目次
①漢文の全体的な勉強の方針
漢文の勉強法全体に言えることは、参考書を用いて読解に必要な基本的な知識を一通り修めた後は演習を通じてアウトプット、復習によるインプットを繰り返していくということです。多くの受験生にとって漢文は共通テストでの利用が主になりますが、漢文に掛けられる時間はそう多くはありません。ただし点数が安定しにくく一問の配点が大きな共通テスト国語では、勉強期間も短く済み、対策が容易な漢文が不十分なまま試験に臨んでしまうのはかなり不利な状況だと言えるでしょう。
②漢文の各要素の学習方法
学習の手順はこの順番がおすすめです。
(1)返り点などの基本的なルール
(2)句法
(3)語彙漢字
(4)漢詩
(5)漢文常識(時間に余裕がある人)
(6)問題演習(センター過去問や参考書)
(7)過去問演習(赤本や予想問題)
(1)返り点などの基本的なルール
▷漢文をこれから始める、もしくは基本的な所から不安だという受験生は一度演習型の文法参考書を用いて一通り学習する。それ以降は実際の問題を用いた演習を通じてインプット、アウトプットを繰り返す。
白文(送り仮名や返り点のない漢字だけの文章)をそのまま読むのは至難の業です。受験生はまず書き下し文を作れるようになることが第一段階でしょう。漢文における書き下し文は古典文法を用いて作られた文章であるため、書き下し文を作れるようになれば古典文法(用言、助動詞、助詞)を用いて正しく現代語訳することが可能になります。
まずは返り点の種類と性質を覚えるところから始まりますが、演習形式で実際に手を動かしながら読む練習をするのをお勧めします。「下」や「二」などの返ってくる文字は飛ばし、「一」や「上」が出てきた時に戻ってくるというだけのルールですが、コツはできるだけシステマチックに行うことです。最終的なゴールとしては一切躓くことなく訓読できるようになることですが、正しい知識を学習しながら学校での授業や問題集で一度さらった後は問題を解くという形でアウトプットを続けていきましょう。量をこなして慣れることが一番です。
(2)句法(句形)
▷漢文を苦手とする受験生が苦戦しがちな分野。参考書を周回してここは完璧に押さえておく必要がある。暗記分野なので繰り返し音読や演習問題をとく事でアウトプットを交えながら完全に暗記する。
漢文には、否定形や疑問形、使役形など、意味別に分けると10~20、さらに細かく分けると50ほどの句法が存在します。これらの構文は決められた形がそのまま文章中に登場することになり、入試漢文における一番のメインテーマといっても過言ではありません。
受験生の方々が書き下し文を学習してからまず習う再読文字や置き字も句法の一つだと考えて良いでしょう。これらは受験本番でもよく問われる最も重要な文法事項の一つですが、数は多くありません。句法で覚えなくてはならないのは「①文型」と「②読み方」と「③訳し方」です。
(例)豈望報乎(豈に報いを望まんや) ①豈~乎 ②豈(あ)に~や ③どうして~か。いや~ない。(反語)→どうして報酬を望むだろうか、いや望まない。 |
必ず声に出して繰り返し唱えることで視覚で読み方や意味を把握するだけでなく、音の形でのインプットを必ず行うようにしましょう。音として覚えておくことで問題文を読みながら句法の使われ方を意識することができます。
(3)語彙漢字
▷任意の参考書に掲載されている重要漢字を覚える。定期的に周回して繰り返しインプットする。読み方が問われる漢字、意味が問われる漢字があるためそれぞれ押さえておく。
漢文では頻出する未知の単語、もしくは現代とは異なる使われ方や意味、読み方を持つ漢字や語句が存在します。共通テスト第一問ではこれが問われる傾向にあり、落としたくはない問題です。何を覚え、何を覚えなくていいのか自分で判断することは難しいため、文法参考書を信用してこれに掲示されている重要漢字を覚えるというやり方をお勧めします。「漢文早覚え即答法」の「コレだけ漢字」や、「漢文ヤマのヤマ」の「読みのヤマ漢ベスト50・意味のヤマ漢ベスト50」がこれに当たります。総数は多くないため英単語を暗記するように、定期的に周回して繰り返しインプットしましょう。
(4)漢詩
▷基本的な方針は通常の漢文と変わりなく、読み方なども変える必要はない。漢詩特有の形式(五言・七言、絶句・律詩)や押韻、対句などの技法は試験で直接問われることもあるためきちんと押さえておく。
漢文では、出題形式として通常の文章と別に漢詩が出題されることがあります。ですが読む上では通常の文章と何も変わらないため、古文の短歌に対し多くの受験生が抱くような苦手意識を持つ必要は全くありません。通常通り訓読し、通常通り現代語訳することが可能です。それとは別に、漢詩を読むうえで覚えておかないことがほんのいくつかあります。第一に漢詩の形式(五言・七言、絶句・律詩)、さらに押韻、対句という技法です。暗記するほど数があるわけでも複雑なわけでもないため、参考書を用いて早いうちに一通り学習を済ませておくことをお勧めします。
(5)漢文常識
▷共通テストでの利用までの受験生は余裕がある人のみ。漢文は過去の実例や逸話をもとに読者に何かしらの教訓を与えようとするものが多く、賢王や愚王として有名な君主などを覚えておくと話の流れがつかみやすくなる。
現代文におけるテーマ力をイメージしてもらえるとわかりやすいですが、それぞれのジャンルにおける知識をあらかじめ持っておくと先の展開や話の流れが予想しやすくなります。また古文常識と同じように現在の習慣とは異なった文化や考え方や時代の雰囲気を学ぶことで誤読を防ぐことにもつながります。ジャンルテーマ(思想史、政治、漢詩など)別に知識を身につけ整理していくのが主流で、私大受験生、二次試験受験生で漢文を使う人は勉強しておく必要があるでしょう。分量は少ないため専用の参考書はほとんどありませんが、「漢文ヤマのヤマ」や「漢文早覚え即答法」には該当する項目があるためそちらを参考にするとよいでしょう。一方で、共通テストのみに漢文を利用する受験生は前提知識を詳しく問われることもないため、やはり句法や語彙漢字をきちんと押さえておくこと、そしてきちんと文章を理解できるかどうかが大切です。
(6)問題演習
▷大事なのは解いた後の復習。自らの弱点はそのままにせず、きちんとチェックしておく。音読に復習で、再度知識の確認とインプットを行う。
知識のインプットが終わったら、早速演習に移りましょう。漢文の点数は演習量に比例するといっても過言ではありません。漢文におけるインプットはそう時間はかかりませんが、それらの知識を完全に定着させるには繰り返しのアウトプットが必要です。また実際に出題される問題文を訓読し、さらに現代語訳するスピードは演習を重ねるごとに早くなっていきます。
しかしただ闇雲に演習量をこなすだけでは不十分です。質を伴った演習量である必要があります。この演習の肝は解いた後の復習にあります。再度問題文を訓読しながら解説に掲載されている書き下し文と相違がないか確認し、次に現代語訳を確認します。この際併せて句法や語彙漢字の確認は済ませておきましょう。インプットしきれていなかった知識や覚えにくいと感じた句法、漢字はチェックしておき、参考書などにマークをつけておきましょう。以上3つ、「①訓読ができる」「②現代語訳を理解できている」「③句法や語彙漢字の確認ができている」の条件を満たしましたら仕上げに、スラスラ訓読できるようになるまで本文を何度も繰り返し音読してください。今まで学習した句法や語彙漢字が詰まっている問題文を音読することは質の高いインプット、アウトプットにもつながります。また、解き終えて音読までの復習を済ませた問題文をそのまま放置せず後日音読による復習をし、きちんと訓読できているか、現代語訳出来ているか再度確認するようにしましょう。
【一週間のスケジュール例】
月曜:演習+復習(音読まで) → 火・水曜:復習(音読のみ)
木曜:演習+復習(音読まで) → 金・土曜:復習(音読のみ)
日曜:最終確認で二題とも復習(音読のみ)
(7)過去問演習
ここでは基本的にアウトプットに特化した演習を心掛けましょう。共通テストの予想問題集、もっと経験を積みたければセンター試験なども用いて実際の入試を意識した学習を進めましょう。二次受験生は共通テスト形式の演習から始め、秋~冬頃からは二次の過去問にも取り掛かるのがおすすめです。私大受験生で過去問が不足しているという方は「漢文 (河合塾SERIES―入試精選問題集)や「標準漢文 (実戦演習)」などの演習問題集も併用しつつ、夏、また冬頃から再度過去問に取り組んでいきましょう。この際意識してほしいのは単なる教材としてだけ利用するのではなく、得点の取り方や知識の使い方、傾向をつかむということです。特に共通や二次では形式が固定的であることが多く、時間配分や解くペースなどをつかむことが重要です。問題の傾向や問われやすい分野に関しては重点的に対策を設けておく必要があるでしょう。
※共通及び二次受験者は過去問が演習教材のメインとなり、演習用の参考書を使用するのは過去問の不足している私大受験者が中心となります。理由としては、共通、二次受験者は漢文の勉強時間と見合わせても過去問のみで教材量が十分に確保できること、それぞれよく考えられていて演習教材としても最適であること、などがあげられます。
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