高校化学の受験勉強をする基本的な流れは、
①基本事項を理解するための参考書(理解本と呼ばれています)や教科書、資料集で基礎知識を習得する
②問題集を使って、①で習得した基礎知識を基に問題を解く力を養う
③過去問に挑戦
となります。①で基礎知識を習得しても②③の段階で分からない、知らないことが出てくことは多々あります。しかし、大学受験における化学の知識量は、大学のレベル間で実はそこまで差はありません。数学と同様、身に着けたものをいかに使っていくかということが試されます。なので、①で基礎知識を習得したら②の問題演習を通じて知識の定着や使い方を学んでいきましょう。あまり①に時間を使っても②で知識の使い方を身につけなければ問題が解けるようにはなりません。なので①では基礎知識の理解に努めて②に進みましょう。
また、高1高2や高3初旬の時期と受験生の勉強法は異なります。学年別の勉強法の詳細は勉強法⑤以降で扱いますが、高1高2で学習中の人は先取りせずに、学校で習った範囲を教科書や理解本で復習しセミナーやリードαなどの問題集を並行しましょう。受験生になってから学習した範囲を一から学ぶ場合や浪人生は理解本で一通り学んでから問題集で演習することをおすすめします。
勉強法①でも述べたように、高校化学には大きく分けて3つの分野があります。1つ目は、化学物質やそれによる化学反応を主に扱う「理論化学」。2つ目は、多様な元素の性質を扱う「無機化学」。3つ目は、有機化合物と呼ばれる物質を扱う「有機化学」。受験ではどの分野もバランスよく出題されるので、満遍なく勉強することが必要になります。以下では、この3つの分野の勉強用をそれぞれ解説していきます。
目次
理論化学の具体的な勉強法
理論化学の勉強のポイント
1.暗記(理解)
2.計算
3.こだわりすぎない
理論化学は、「このときの物質量を計算しなさい」「メタンの燃焼熱を求めなさい」など、とにかく計算が多い分野です。しかし、「物質量」「メタン」「燃焼熱」という用語が出てきますが、これらの意味が分からなければそもそも何を計算しなければいけないのか全く分かりません。そのため、暗記量が多い「無機化学」に比べて暗記する量は少ないですが、最低限の知識を身に着けることは必要不可欠です。このため、理論化学ではまず必要事項を暗記し、それを使って計算・演習をしましょう。
1.暗記(理解)
最低限の暗記が必要な理論化学ですが、例えばどのようなことについて暗記が必要なのでしょうか。実際の問題文から考えてみましょう。
【問題】 次の表(ここでは省略します)にある共有結合の結合エネルギーの値を用いて、メタンの燃焼熱を計算しなさい。 |
まず「共有結合」「結合エネルギー」「燃焼熱」は化学で出てくる基本的な用語です。その次に「メタン」はある物質の名前です。このメタンの化学式が分からなければ当然問題は解けません。さらに「燃焼熱」はこの「メタン」を「燃焼させる化学反応により発生する熱量」ですので、「メタンを燃焼する」という化学反応の「化学反応式」が書けなければ問題は解けません。またその上で燃焼熱を計算するにあたって「ヘスの法則」という原理も理解しなければいけません。
以上のことから、例えば
・元素や物質について(メタンのほか二酸化炭素など)
・用語(共有結合、燃焼熱のほかmol、酸、塩基など)
・公式や原理(ヘスの法則など)
などを暗記することが必要になってきます。化学の問題は、問題文にある知識を使い、自分でその場で式を立てる必要があるので、これらの暗記なしに問題を解こうなど不可能です。また、用語や物質名については単純な暗記で良いのですが・・・例えば「状態方程式(pV=nRT)」という方程式について、これが入試問題で出題されるときは方程式とグラフがセットで出てくることが多々あり、さらにこのグラフは何を変数とするかで形が変わります。単純な式の暗記(状態方程式は、pV=nRTだ!)だけではこれには対応できないので、暗記したものが意味する性質なども理解していきましょう。
おすすめの暗記法として、「カード暗記法」を紹介しておきますので、参考にしてください。
2.計算
知識を蓄えたら、いよいよ計算問題です。特に理論化学は計算が多い分野なのでその練習は欠かせません。まずは基礎的な問題をたくさん解き、公式や知識の使い方を覚えていきましょう。「セミナー」「リードα」などの学校で配られているものは、問題数も多く最初の問題集に最適です。公式や知識の扱いが出来てきたら、典型的な入試問題を扱う「重要問題集」などの問題集で応用力を磨いていきましょう。とにかく、化学は演習あるのみです。
問題演習をする際のやり方として、「理解度別マーク法」「プロセス要約法」を紹介しておきますので、参考にしてください。
理系科目の復習効率、解答力を劇的に高める勉強法- プロセス要約法
ここで、計算問題を解いていくときに気を付けるポイントを紹介します。まずは実際の以下の問題を見てみましょう。
【問題】〔09 愛知工大〕 メタノールとエタノールの混合物を完全燃焼させると、二酸化炭素 2.64g と水(液体)1.98g を得た。このときに必要な酸素の体積は標準状態で何Lか。 |
この問題を解く手順は、①化学反応式を書く、②混合物中のメタノールとエタノールの物質量を計算する、③酸素の物質量を計算する、④それを体積に換算する、という流れになります。これを踏まえると、求めたいものは酸素の体積なのに、酸素どころかまずエタノールとエタノールの物質量を計算していますよね。つまり何段階か計算をしないと答えには辿り着けないのです。したがって、方針が決まったら「自分がいま何を計算しているのか」「なぜ答えの酸素ではなくエタノールを求めているのか」を意識しながら計算しないと、計算量が多い化学では頭がこんがらがってしまいます。自分がしている計算の目的や対象を理解し、意識したうえで計算を進めましょう。
とはいっても誰でも計算ミスや答えの対象の違いからの誤答はしてしまいます。これを少しでも防ぐように、「単位をつけて計算する」ことはその1つの対策になります。
例えば、
「濃度 [mol/L] × 水溶液の体積 [L] = 溶質の物質量 [mol]」
のように単位を明記して計算を行うことで、「モル濃度に体積をかけているから物質量が出てくるな」など単位間違いを防ぐことが可能になります。ぜひ参考にしてみてください。
その他、少しでも計算ミスを減らす方法を紹介しておきますので、参考にしてみてください(内容は数学のものになります)。
最後に、補足的に問題演習をするうえで注意してほしいポイントを紹介します。
3.こだわりすぎない
高校化学は理論化学、無機化学、有機化学がそれぞれ分野間で関わり合っています。そのため、まずは理論化学だけ高める、と考えるのではなく、全体を少しずつ高めていくイメージを持っておきましょう。したがって、理論化学だけ知識を完璧にして理論化学の問題演習をしても、「あれ?こんなの習っていないぞ?」ということも少なくありません。例えば、理論化学において室温で昇華する物質としてナフタレンや、有名な非電解質としてスクロースが出てきますが、これらの物質の詳細は有機化学で扱います。このように、理論化学物質の名前だけ出てきて、詳細な性質が後々出てくることがあるので、あまり深追いしすぎないようにしましょう。問題集の答えに「ナフタレンは室温で昇華する物質の1つなので・・・」などの記載がある場合は、単純にそれだけ暗記していれば大丈夫です。
無機化学の具体的な勉強法
無機化学の勉強法のポイント
1.暗記するものと導けるものを分ける 2.一つの反応を違う視点から見る 3.元素ごとに暗記する 4.グループ化して暗記する 5.資料集を活用する
無機化学は、「この7つのイオンのうち、次の性質からそれぞれに合うイオンを選べ」「この水溶液に希塩酸を加えると白色沈殿が生じた。この水溶液に含まれるイオンは何か」など、元素の性質を暗記してそのままそれを使って問題を解く、というものが多いです。このため、必然的に各元素に対しての性質を暗記する必要があるので、理論化学と比べると暗記量はとても多くなります。この無機化学の分野を勉強する上で大事なことを以下で紹介していきます。
1.暗記するものと導けるものを分ける
無機化学は暗記が多い分野ですが、だからといって全てを機械的に覚えなければいけないわけではありません。例えば、「炎色反応でナトリウムは黄色を示す」「硫化銅(II)は黒色沈殿」「鉄(II)イオンは淡緑色」などは1つひとつ暗記しなければいけないものですが、「銅に濃硝酸や希硝酸を加えたときの化学反応式」は、銅・希硝酸・濃硝酸の半反応式の作り方さえ知っていれば、覚える必要はないのです。硝酸の半反応式は複雑で覚えるには苦労しますが、基礎知識だけで作れてしまうので別に覚える必要はないのです。このようにして、暗記しなければいけないことと暗記する必要がないものの区別をし、暗記量を少しでも減らしましょう。ただし、式を暗記せずに計算によって導く場合は、素早くできるようになっておかないと時間がかかってしまい、試験時間が足りなくなってしまうこともあるので、早く導けるように練習しましょう。
2.一つの反応を違う視点から見る
無機化学を学習すると、元素の様々な性質を知ることができるので、1つの化学反応を色々な観点から見ることができるようになります。例えば、以下のアルミニウムと塩酸の反応を見てみましょう。
2Al + 6HCl → 2AlCl3 + 3H2
この反応式は、生成物の観点からみれば「水素の製法」という反応式と捉えることができます。一方で、「アルミニウムは水素よりもイオン化傾向が高いので、自らイオンとなり塩酸の水素イオンを還元する」という視点で捉えることもできます。このように、異なる単元の知識が1つの反応式に集まっているということもあるので、このような場合は知識が整理されて効率的な暗記が期待できるのです。
3.元素ごとに暗記する
無機化学では様々な元素の性質を覚えなければなりませんが、暗記をするときは元素ごとの暗記を心がけましょう。例えば、「炭素の同素体にはこういうのがあって、酸化物はこんな性質で・・・」といったふうに覚えましょう。ただでさえ暗記量が多いので、元素ごとに分けて整理して覚えなければ知識の海に溺れてしまいます。
覚える項目は同素体や同位体、酸化物とその反応、イオンの反応、色、など様々ですが、ある程度項目は元素によらず決まっています。整理しながら1つひとつきちんと覚えていきましょう。
4.グループ化して暗記する
元素ごとに暗記、といってもまだまだ大変です。そこで、ある程度同じ性質をもつものに関しては元素の垣根を越えてひとまとめにして覚えると良いでしょう。例えば、元素には「族」と呼ばれるものがあり、同じ族に属する元素はその性質が似通ったものが多いです。族とは周期表の縦の列を意味します。その中でも1族を「アルカリ金属元素」、17族を「ハロゲン元素」、18族を「希ガス元素」などと呼びます。これらは似た性質を示すので、系統別で覚えていきましょう。
族別での暗記法を紹介しましたが、これが通用しない、つまり共通点がなくひたすら1対1で覚えていかなければいけない暗記事項も多くあります。その時は、自分でグループを作ってまとめて覚えていきましょう。例えば「塩化銀、塩化鉛、水酸化アルミニウム、硫化亜鉛、水酸化鉛、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、硫酸鉛、炭酸カルシウム、硫化カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウムは白色沈殿」というように”白色沈殿グループ”を自分で作ってまとめて覚えてしまいましょう。他にも「硫化銅の黒色沈殿などの有色沈殿グループ」「淡緑色の鉄(II)イオンなどの有色のイオングループ」「ハーバーボッシュ法などの無機化学工業」なども、まとめて覚えた方が効率的なので積極的にグループ分けしていきましょう。また、イオン化傾向のように自分で語呂合わせを作ってみると、特に印象に残りやすいです。
5.資料集を活用する
資料集は教科書や理解本を視覚的にまとめたものです。無機化学では色を暗記しなければいけない他、問題では実際の化学反応を行っている実験の様子なども出題されます。資料集ではこの様子が写真で載せられており、化学反応のイメージを付けやすくなっています。このように視覚的な情報が多い無機化学では資料集は特に重宝します。もちろん、理論化学や有機化学でも、固体が融解する様子や浸透圧が働いている様子、触媒の働き方など視覚的な情報が有用な場合もあるので、ぜひ資料集は活用していきましょう。
ここでも、おすすめの暗記方法として「カード暗記法」を紹介しますので、参考にしてみてください。
有機化学の具体的な勉強法
有機化学の勉強法のポイント
1.異性体の意味と見つけ方
2.官能基
3.命名法
4.製法
5.構造決定
有機化学は、主に有機化合物と呼ばれる炭素を中心とした物質について扱う分野です。例えば、C4H8の分子式をもつ化合物が、どのような構造を持っているのかを考えると、実は5種類もの化合物があるのです。有機化学からの出題は、与えられた情報から問題で扱われた化合物の構造を決定する、いわゆる「構造決定」の問題が中心となります。この構造決定の問題を解く上での基礎事項などを以下でまとめます。
1.異性体の意味と見つけ方
異性体とは、同じ分子式でも異なる構造をもつ化合物のことです(厳密には構造異性体、幾何異性体、光学異性体があります)。例えば上記で紹介したC4H8の分子式をもつ物質ですが、5種類の異性体全てを覚えなければいけないなんてことは全くありません。基本的に異性体は慣れれば自分で考えて全て書き出すことができます。したがって、理解本などで異性体の見つけ方を身に着け、分子式を見ただけで全ての異性体が書き出せるようになることが重要です。逆に、異性体が書き出せなければ、1つの答えに辿り着き構造を決定することが不可能になることは容易に想像できますよね。このように異性体の書き出しは有機化学の問題を解くうえで必要不可欠になってきます。
2.官能基(反応)
有機化合物は、基本的には炭素まわりに水素が結合した化合物ですが、その他にも様々な元素が炭素と結合します。有機化合物は、この様々な元素が炭素に結合することにより固有の性質を示します。この結合した元素たちのことを官能基と呼びます。
例えばヒドロキシ基と呼ばれる酸素と水素からなる官能基(-OH)は微弱酸性を示したり、エステル結合は加水分解を起こしたり・・・など性質はさまざまです。官能基ごとの性質をしっかりと覚えていきましょう。
さらに、例えばある構造のヒドロキシ基をもつアルコール類は酸化されるとアルデヒド基あるいはケトン基になり・・・など官能基間は関係しあっているものが多いです。これらの関係についてもしっかり整理して覚えていきましょう。
これらを覚えなければ、「この反応を示すのはアルデヒド基をもつ有機化合物だから、構造はこれになるな」などの構造決定をすることができなくなります。それほど官能基は有機化学の問題を解くうえで重要になります。
3.命名法
有機化合物は、異性体を含めてとても種類が多く、全ての化合物に対してその名前を覚えることは困難です。しかし、有機化合物はその数の多さゆえ、一部を除いて命名法が決まっています。このルールさえ覚えれば、初見の化合物でも「この化合物の名前を答えなさい」などと問題が出されても対応できるようになります。慣れればそこまで難しいルールではないので、しっかりと身に着けていきましょう。
4.製法
有機化学における出題の大多数は、与えられた情報から化合物の構造式を決定する構造決定の問題になっていますが、他にもある特定の有機化合物の製法が取り上げられることも少なくありません。
例えば、安息香酸と呼ばれる物質の製法は、その中でも頻出の問題となっています。安息香酸は、トルエンと呼ばれる物質を高温で酸化し、安息香酸カリウムにしたのちに強酸を加えて安息香酸を弱酸の遊離により析出させます。物質によって製法は様々で、1つひとつしっかりと覚えていくことが重要になりますが、この時注意したいのは、例えば上記の安息香酸の製法での「高温で酸化」という反応の条件にあたる部分です。ここは省いて覚えてしまいがちなところなので注意してください。ほかにも触媒が必要な場合はそれも覚えておくと役に立ちます。
また、構造決定が主な有機化学ですが、その構造決定がある物質の製法そのままになっていることもよく見受けられます。製法を覚えていれば難なく解ける構造決定の問題も出題される可能性はあるため、対策をしておいて損はありません。
5.構造決定
有機化学からの出題の大半は有機化合物の構造決定を扱ったものになります。そもそも構造決定の問題とはどういうものなのか、整理していきましょう。
構造決定とは、与えられた情報から化合物の構造式を求める問題です。つまり、炭素や水素などの各元素が1つの分子につき何個あって、どのような官能基がどこについていて・・・のようなことを与えられた情報から求めていく問題になります。したがって、まず扱う試料がどのような組成式、あるいは分子式なのか、そしてどのような構造をしているのか、という順序で考えていくことになります。以下に具体的な解法を掲載したので、参考にしてください。
構造決定問題を解く手順
構造決定問題を解く手順は以下の通りです。
①組成式を求める
②分子式を求める
③不飽和度を求める
④構造式の候補をあげる
⑤構造式を決定する
分子の構造を求めるためにまずは分子式を計算したいのですが、最初から分子式が分かっている場合もあれば、まずは組成式から考えなければいけないもあります。上記の①からの手順にしたがって以下の問題を実際に解いていきます。
【問題】 ある化合物Aがある。Aを15mg はかり、元素分析を行った。この結果、水が36mg、二酸化炭素が33mgできていたことがわかった。なお、化合物Aの分子量は100以下である。化合物Aを酸化して得られた化合物Bは、銀鏡反応を示した。さらに酸化すると化合物Cが得られた。化合物A~Cの構造式を示せ。 |
①組成式を求める
上記の情報から、構成元素(水素、炭素、酸素の3つの場合が多いです)の組成比(炭素1つにつき水素や酸素がいくつあるのかをあらわす比)を求めます。まず、水36mg中に水素原子は2.0mg、二酸化炭素33mg中に炭素原子は9.0mg含まれていると計算できるので、化合物A中に酸素原子は(15 – 2.0 – 9.0 = 4.0) mg 含まれていることになります。このことから元素比は、C:H:O=9.0/12 : 2.0/1 : 4.0/16 = 3:8:1 となるので、化合物Aの組成式は「C3H8O」となります。
②分子式を求める
次に化合物Aの分子式を求めるのですが、上記の組成式「C3H8O」がそのまま分子式になる場合もあれば、この2倍の元素を含む「C6H16O2」が分子式となる場合もあります。組成式がわかったら、そのn倍が分子式になるとして「C3nH8nOn」と分子式を仮定し、与えられた条件から分子式を決定しましょう。この時の分子量は60nと計算できます。今回の場合は、分子量の条件として100以下ということが分かっているのでn=1とわかり分子式は「C3H8O」となりますが、与えられる条件は、問題によって様々です。気体の状態方程式や中和滴定、凝固点降下・沸点上昇など色々なので、臨機応変に対応していきましょう。
③不飽和度を求める
分子の構造を考える前に、不飽和度を求めます。基本的に、炭素とほかの元素間の二重結合や環構造が存在しない場合、炭素の数に対して水素はその2倍に2を足した数だけ存在しますが、これらの構造を持つ場合、その数の2倍だけ水素の数が減っていきます。例えば上記で考えた分子「C3H8O」は、水素の数(8)は炭素の数(3)の2倍に2を足した数(8)となっているため、環構造あるいは二重結合が存在しない、と考えられるのです。他にも三重構造を持つ場合など注意が必要になりますが、このように不飽和度を最初に求めると、持っている構造を搾れることがわかります。
④構造式の候補をあげる
ここまでできれば、②で求めた分子式で③の不飽和度を実現する構造をもつ構造式はかなり絞られてくるので、候補を書き出しましょう。この問題では、化合物Aは「C3H8O」であり、候補としては第1級アルコールの1-プロパノール、2-プロパノール、エチルメチルエーテルの3つあります。このとき、漏れなく候補を書き出すことが重要です。のちに候補を絞っていくときに、正解を書き出すことができていなければ全ての候補が消えてしまい解答をすることができなくなります。幾何異性体・光学異性体含めすべて書き出すことができるよう十分に特訓しましょう。
⑤構造式を決定する
④で挙げた候補から構造式を決定していきます。今回は化合物Aを酸化して得られた化合物Bが銀鏡反応を示すという条件が与えられているため、この酸化物はアルデヒド基をもつということになります。これより、第1級アルコールが酸化されるとアルデヒドになるということを知っていれば、もとになった物質は第1級アルコールである、つまり化合物Aは1-プロパノールである、というふうに構造決定ができます。化合物B・Cはこれがアルデヒド、カルボン酸になっていくという基本的なアルコールの酸化になっているので、構造式は簡単にかけるでしょう。このように、構造決定の問題で決め手となる条件には幾何異性体・光学異性体を含む異性体の有無、脱水できるかどうか、官能基を判別する実験などが条件として与えられます。有機化合物に対する基本的な性質を全て覚えていなければ解けないようになっているので、まずはそれらを暗記してから構造決定の問題に臨むようにしましょう。
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