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015.試験間近に保護者ができることーフォローアップ③ー


事務作業は保護者が一手に引き受けて勉強に集中させる

 受験が近づいてきたら試験日のスケジュール調整など、入試に関する勉強以外の事務的なこまごまとしたことも考えなければならなくなります。特に都市部の大学を受験する場合には、地方受験の有無によって、配慮すべき点が大きく変わってきます。

 地方受験ができない場合、受験日に合わせてホテル等への宿泊が必要になりますし、さらに往復の移動時間も考えると、少なくとも一両日は日数をとられることになります。

 たとえば2月10日、12日、13日に地方受験したい併願校があったとしても、11日に東京で第一志望の大学を本学受験で受けなければならない場合には、10日と12日の受験を受けるべきか否か、慎重に判断することになるでしょう。

 まず10日の試験を受けるとなると、それが終わってから東京に向かいホテルに宿泊することになりますが、日程的には非常に慌ただしくなります。そのため「むしろ10日は試験を受けずに、その日の午前中に東京に着くようにして、到着後はのんびりとホテルで過ごし翌日を迎えるべきではないか」と考えることもできます。

 一方、12日の試験に関しても、「11日に試験が終わってその日のうちに戻ればもちろん翌日の試験は受けられる。しかし、そこまで無理して受けるべきかどうか……」などといった判断を求められることになるでしょう。

 また、ホテル代はかかりますが、地方受験のある10日(A大学)、12日(C大学)、13日(D大学)もあえて東京で受験するという選択肢もあります。

 このように入試のスケジュール一つとっても、考えるべきことは少なくありません。

 そのうえ、「宿泊場所はどこにするのか」「受験会場までの行き方は?」などといったことも検討しなければならないのです。試験の直前期になると子どもは勉強に必死なので、こうしたこまごまとしたことを考える余裕はありません。

 したがって、保護者が率先して試験会場の場所や行き方、日程などを調べてサポートしてあげることが必要でしょう。

 アクシブアカデミーでは受験のスケジュールや受験料、出願締め切り日、入学金の額、宿泊の要否などをすべてまとめて生徒に提示していますが、なかには子どものために受験のスケジュールを、エクセルなどを使って上手にまとめている保護者もいます。

 インターネットを使えば情報はほとんど集められますが、情報量が多いため、不明なことがあれば、必要に応じて学校の教師や塾・予備校の講師に相談したり、アドバイスを求めたりしてみてもよいでしょう。

試験前日の過ごし方の注意点

 いよいよ入試が翌日に迫った前日、そして試験の当日には親としてどのようなことを心がけておけばよいのでしょうか。

 まず試験前日には、子どもに「今までやった内容の確認をする程度にして、今日は早めに休むようにしよう」と言ってあげてください。特に、過去問の演習はやらせないほうがよいでしょう。そこで思うように問題が解けないと、「ああ、明日も同じようにできないかもしれない……」などと強い不安を抱いてしまうおそれがあるからです。

 どうしても勉強をしたいというのであれば、基礎的な知識を確認する程度の問題、しかも過去に解いたことのある問題をすすめましょう。それなら、すらすらと難なく解けるでしょうから、「よし、ばっちりだ」と余計な心配をしなくて済むはずです。

 また、今まで特に自分が自信をもって勉強してきた教材を見直すのもよいでしょう。今までの努力が見えることで安心できます。前日に今までの教材を積み上げて、これまでの自分の努力を信じるのもよいと思います。

 子どもの前日の過ごし方に関して、何よりも大事なことはしっかりと睡眠をとること、翌朝に時間の余裕をもって起きられるよう、適切な時間に寝ることです。もっとも、それまで夜の12時過ぎまで当たり前のように勉強していた子どもが、いきなり午後10時や11時に寝ようとしても、そう簡単には眠れないものです。

 そこで、試験の1カ月前になったら、生活リズムをできるだけ朝型に変えるように促します。直前期に、朝早く起きられるよう習慣づけておけば、試験前日も自然と適切な時間に眠れるようになります。

試験当日は〝助走〟の勉強をさせる

 今述べたように、前日は勉強をできるだけ控えておいたほうがよいのですが、試験の際には頭がすぐにフル回転できるような状態になっていることが理想的といえます。

 そこで、脳が全力疾走できるように、試験当日は〝助走〟としてほんの少しばかり勉強をしたほうがよいでしょう。

 たとえば試験会場に到着したら、その日の試験科目が国語の場合には評論文を読む、数学の場合には問題を1問解くなどしておけば、スムーズに頭を試験モードに切り換えることができます。また、英語でリスニングが出題される場合には、耳を慣れさせるためにこれまで使ってきたリスニング用の教材などを聞いておくとよいでしょう。それから、各科目に関して特に苦手に感じているところ、それまでの勉強のなかでどうしても覚えられないところがあれば事前にまとめておくのもおすすめです。

 歴史などでは「◯◯文化がどうしても苦手」「歴代総理大臣とそのときの政党や外交の動きが暗記できない」などというように、特に覚えにくい人名や歴史上の事件、事実などがあります。そうしたものを一覧できるようリストにしたものや教材に付箋を付けた箇所を、試験前に見直しておけば、多少苦手なものでも短期的な記憶で点数は確保できるようになります。

 こうしたことも、ぜひ子どもにアドバイスしてあげてください。

わからない問題が出た場合の対応も教えておく

 子どもには試験でわからない問題が出た場合の対処法も事前に伝えておくとよいでしょう。

 特に第一志望や滑り止めの大学の試験では焦ります。人生をかけて努力をしてきたことの〝本番の戦い〟ですから、プレッシャーは強くかかります。滑り止めも、この大学は合格しないといけないと、プレッシャーがかかりやすいものです。

 たとえば今まで見たことがないような問題が突然現れたときに、多くの受験生は「いったいどうやって答えを出すのか」「時間がないから飛ばすべきか」などと、とまどいや焦りを覚えるはずです。そのような場合には、「目をつぶって、深呼吸するように」と教えてあげてください。

 1分ぐらい何もしなくても大丈夫です。とにもかくにも落ち着くことが大切です。そうやって冷静になってもう一度問題を見直すと、「何だ、この問題は○○の知識について聞いているのか」などとあっけなく答えが見つかることがあります。また、どうしてもわからない場合には、思いきってその問題を捨ててしまってもよいでしょう。

 一つの問題にいつまでも時間を費やしていると、解けるはずの他の問題も解けなくなってしまいます。

 そうしたことを避けるためにも、「できないときは、他の受験生も皆できていないよ。出題者は、わざと難しい問題を出して、できないときに冷静でいられるかどうかをみているんだよ」と言っておくとよいでしょう。当日、問題を飛ばすのも、普段よりも勇気が必要です。安心して次の問題に移ることができるように背中を押してあげてください。

大学受験は満点を取る必要はありません。7、8割の点数が取ればいいのです。逆に言えば、2、3割は捨てても大丈夫だということです。そのことを試験前日や当日に伝えて安心させるとよいでしょう。

試験当日はできる限り試験会場まで同行する

 ここからは地方在住の受験生を対象とした話になりますが、試験の初日だけでもいいので、ぜひ、試験会場までついていってあげてください。

 地方から都市部に出て受験する場合には、先に述べたようにホテルなどに宿泊することになるはずです。おそらく、ほとんどの高校生はそうした場所に一人で泊まった経験がないはずです。そのため、スムーズに、安心して過ごせるように、サポートしてあげてください。

 また、朝、子どもが寝坊しないとは限りません。神経質な子どもの場合は、いつもと違う場所であるということや、試験前日ということもあって、緊張でなかなか寝つけなくなることもあります。

 保護者がそばにいれば、夕食や朝食を食べる場所を先導してあげられます。また一緒にいるだけでも「寝坊して試験に遅れるようなことは防げる」と子どもは安心できるはずです。

 そして朝は忘れ物がないか(受験票や筆記具は持ったか)を確認して、試験会場の入り口では「がんばって」「試験を楽しんでいらっしゃい」などと激励してあげてください。

試験前日に泊まるホテルの場所には配慮が必要

 保護者が試験会場までついていくことが難しい場合には、一人で行く子どものためにより細かな配慮が必要になります。

 たとえば、ホテル等を予約する場合は、朝の電車の混雑具合を考慮しなければなりません。慣れない都市部のギュウギュウ詰めの電車に乗って、試験会場に向かうことは大変なストレスになります。試験会場までできるだけ混まない路線を使っていける場所にあるホテルを選んであげるとよいでしょう。

 また、新幹線や特急列車などを使う場合には、空いている席を探さないですむよう、なるべく指定席を取ってあげてください。

 それから、まだ試験会場を訪れたことがないようであれば、できるだけ前日に下見をするよう促してください。特に地方から出てくる場合は、新宿や池袋のような都心のターミナル駅は広すぎるため、時間を気にして焦っている状態では、出口を見つけるのも苦労するはずです。乗り換え時にそうした駅を使うのであれば、試験当日に迷って遅れないようにするためにも、駅構内の移動経路を確認させておくべきです。

大学に受かった後には一人暮らしの訓練をさせる

 最後に、子どもの努力とがんばりが実って、無事、合格を果たすことができた後のことについても触れておきましょう。

 これほど努力を重ねて、念願の志望校に入学できたにもかかわらず、残念ながら大学を中途退学してしまう学生もいます。割合としては4年間で約1割と、決して少ない数ではありません。

 経済面以外での中退の大きな理由の一つとして、生活リズムの乱れがあげられます。授業の欠席を繰り返し、単位を落として留年。次第に友人とも距離ができて孤立していき、大学に通い続けることが難しくなっていくというものです。

 特に地方の実家を離れて一人暮らしをする場合は、洗濯や掃除をはじめ、今まで保護者任せにしていた生活のあらゆることを自分で行わなければなりません。それに加えて学費や生活費をまかなうためにバイトに時間を割かなければならない学生も多いでしょう。そうした慣れない生活をしていると次第に疲弊してきて、どうしても生活が乱れがちになります。

 そこで、入学するまでの間に、洗濯や料理などを教えて実際にやらせてみる、朝も保護者に起こされることなく自分で起きるようにするなど、一人暮らしの訓練をぜひさせてください。こうした事前の準備期間があるかないかで、おそらく大学生活に対する気構えも大きく変わってくるはずです。

 「親の出してくれるお金を無駄にしないよう、大学ではしっかりと勉強しよう」という気持ちが生まれることも期待できます。

環境と偏差値は適切な情報によって変えることができる

 受験に成功したいと願うのは誰もが同じであり、一人一人の生徒、またその一家族、一家族に強い思いがあります。周りから投げかけられるネガティブな言葉に負けず、泣きながら必死にがんばる生徒、家計が苦しいながらも、子どものことを考え、懸命にサポートし、ときには涙を見せながらも熱心に話を聞きに来た親御さん。

 長年、予備校で指導してきたなかで、さまざまな思いを抱きながら受験に挑む生徒たちと、それを支える親御さんたちの姿を目にしてきました。

 一方で、親御さんや先生など周囲の大人が子どもの夢を押し潰す場合もあります。子どもが自分の将来を真剣に考え努力しているのに、「その大学は無理だ」「どこに行っても同じ」「あなたのことは親である自分が一番わかっている」「あなたにはそこまでの才能はない」などと自身の固定観念やあるいは価値観を押し付ける保護者や先生がいます。結果として、そうした保護者や先生の意見・見方が正しいこともあるでしょう。

 しかし、子どもの成長には想像を超えるものがあります。周りが一方的に決めつけていた限界を生徒が強い意志と必死の努力によって乗り越える例を、私は何度もみてきました。

子どもが限界を乗り越えるためのターニングポイントを、保護者が作ってあげることもできます。子どもが自分で決めた目標を否定せずに、ぜひ、応援してあげてください。「それは素晴らしい、がんばって」と励まし、積極的に子どもを後押してあげましょう。

 私の予備校では、入校を希望する高校生に対して、日ごろの生活習慣を知る目的で、1週間をどのように過ごしているのかを尋ねています。すると、「何をやっていたかわからない」「ぼーっとしていた」「ただただスマホを見ていた」という回答が多く返ってきます。

 そのたびに、私は「高校時代という人生で一度しかない貴重な時間を無駄にさせたくない」「高校生という〝可能性の塊〟が、このまま全く動き出さないままでいたら、後で後悔をするに決まっている。そんな思いはさせたくない」と強く思うのです。

 もちろん大学に入ることが人生のすべてではありません。

 アクシブアカデミーに通っていた生徒のなかにも、将来について深く考えた結果、「やはりパティシエになりたい」と言って専門学校に行き、その後、海外にお菓子作りの勉強に行った子がいました。

 重要なことは、今の自分と同じくらい、将来の自分も大切にすること、つまりは自分の未来について熟考し、なりたいと思う自分を実現するために人生の戦略を練り、その達成に向かって努力することです。そして、そのためには適切な情報にアクセスすることが不可欠になります。

 金銭的な理由など環境が整わないために、あるいは偏差値が足りないために、行きたいと思っていた大学を諦める受験生がいます。しかし、環境も偏差値も、ここまで幾度も触れてきたように適切な情報を得ることで変えることができるのです。ぜひ、本書を手がかりに、その手助けをしてあげてください。

おわりに

 保護者にとって、子どもはいつまでたっても子どもでしょう。

 たとえ高校生になっても、わが子が生まれたときに抱いた「この子を絶対に守らなければ」「幸せになってほしい」「立派に育てなければ」などといった保護者としての思いや愛情に変わりはないはずです。

 そんな子どもを大切に思う保護者の心を大いに悩ますのが大学受験の問題です。

 そもそも大学に進むのか、それとも就職するのか、また大学に進学するとしてどの学校を志望するのか、さらには志望する大学に落ちたら浪人も辞さないのか――。

 子どもが回答を迫られることになるこうした問題の数々は、どれも簡単に答えが見つかるものではありません。どのような答えを出すかによって、その後の人生が大きく変わってしまうのですから慎重に慎重を重ねて、熟慮のうえに判断しなければなりません。

 もちろん最終的に決断するのは子ども自身ですが、自ら下した決断を後で悔やまないようにするためには、保護者も一緒に考えてあげること、子どもの判断が適切なものになるよう積極的にサポートすることが必要になります。

 特に、進路を決める上で必要となる、受験や大学に関する情報を集めて子どもに提供することは重要です。

 本書で触れたように、大学受験は年々複雑化しています。そのなかでいかに情報を集めるかは、志望大学を決めるときはもちろん、その大学に合格するための勉強方法など、具体的な受験戦略をまとめる上でも大切になります。

 また他にも、子どもの受験に対する興味・関心を促したり、勉強へのモチベーションが高まるよう家庭内の環境を整えたり、残された時間を無駄なく効率的に使うための方法を助言したり……などなど、保護者が子どもの受験のためにできることは数多くあります。

 保護者がこうした取り組みをどれだけ熱意をもって行うかによって、子どもの進路の可能性がより広くもなれば、逆に狭くもなります。保護者が本気で子どもの未来を一緒に考えることは大学受験においても求められるのです。

 とはいえ、保護者が独力で子どもの受験をすべてサポートすることは決して簡単ではないでしょう。そこで、必要に応じて、外部の専門家に相談したり、アドバイスを求めたりすることをおすすめします。たとえば高校には進路指導を担当している教員がいるでしょうし、塾・予備校に通っていれば講師やスタッフがいつでも相談に応じてくれるはずです。

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「変わりたい。」を叶えるを実現するために、今までの常識にとらわれない、新しい形態の予備校を運営しています。私たちは、生徒自らが夢や目標を定め、なぜ勉強が必要かを理解できるように正しい情報を提供し、進路指導に時間をかけて受験戦略を立ち上げ、受験で必要な全科目に対して学習計画を練り、進捗管理を行っています。最高の「環境」「指導」「ツール」を提供すべくWebやiPadを活用し、全国のどの地域からでも受講できるように遠隔での指導を行っています。東大の隣にオフィスを構えており、指導チームを中心に、受験に精通した経験豊富な専属スタッフが受験まで1:1でサポートします。

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