知識や技術を習得できますが、カリキュラムの組み方が異なります。4年制大学は一般教養など周辺知識も含めて広く学習することに対し、3年制の専門学校は理学療法士の専門分野に特化して知識や技術の習得をはかるカリキュラム内容です。
3年制の専門学校は修学期間が短いですが、資格取得のための学習内容が不足することはありません。
就職
理学療法士の就職先は、医療機関や介護施設が多くなっています。職務の性格上、大学卒か専門学校卒かはあまり関係ありません。本人のやる気や能力を重視しているといえます。ただし、国公立の医療機関などでは、公務員独自の給料表を採用している場合があり、大学卒を重視するケースもあるようです。
待遇・給与
理学療法士の初任給は、医療機関や介護施設において大学卒か専門学校卒かで変わりないのが一般的となります。しかし、国公立の医療機関などでは、大学卒と専門学校卒で採用時の給料表が異なる場合があるのは先に説明したとおりです。公務員の給料表は、大学卒と専門学校卒で採用基準が異なるので、将来志望している場合は留意しておきましょう。
大学と専門学校の特徴
この項では大学と専門学校の特徴について解説します。まず、理学療法士養成校として指定された専門学校や大学の数は次のとおりです。(2022年3月15日現在)
大学(4年) | 128校 |
短期大学(3年) | 5校 |
専門学校(4年制) | 55校 |
専門学校(3年制) | 91校 |
*学校総数279校(うち、募集停止16校)
*定員14,574名
出典:公益財団法人 日本理学療法士協会:養成校一覧
専門学校の修業年限は3年か4年、大学は4年・短期大学は3年とそれぞれ異なりますが、卒業すれば同じ理学療法士国家試験の受験資格を得られます。次の項から、大学と専門学校の特徴について詳しく見ていきましょう。
理学療法士大学の特徴
大学は学問・研究を主な目的にしているため、一般教養と呼ばれる必修科目が組み込まれており、実習も必要最低限の時間のことが多いです。卒業後には、「学士」を取得できます。また、国公立大学は定員が少なく、受験の際には難易度が高い場合があるので留意しましょう。研究者や理学療法士業界のリーダーを育てる目的が掲げられていることが多いです。一方、私立大学は全国に分布しており、大学院に進学も可能な場合もあります。
理学療法士専門学校の特徴
専門学校は、分野に特化したカリキュラムを組んでいるので、集中して専門分野を修得できます。専門学校と大学は、一般的に国家資格取得後の待遇に差がないので、3年制の専門学校であれば4年制の大学や専門学校より早く社会に出て同等の収入が得られます。また、ほとんどの都道府県に4年制と3年制の理学療法士専門学校があるのが特徴です。夜間制に通って、昼間働きながら資格取得を目指している社会人もいます。
理学療法士大学と理学療法士専門学校の違い
大学と専門学校の違いをまとめると次のようになります。
大学 | 専門学校 | |
目的 | 学問を追求 | 実践的な職業教育 |
得られる学位 | 学士 | 高度専門士(4年) 専門士(3年) |
修学期間 | 4年 | 4年、3年 |
カリキュラム | 一般教養、専門科目 | 専門科目 |
定員 | 30〜80名 | 8〜100名 |
学費(目安) | 4年制大学:200万円~300万円 | 4年制専門学校:500万円~600万円 3年制専門学校:400万円~500万円 |
教員 | 「教育研究上の業績が認められる者」大学卒業後に博士課程に進学し、研究に携わってきた研究者 | 「5年以上理学療法に関する業務に従事した者」実務者としての経験 |
施設 | 敷地の広さ、附帯設備の多さ | 最低限「教育上必要な設備」 |
実習先 | 附属病院や介護老人施設、個人病院 | 一般病院や関連施設 |
入試 | 大学の一般選抜や共通テスト利用は、国語、地歴、公民、数学、理科、英語の中から選択 | 面接と作文だけで合格を決定する学校もあり |
それぞれの項目について説明します。
目的
大学は学問を研究する場で大学院への進学の道も開けていることに対し、専門学校は資格取得や就職に役立つ知識を集中して効率的に学べます。
得られる学位
大学ではほかの学部学科生と同じように「学士」という学位を得られます。専門学校では年数に応じて「高度専門士」(4年)や「専門士」(3年)を取得可能です。
修学期間
大学と専門学校はともに4年と3年の修学期間があり、短期大学では3年で卒業となります。いずれの養成校も3年での資格取得は時間的に厳しいのに対し、4年で取得する場合は少し余裕を持って資格試験の準備ができるでしょう。
カリキュラム
大学では入学後に一般教養科目を履修してから専門科目を選択しますが、専門学校ではすぐに専門科目を履修することになります。資格取得に必要な実践的内容を、早く学びたい人に向いているでしょう。
定員
大学は、少人数から100人程度まで定員はバラバラですが、総じて専門学校の定員の方がが多い傾向があります。
学費(目安)
国公立大学は全国で学費が統一されていますが、私立大学や専門学校は規模の大小などによりかなりの幅があるのが特徴です。また、3年か4年かの修学年数や所在地によっても異なります。場合によっては、奨学金の活用も視野に入れた方が良いでしょう。
教員
大学の教員は大学院卒の研究者が多いですが、専門学校は業務経験5年以上の実務経験者が条件とされています。
施設
大学は規模も大きく学問をするための施設が充実していますが、専門学校は専門知識を学ぶための最低限の設備を備えていることが多くなります。
実習先
大学の実習先は大学の附属病院や大学と関連のある介護老人施設・個人病院などが多い一方、専門学校の実習先は一般病院や関連施設となることが多いです。
入試
大学の一般入試で共通テストを利用する場合は、ほかの国公立大学と同様に多くの科目を受験します。これに対し、専門学校の受験科目はさまざまですが、学科より面接や小論文が重視される傾向があることもあるのが特徴です。
理学療法士大学のメリット・デメリット
ここでは、大学と専門学校のメリットとデメリットを紹介します。理学療法士大学のメリットは次のとおりです。
- 施設や設備が充実している
- 基礎科目から専門科目まで幅広い勉強をすることができる
- 資格取得まで余裕がある
- 卒業することで学士の資格を取得することができ、大学院へ進学の道も開ける
- 看護や介護など他の学科の教員や学生と交流できる
- 総合大学では、幅広い学部や学科・サークル活動にも触れられる
一方、デメリットは次のようなことが挙げられます。
- 3年で資格を取得して社会へ出る人とは比べて就職時期に差がつく
- 3年で卒業する人と学費の差が発生する
- 専門外のいろいろな人と接するので誘惑が多い
- 自主的に勉強を続けられないと単位取得が厳しくなる
4年制の大学では余裕を持って学び、学生の自主性が重んじられるので、どんな理学療法士になりたいか揺るがずに目標を持って、しっかり取り組む必要があるでしょう。
理学療法士専門学校のメリット・デメリット
理学療法士専門学校のメリットは次のとおりです。
- 実践的な知識や技術の習得を重視しているので、実務に即した効率的な勉強を行なえる
- 国家試験対策や就職支援を重視している
- 最短3年で卒業して資格取得できるので、学費を抑え早く社会に出られる
しかし、次のようなデメリットもあります。
- 3年制の専門学校はカリキュラムが詰め込まれている
- 講義と実習をこなすと卒業まで時間がない
- 専門外の一般教養を勉強する余裕がない
- 4年制の大学卒業生と比べて、国公立の医療機関や介護施設などでは初任給に差がつくことがある
専門学校では、国家試験に必要な専門知識や技術を集中的に学ぶので、資格取得や就職に特化している特徴があります。
まとめ
理学療法士になるには、養成校で知識や技術を習得し、国家試験に合格することが必要です。養成校には4年制大学、3年制の短期大学、3・4年制の専門学校などがあります。これまで大学と専門学校との違いやそれぞれのメリット・デメリットを解説しましたが、どちらが良いかは個人差があるので一概に言えません。どちらを選ぶかに悩んだ際には、自分がどのような理学療法士を目指しているかを考えるとよいでしょう。早く資格取得して社会に出たいのか、専門以外の幅広い視野も持ちたいのかなど、自分が大切にしている価値観を明確にしていけば、自分が進むべき養成校も見えてきます。今回の記事が、理学療法士養成校選びの参考となれば幸いです。
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