目次
物理基礎の特徴
物理基礎は、名前の通り物理の基礎を学ぶ入門科目で、物理の内容に広く浅く触れます。物理基礎は、他の3つの基礎科目(化学基礎・生物基礎・地学基礎)と比べると圧倒的に暗記することが少なく、その代わり思考力が問われたり計算を必要とする問題が中心となります。計算や思考力を問う問題として、2021年共通テストの第1問の問1では、力の加わり方について正確に考え、答えを選択しなければいけません。また、第3問の問2では計算しなければ答えは出ません。解答すべき問題は18問あり、そのうち思考力を問う問題は5問、計算力を問う問題は8問ありました。化学基礎は15問中10問、生物基礎は18問中7問、地学基礎は15問中8問が思考力・計算力を問う問題でした。物理基礎では、やはり知識より、思考力・計算力が求められる科目といえるでしょう。
(共通テスト2021より 上:第1問 問1 下:第2問 問5)
①力学分野の特徴(運動とエネルギー、熱とエネルギー)
力学分野は、物理基礎の範囲の中で重要な分野です。過去の共通テスト、センター試験では第1問が小問集合で、残りの第2、3問のどちらかは力学の問題となっています。力学分野は大きく2つに分けて運動とエネルギーの単元、熱とエネルギーの単元に分けられます。運動とエネルギーの単元では、様々な条件下(摩擦の有無、ばねに繋がれているとき、水中など)における、物体の動き方、働く力、持つエネルギーなどについて、力や運動の関係式を立式して考えます。力や運動の様子を表す公式はいくつかありますが、一つの例として、運動方程式があります。運動方程式とは次のような関係式です。
F = ma(F:物体に加えた力, m:物体の質量, a:物体の加速度)
物体に力を加えると速度が変化する、つまり、加速度を持つのですが、この加速度の大きさは加えた力に比例し、方向も一致します。また、加速度は物体の質量に反比例します。この力と運動の関係を、上記の運動方程式で表しています。このような、力や運動、エネルギーの関係を表す公式をいくつか学びます。これらの公式を正しく使いこなすことがポイントとなってきます。力学分野のもう一つの単元である熱とエネルギーでは、分子の運動によって発生する熱について考えます。運動とエネルギーの分野に比べると覚える公式や法則の分量は少ないですが、先述の単元と同様に、正確な理解が必要になってきます。
②波分野の特徴(波動と音)
波の分野は、主に波の性質、音波、弦の振動、気柱の振動に分けられます。そもそも波とは振動が伝わっていく現象のことです。縄跳びやロープの片側を手に持って、その手を上下に動かすと縄跳びやロープも上下にくねりますよね。あれのことです!波の基本性質から始まり、波の様子を図やグラフで表して考えたり、波の性質から導き出される公式を学んだりします。例えば、二つの波が重なったときの伝わり方は、それぞれの波のグラフを書いて高さを足し合わせることで求められます。他にも、弦の振動では、弦の波長λは弦の長さlに比例し、波の腹の数nに反比例することを表す、以下のような公式があります。
λ = 2l/n
このように、グラフや図、いくつかの公式が出てくるので、それらを使って問題を解いていきます。
③電気分野の特徴
電気分野は、中学校で勉強したオームの法則や直列繋ぎ、並列繋ぎ、右ねじの法則などの内容から少し発展した内容を扱います。具体的には、真空中の2つの電荷に働く静電気力や、物質の電気の通しやすさ、電気回路、電流と磁場に関する内容などを学びます。静電気力や磁場など直接目で見えないものを扱うので、イメージが持ちづらいかもしれませんが、原理を一つ一つ丁寧に理解していけば得点できるようになります。
④知識分野の特徴(物理学と社会)
共通試験で例年、平均1問出題される分野で、物理学が社会でどう関わっているのかの知識問題が出題されます。唯一の暗記分野ですが、出題範囲は狭く、基本的にエネルギーと発電・原子力・放射線程度です。
基礎科目内での物理基礎の位置づけ
まず暗記が必要な知識量について見てみると、このようになります。
生物基礎>化学基礎>物理基礎
つぎに計算問題の分量を比較します。
物理基礎>化学基礎>生物基礎
このように見てみると物理基礎は、暗記力よりも計算力や思考力が問われます。少ない公式を覚えて、問題を解くときはその公式をどう使うか試行錯誤し計算をして答えを導くイメージです。
下の表に、過去3年のセンター試験及び共通テストにおける理科基礎の各科目の選択者数と平均点を示しています。理科基礎においては、いずれの年度も物理基礎の受験者数は最も少なく、二番目に少ない地学基礎の半分にも達していません。しかし、平均点は比較的高く安定しています。
センター試験 | ||||
理科1 | 平成31年度 | |||
受験者数 | [%] | 平均点 | ||
物理基礎 | 20,179 | 6.2 | 61.2 | |
化学基礎 | 113,801 | 35.0 | 62.4 | |
生物基礎 | 141,242 | 43.5 | 62.0 | |
地学基礎 | 49,745 | 15.3 | 59.2 | |
合計 | 324,967 | 100.0 | ||
令和2年度 | ||||
受験者数 | [%] | 平均点 | ||
物理基礎 | 20,437 | 6.4 | 66.6 | |
化学基礎 | 110,955 | 34.9 | 56.4 | |
生物基礎 | 137,469 | 43.3 | 64.2 | |
地学基礎 | 48,758 | 15.4 | 54.1 | |
合計 | 317,619 | 100.0 | ||
共通テスト | ||||
令和3年度(1月16日・17日) | ||||
受験者数 | [%] | 平均点 | ||
物理基礎 | 19,094 | 6.5 | 75.1 | |
化学基礎 | 103,074 | 35.0 | 49.3 | |
生物基礎 | 127,924 | 43.5 | 58.3 | |
地学基礎 | 44,320 | 15.1 | 67.0 | |
合計 | 294,412 | 100.0 |
物理基礎選択に向いている人
上で示したように、物理基礎には計算力や思考力など数学的手法が必要です。そのため、数学が好き・得意な人、または暗記が嫌い・苦手な人は向いてると考えられます。また、物理が日常の物理的現象を数学的に表そうという科目なので、日常で生じる疑問を解明するのを楽しめる人にもおすすめです。
物理基礎の要素
1理解しようとする姿勢
どの科目の勉強にも必要なことですが、物理基礎は他の基礎科目と比べると、抽象的・数学的なので一回で理解できないことが多いです。ただ暗記するだけではなく、例えば力学分野ならなんでこの力は下向きに働くのか?というように、疑問を持ち理解を深めていくことが必要です。
2思考力
物理基礎の特徴で述べた通り、問題においてどう力が加わるのか?どの式を使えば答えが求まるのか?など、解答を導くために自分で考える力が必要です。ただ公式を覚えただけでは、変わった形式の問題に対応できません。
3計算力
物理基礎のほぼ全ての問題は計算が必要です。また、10のn乗や小数点以下の数字や平方根が解答になることも多いです。より早くより正確に計算する力が必要です。
物理基礎の参考書の種類
理解本
学校指定の教科書が分かりやすいのであれば、そちらで構いません。物理基礎は計算力も必要ですが、それ以前に公式や原理の理解が非常に重要です。公式を単純に暗記するのではなく、理解本を使って、どのような状況に対して使えるのかも理解しておく必要があります。最近はインターネットのサイトや、ネット通販の口コミなどに詳しく参考書について述べられています。書店で見るのも良し、自分に合う理解本を使用することが大切です。
演習本
物理基礎は頭で理解していても実際にいざ問題を解こうとすると、どう式を立ててどう計算すればいいのか分からないことが多々あります。公式や原理の使い方や理解を深めるためにも、たくさん演習をして慣れましょう。
センタ―過去問・共通過去問
物理基礎のみを勉強する人は、共通テストの受験科目として勉強するという人が多いと思います。共通テストの傾向を知り時間配分を考えることで、高得点を狙えます。そのため過去問演習で、その形式に慣れておくことが必要です。
二次試験で物理基礎を使う人や、そのまま物理を学ぶ人にとっても共通テストの過去問は良い演習になります。
※物理基礎は必要な図は理解本や問題集に載っていることが多いので資料集はなくてもかまいません。
(志望校の過去問)
二次試験で物理基礎のみが出題される大学を受ける場合も、共通テスト同様、傾向や時間配分を知るため過去問を解く必要があります。
物理基礎のよくある質問
Q. 物理基礎をやらなくても物理はできますか?
不可能ではないですが、おすすめはしません。物理は物理基礎の内容をさらに深く理解し、そしてより詳細に数理的に表していく科目です。つまり物理は物理基礎を内包、あるいはそれを土台とする科目になっているので、物理基礎を勉強してから物理に進むことを勧めます。
Q. 物理基礎と物理は何が違いますか?
物理基礎に比べて物理は扱う物理現象も多彩で様々な違いがありますが、やはり一番はその難しさでしょう。物理は、物理基礎に比べ、一気に難易度が跳ね上がります。計算力、原理の複雑さ、公式を使う難易度など、全てにおいてレベルアップします。特に、二次試験の物理では、初めて見る設定の問題が多く、応用力が試されます。
物理基礎で身につくこと
身近で起きている物理現象の原理が分かります。ボールを45度の向きで投げたらどこに落ちるの?100m先にある壁に叫んだら何秒後に声が返ってくるの?これらは物理基礎を勉強すれば答えを出せます。これを求められることは自然の現象を自分で予測できると言えます。しかし、日常でここまで複雑な計算なんてしないし、こんなの勉強しても結局将来使わない、と思う方もいるかもしれません。物理基礎を勉強する方には文系の道を選ぶ方も多いでしょうから、なおさらでしょう。
しかし、この物理基礎の考え方や計算力は将来役立ちます。まず理系を選ぶ人は、物理を専攻しない人であっても、自然科学を相手にするわけですから、物理現象について考える機会はたくさんあるでしょう。物理基礎でならった原理やその公式、また思考力・計算力は、物理現象について考える上で、大きな助けとなります。
文系の道に進む方も、生活するうえで物理基礎は大いに役立ちます。料理をするとき、なにか物を動かすとき、これは物理基礎で学習したことが直接役に立ちます。また、普段の家計の計算・旅行の計画・仕事での効率的な進め方などでは、物理基礎で培われた計算力や思考力が活かされます。そのほかにも、経済学や金融、経営学などを選択する人は、これらの、一見文系の学問と思われる領域でも、株価の動向や保険のリスク計算などは物理同様に高度な数学的手法が要求されるため、物理基礎での勉強がその理解を後押ししてくれるでしょう。
物理基礎並びに物理は一見敬遠してしまう科目かもしれませんが、とても面白く、またその勉強は必ず将来役に立つ学問なので、受験科目としてぜひ候補に入れてみてください。
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