目次
物理基礎を勉強する基本的な流れ
物理基礎を勉強する基本的な流れは、
①基本事項を理解するための参考書(理解本)や教科書で基礎知識を習得する
②問題集を使って、①で習得した基礎知識を基に問題を解く力を養う
③過去問に挑戦
となります。物理基礎では、その発展科目の物理に比べ、条件が容易で分かりやすく、イメージしやすい問題がほとんどです。そのため、①で基礎知識を習得した後にそのまま③の過去問演習に入って構いません。①の理解本や教科書では物理量の特徴を抑えること、公式が何を表しているのか日本語で説明できるようになることがゴールです。高得点を狙いたい人は過去問の前に典型問題集(例えばセミナーやリードLightなど学校で配布されるもので十分です)で演習を積みましょう。①で習得した道具を正しく使いこなす練習をして、物理量や公式への理解を深めていきます。物理基礎は分野間の関連性が薄いため、理解本→典型問題集を分野ごとに進めていくと理解が深まります。問題演習をはさまずに過去問演習を行う場合も分野ごとに①③を繰り返しても構いません。以下で各ステップでのポイントを整理していきます。
物理基礎勉強法のポイント
① 公式や法則を理解するー基礎知識の習得
物理基礎には様々な物理量や公式や法則が出てきますが、例えば生物基礎と比べればその数は圧倒的に少なく、暗記量は理科主要科目の中で最も少ないと言ってよいでしょう。しかし、物理が不得意な生徒は、一つひとつ暗記できているのに使い方が分からず問題を解けない、という方がとても多いです。これを防ぐために、公式や法則は暗記というよりは「理解」を心がけましょう。実際の問題を使ってこれがどういうことか説明していきます。
【問題】(センター試験2020物理基礎・改)
以下から正しいもの1つ選べ。
①1気圧での水の沸点は絶対温度で273Kである。
②融点で物質が固体から液体に変化する際に物質に吸収される熱は、潜熱ではない。
③外部から気体に与えられた熱量は、気体の内部エネルギーの変化と気体がした仕事の和に等しい。
④高温の物体と低温の物体を接触させたとき、物体間の温度差が増大する向きに熱は移動する。
⑤あらい面上を動く物体が摩擦熱を発生し静止する現象は、物体に力を加えて元の速度に戻すことができるので、可逆変化である。
【解説】
①水の沸点は1気圧で100℃なので、絶対温度に直すと 100+273 = 373 K なので不適
②この熱は融解熱と呼ばれ、潜熱の1種であるので不適
③熱力学第一法則より、(気体の内部エネルギー変化)=(外部から気体に加えられた熱量)+(気体にされた仕 事) は(外部から気体に与えられた熱量)=(気体の内部エネルギー変化)+(気体がした仕事)とも表現されるので、正解。
④温度差が減少する向きに熱は移動するので不適
⑤この現象は、物体自体に熱を加えて元の速度に戻すことはできないので不適
まず①は、水の沸点が100℃で絶対温度の定義を覚えていれば、ほぼ暗記で不適当なことがわかります。
続いて②は、まず問題で言及されている熱が融解熱で、潜熱に含まれることを覚えていれば暗記で不適とわかります。
③は、熱力学第一法則をきちんと理解していれば正しいとわかります。熱力学第一法則は、「気体が受け取る熱は、内部エネルギーの変化と気体がする仕事の和に等しい」「気体の内部エネルギーの変化は、気体が受け取る熱と気体がされる仕事の和に等しい」など様々な表現の仕方がありますが、これは気体の仕事の項を左辺と右辺どちらにもってくるかで表現が変わるだけなのです。きちんと熱力学第一法則の意味を理解していれば、問題文と異なる表現で覚えていてもこれが正解とわかります。
④は、熱の移動について覚えていれば暗記で不適とわかります。
最後に⑤について、起こった変化と逆のことをして元に戻る変化のことを可逆変化といい、元に戻らない変化を不可逆変化と呼びます。この意味を分かっていないと、「問題文的には元に戻ってるし、可逆ってことなの?」と不安になってしまうかもしれませんが、今起こっている変化は「摩擦熱でエネルギーを失っていく」変化です。この逆のこととは「熱を加える」ことですが、これによって物体が速く動き出すなんてことはありませんよね。可逆変化を理解していれば不適とわかる問題です。
このように、物理基礎では暗記で突破できる問題もありますが、きちんと公式や法則の意味まで理解していなければ解けない問題が多数出題されます。こういった問題に対処するためにも、この式や法則はどういうこと?と聞かれたときに、すぐ日本語で説明できるまで理解を深めることが大切です。また、物理基礎は具体的な数字を使って計算するよりも文字を使って計算することが多いので、文字で表されているものが何を意味しているのかを正しく理解することが大切です。
公式について
物理基礎に出てくる公式などの暗記について少しお話しします。例えば数学で公式を暗記するにはやはり一度証明をしなければ、ということを耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。確かに物理は多少なりとも数学に似ている面があるため、公式を暗記するにはやはり証明をすることが必要だと思う方もいるかもしれませんが、物理の公式は目の前の現象を説明したものであるため、必ずしも全てが証明できるわけではありません。
例えば、音速についての公式「V=340+0.6t(ただしVは音速[m/s]、tは摂氏温度[℃]」は、「様々な温度で音速を計測したところ、暑い方が速いな。ちゃんと数式化すると、どうやらこの式に従っているようだ」と決めた側もこのような感じです。人間が使っている温度などの物理量を使うとこのように表されるといういわば「都合の良い」式になっているので、勉強するこちら側も「まあそうなっているんだな」程度の軽い姿勢で暗記をしましょう。
ここで、どうしても暗記が苦手という人は、おすすめの方法として「カード暗記法」を紹介しておくので、参考にしてみてください。また、物理ほどではないとはいえ物理基礎はそもそも概念が理解しにくい科目です。どうしても苦手だという方は、本来は基礎事項の理解から問題演習という流れが理想ですが、一旦とりあえず公式を暗記して問題演習をやり、その公式が使えるようになってから理解していくという形でもかまいません。公式を暗記する→典型問題集を解く→教科書(理解本)という流れで進めてみてください。
さて、①で基本事項を習得したらいよいよ②演習に入っていきますが、ここで物理基礎の問題、特に計算問題を解く時に重要なポイントを紹介しておきます。それは、「どんなことが起こっているのか正しく理解する」ことです。まずは問題の状況を理解して、それから①で習ったことを使って問題を解く、というのが物理基礎で計算問題を解く主な流れになってきますので、この「物理現象の理解と把握」が出来ないと問題を解くことができません。起こっている物理現象をイメージすることが難しいような問題は物理基礎ではあまり出題されませんが、理解本などを通じて物理現象の正しい理解とイメージを定着させましょう。
②公式や法則を正しく使うー演習
①だけでも解ける問題は物理基礎にはありますが、高得点を狙う場合に②の演習は欠かせません。習得したことをより正しく使えるようになるには、とにかく演習量を確保します。数をこなすことです。①では「運動方程式」「エネルギー保存則」「熱力学第一法則」など様々な公式や法則を学びますが、特に計算問題の場合は「起こっている物理現象を正しく理解」したあと、この中から「どれ」を「どういう場合」に使うのか、それを問題演習を通じて定着させましょう。選択問題の場合は、自分が①で習得したことの理解を深めていきましょう。ここで注意したいのは、やみくもに数をこなしてしまうことです。ただ数をこなすだけでは意味がありません。あくまでも演習は、 ①で習得したものの使い方を学ぶ練習です。「なぜこの問題ではこれを使うのか」特に計算問題はそれを意識しながら問題演習を行ってください。物理基礎の演習は、学校で配布されているセミナーやリードLightなどの典型問題集で十分でしょう。
<典型問題集の勉強法>
物理基礎の典型問題集には、主に公式の使い方を学べるような比較的易しめな問題から、少し思考力や応用力が必要な問題まで様々な問題を扱っている問題集のことを指します。上述の問題集などが代表例です。こういった問題集では、問題がレベル別に(例えば「基本問題」「発展問題」「総合問題」など)分けられていることが多いので、まずは基本的な問題で正しい公式の使い方を覚えていきましょう。この時、上記の通りなぜその公式を使うのかも理解しながら演習を積んでいきましょう。
具体的な演習の進め方を説明した「理解度別マーク法」「プロセス要約法」をここで紹介しておくので、参考にしてみてください。
③過去問演習
いよいよ過去問演習ですが、問題を解く姿勢は②と同じです。過去問演習を通じて①で習得したことの理解を深めていきましょう。今までも散々と書きましたが、出来なかった問題は解説を見てきちんと理解したり、答えを覚えるのではなくなぜその公式を使うのかを理解したり、とにかく「理解」を心がけましょう。物理基礎で高得点を狙うには「理解」が重要です。解説を見て理解ができなければ、①の教科書や理解本に戻り、自分に足りなかった部分の理解を深めます。この繰り返しをしていけば、自ずと物理基礎が得意になっているでしょう。
最後に、物理基礎の学習に向いている方は、数学が得意な方です。逆に、数学が苦手な方にはおすすめできません。実際の問題でその理由を説明します。
【問題】(センター試験物理基礎2018)
右の図のように、物体に3本のひもをつなぎ、ばねばかりで水平面内の3方向にひき、静止させた。このとき、ひもA、B、Cから物体にはたらく力の大きさをそれぞれFa、Fb、Fcとする。これらの比を求めよ。
【解答】
Fcを紙面縦方向および横方向に分解すると、それぞれFc×sin45°、Fc×cos45°に分解される。縦方向および横方向の力のつり合いから、
Fc/√2 = Fb
Fc/√2 =Fa
これらより、
Fc = √2Fb = √2Fa
よって、
Fa : Fb : Fc = 1 : 1 : √2
となる。
【解説】
力とは数学Bで習うベクトルであり、「向き」と「大きさ」を持ちます。物体が静止しているということは、物体に働いている力が釣り合っているということになります。つまり等しい大きさで逆向きの力が働いていたら、力が釣り合うということです。この問題では、2次元の平面内で力が働いているため、力のつり合いの式は2つ立てられることになります。FaとFbは数学のx軸とy軸のように直行しているため、Fcをこの2つの向きに分解し、それぞれの向きで力のつり合いを考えるという風に問題を解いてます。
この問題には数学的な要素がちりばめられています。例えば、
・ベクトルの分解
・3つの未知数に対して比を求めたいので2つの方程式が必要
・2次元内のベクトルのつり合い=2つの方程式が立てられる
などです。数学が得意な人はこれらの要素が難なく理解出来るかと思います。
物理基礎は、確かに知識だけで処理できる問題も少なくありませんが、計算問題ではこのように数学的な感覚が求められます。理科基礎の科目選択において、数学が得意ではない方は、暗記量は多いが数学的要素が少ない生物基礎や化学基礎を選択した方がより高得点を目指せるかもしれません。
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