大学入試といっても、一般選抜型や総合選抜型、学校推薦型選抜などさまざまな選抜方法があります。
実施時期や試験内容、対策方法も変わるため、それぞれの選抜方法の違いをしっかりと理解することが必要です。高大接続改革により、大学受験のためだけに学ぶのではなく、高校と大学教育を通じて、新たな価値を創造する力を身に付ける重要性が叫ばれるようになりました。知識だけではなく思考力や判断力、主体性をもって学ぶことがより重要になり、それに合わせて入試方法にも変化が起こっています。
この記事では、総合選抜型と学校推薦型選抜に焦点を当て、それぞれの特徴や対策方法、勉強スケジュールなどについてお伝えしていきます。記事を読み終えると、それぞれの選抜方法についてしっかりと理解できるようになり、志望大学に合格するためには、どの選抜方法を利用したらよいかを判断できるようになるでしょう。
目次
総合型選抜とは?
総合型選抜は、かつてはAO(アドミッションオフィス)入試と呼ばれていました。学習面と課外活動の両面から、大学側が求める学生像に合った受験生を選抜する方法です。
のちほどお伝えする学校推薦型選抜よりも、学習面の重要性が低めの傾向があります。代わりに、これまでの課外活動などについてプレゼンテーションや小論文で自己PRを行い、自分自身が志望大学にふさわしい人材であることをアピールします。求める学生像は大学ごとで異なるために大きく異なるため、事前に大学の教育理念や入試要項を入念にチェックし、準備を行う必要があります。また、文化活動やスポーツにおいて実績がある人が出願できる、スポーツ推薦や有資格者推薦、課外活動推薦などもあります。特定のスポーツで実績を残した人や、英検などの資格がある人、生徒会活動やボランティア活動などの実績がある人にはおすすめです。
総合型選抜の特徴
総合型選抜では、高校時代の成績を含む書類審査を行いますが、多くの大学では学校推薦型選抜に比べると、成績については緩やかな評価基準を設けています。以前は学力を測るテストが不要の大学もありましたが、現在では文部科学省の方針を受け、志願者にじゅうぶんな知識や表現力、思考力が備わっているかを判断する形式に代わりました。
具体的には、各大学が以下のひとつもしくは複数の評価方法を用い、合否を判定するようになっています。
- 小論文
- 面接
- プレゼンテーション
- 実技
- 各教科の筆記試験
- 資格試験、検定試験の成績やスコア
総合型選抜の場合、プレゼンテーションや各種提出物を通じて、志望校に対してどれだけ学びの意欲があるかを示すことができるかどうかが合格のポイントと言えるでしょう。
国公立大学の総合型選抜
国公立大学のおよそ7割が実施している総合型選抜は、例年9月以降に行われます。いくつか試験内容や出願条件などの具体例を以下で紹介します。
国公立大学総合型選抜の例
- 千葉大学国際教養学部
- 募集人員:7名
- 既卒生(浪人生)の出願可
- 併願可
- 面接
- 学びの履歴書、課題論述
- 共通テスト
- 募集人員:7名
- 横浜国立大学教育学部
- 募集人員:25名(専門領域枠英語3・理科4、領域指定なし18)
- 既卒生(浪人生)の出願可
- 専願のみ
- 面接
- 自己推薦書、課題レポート、小論文
- 共通テスト
- 北海道大学理学部地球惑星科学科
- 募集人員:5名
- 既卒生(浪人生)の出願不可
- 専願のみ
- 「物理基礎・物理」または「化学基礎・化学」を履修済み
- 面接
- 個人評価書、自己推薦書
- 学力試験(科学的基礎知識、論理性、判断力)
- 共通テスト
上記のように、大学によって募集人員や条件が異なりますが、1次で書類審査、2次で面接や小論文などを課すパターンが多めです。基礎学力を測るために、共通テストを課す大学が増えています。ほかにも、別途独自の学力試験を課す大学もあります。多くの書類の提出が必要となるため、受験生は早めの準備が必要です。
私立大学の総合型選抜
私立大学の総合型選抜も国公立大学と同じく、例年9月以降に行われます。いくつか試験内容や出願条件などの具体例を以下で紹介します。
私立大学総合型選抜の例
- 青山学院大学地球社会共生学部
- 募集人員:31名
- 既卒生(浪人生)の出願不可
- 併願可
- 高校成績3.8以上
- 面接
- 志望理由書、小論文
- 英語資格・検定試験(英検準1級、TOEIC700点、TOEFL68点などのうちいずれかの条件を満たす)
- 専修大学経済学部国際経済学科
- 募集人員:20名
- 既卒生(浪人生)の出願可
- 併願可
- 面接
- 志望理由書、小論文
- 英語資格・検定試験(英検2級CSEスコア1980以上、TOEIC7550点、TOEFL54点などのうちいずれかの条件を満たす)
- 関西学院大学教育学部(初等教育)
- 募集人員:若干名
- 既卒生(浪人生)の出願可
- 併願可
- 面接(口頭試問を含む)
- 自己推薦書、学びの計画書
- 学力試験(英語論述審査)
- 英語検定試験(スコアCEFR B1以上)
私立大学の場合、審査方法も面接やグループワーク、レポート提出など多岐にわたります。同じ学部や学科でも複数のタイプの総合型選抜を実施している場合がありますので、募集要項をしっかりと読み込み確認するようにしてください。傾向としては、難関と言われる大学では国公立大学と同様に、1次で書類審査、2次で面接や小論文が行われることが多いです。また、英検をはじめとした英語検定試験のスコアや級を積極的に利用している大学も多く見られます。
面談を複数回実施している大学も多く、この場合は大学側が求める学生像に志願者がマッチしているかどうかや、志願者の意欲がより重視されます。
総合型選抜を目指すための対策
以下で、総合型選抜での合格を目指すために対策するポイントやスケジュールについてお伝えしていきます。
総合型選抜の対策ポイント
志望大学によりますが、多くの学校で「提出書類」「面接」「学力試験」への対策が必要です。ひとつずつ見ていきましょう。
【提出書類:志望理由書などを作成、提出します】
自己分析を行います。今まで自分が取り組んできたこと、興味があること、頑張れたこと、辛かったことなど過去の経験を洗い出してみましょう。その行動をとった時に、どんな考えをもって行ったのか、どういった工夫をしてきたかについても掘り下げて分析します。そして、自分の考えをまとめたものを志望理由書に記入していきます。
【面接:個人面接もしくはグループ面接が行われます】
志望理由書の作成を通して行った自己分析をもとに、自分の強みを認識し、アピールします。ひとりよがりにならずに、面接官の立場に立ち、どのような回答が求められているのかをくみ取る力も必要です。
【学力試験:小論文など】
各大学でさまざまな形式の試験が行われますが、過去問が確認できる場合は、どのような問題が出題されたのか傾向を分析してください。総合型選抜の対策で大切なのは、「自己分析を行い、将来どうなりたいかの展望、希望を明確にする」ことです。そうすることで、自分の強みを正しく認識することができ、アピールにつながるからです。
総合型選抜を目指す場合のスケジュール例
総合型選抜の募集要項、願書配布は夏までに行われ、出願は9月以降に行います。各大学により専攻時期や方法は異なりますが、多くの大学で9月から11月にかけて選考を行い、年内までに合否が確定します。選考の実施時期が9月と11月では2か月間もズレが出てしまうため、準備を始めるタイミングも変わってきます。志望大学のスケジュールを把握しておきましょう。
- 6月以降:募集要項配布
- 7月以降:願書配布
- 9月以降:出願→選考
- 11月以降:合格発表
学校推薦型選抜の特徴
学校推薦型選抜は、かつては推薦入試と呼ばれていました。「指定校制推薦」と「公募制推薦」があり、出身の学校長による推薦が必要です。最近では併願が可能な大学も増えていますが、多くの大学は合格したら入学前提となる専願制度をとっています。
「指定校制推薦」は、大学が指定した高校の生徒が対象となり、既卒生(浪人生)は出願できません。総合型選抜と比べると成績面での基準が厳しく、学内でもトップクラスの成績が必要な場合もあります。「公募制推薦」は既卒生(浪人生)でも出願できる場合もありますが、実施されている大学が少ないため厳しい戦いとなっています。
また、文化活動やスポーツにおいて実績がある人が出願できる、スポーツ推薦や有資格者推薦、課外活動推薦などもあります。特定のスポーツで実績を残した人や、英検などの資格がある人、生徒会活動やボランティア活動などの実績がある人にはおすすめです。
国公立大学の学校推薦型選抜
国公立大学の9割以上が実施している学校推薦型選抜は、例年11月以降に行われます。「指定校制推薦」と「公募制推薦」がありますが、ここでは公募制推薦を実施している大学について、試験内容や出願条件などの具体例を以下で紹介します。
国公立大学学校推薦型選抜の例
- 東京学芸大学教育学部初等教育教員養成(A類)/国語
- 募集人員:15名
- 既卒生(浪人生)の出願可
- 併願不可
- 成績4.0以上
- 推薦書
- 面接(口頭試問含む)
- 小論文
- 条件:将来教員となる強い意欲を有する者
- 東京農工大学農学部生物生産学科
- 募集人員:6名
- 既卒生(浪人生)の出願不可
- 専願のみ
- 推薦書
- 面接
- 志望書
- 共通テスト5教科7科目
- 広島大学経済学部経済学科
- 募集人員:10名
- 既卒生(浪人生)の出願不可
- 専願のみ
- 成績4.0以上
- 推薦書
- 面接
- 志望書
- 共通テスト3教科3科目(得点合計が合格基準点250点(/500点満点)以上であること
上記のように大学によって募集人員や条件が異なりますが、基礎学力を測るために、共通テストを課す大学が増えています。志望書を仕上げるのはもちろん、共通テストに向けて対策が必要となるため、早めの準備が必要です。共通テストを課さない大学の場合は年内に合否結果が分かるところも多いですが、共通テストが必要な大学では、合否が分かるのは2月に入ってからのところがほとんどです。
私立大学の学校推薦型選抜
私立大学の学校推薦型選抜は、例年11月以降に実施されており、大学入学者のうちおよそ4割の学生が学校推薦型選抜を利用しています。「指定校制推薦」と「公募制推薦」がありますが、ここでは公募制推薦を実施している大学について、試験内容や出願条件などの具体例を以下で紹介します。
私立大学学校推薦型選抜の例
- 日本大学商学部商業学科
- 募集人員:11名
- 既卒生(浪人生)の出願不可
- 併願不可
- 高校成績3.8以上(英語4.0以上もしくは英検2級以上)
- 推薦書
- 面接
- 学修計画書、小論文
- 東京農業大学農学部農学科
- 募集人員:35名
- 既卒生(浪人生)の出願可(一浪まで)
- 併願不可
- 高校成績3.5以上
- 推薦書
- 面接
- 小論文
- 同志社大学グローバルコミュニケーション学部英語学科
- 募集人員:13
- 既卒生(浪人生)の出願可
- 併願可
- 推薦書
- 面接(日本語と英語による口頭試問)
- 小論文、志望理由書
- 英検準1級、TOEIC650点以上、TOEFL68点以上のいずれかをクリアしていること
学校推薦型選抜の場合、提出書類の中に高校からの調査書が含まれるのが総合型選抜との違いです。大学によりますが、上記のように成績基準を設けているところが多く、専攻によって特定科目の成績がより重視される傾向があります。
学校推薦型選抜を目指すための対策
以下で、学校推薦型選抜での合格を目指すために対策するポイントやスケジュールについてお伝えしていきます。
学校推薦型選抜の対策ポイント
学校推薦型選抜の対策ポイントとしては、まず「高校の成績をできるだけ上げる」必要があります。ほとんどの場合、すべての科目の評定平均が問われますので、苦手科目をできるだけ作らないようにしましょう。高校3年次の秋に出願することを考えると、3年生になってから成績を上げようと思っても間に合いません。2年生までにいかにすべての科目で高い評価を得られるかを意識しつつ、生徒会活動や部活動、ボランティア活動など自己PRにつながる活動を積極的に行うことが大切です。希望学部にもよりますが、英検や簿記などの資格を取得するのもプラスになるでしょう。
ほかには、志望理由書を作成するために、今まで自分が取り組んできたこと、興味があること、頑張れたこと、辛かったことなど過去の経験を洗い出してみましょう。自己分析を行い、大学でどのような学びを行い、将来につなげていきたいのかをはっきりさせます。面接では、志望理由書の作成を通して行った自己分析をもとに、自分の強みを認識し、アピールします。ひとりよがりにならずに、面接官の立場に立ち、どのような回答が求められているのかをくみ取る力も必要です。
学校推薦型選抜を目指す場合のスケジュール例
学校推薦型選抜の募集要項、願書配布は夏までに行われ、出願は11月以降に行います。各大学により専攻時期や方法は異なりますが、多くの大学で11月~12月にかけて選考を行い、年内には合否が確定します。
- 6月以降:募集要項配布
- 7月以降:校内選考(指定校推薦)
- 8月以降:願書配布(公募制推薦)
- 11月以降:出願→選考12月以降合格発表
そもそも入試方法の改革が必要になった背景
総合型選抜や学校推薦型選抜の実施方法を変更したり、センター試験が廃止となり共通テストがスタートするなど、大学入試改革の必要性が叫ばれている昨今です。そもそも、なぜ入試方法の改革が必要になったのでしょうか?
高大接続改革の概要
「グローバル化の進展により社会構造が急速に変化しており、予見の困難な時代において新たな価値を創造していく力を育てる必要がある」との考えから、文部科学省が提案したのが「高大接続改革」です。学力の3要素(1.知識・技能、2.思考力・判断力・表現力、3.主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度)を育成・評価することが重要との見解から、高校・大学・大学入試が三位一体となって改革に取り組むこととなりました。
3つの改革
高大接続改革を実行するにあたり、高校・大学・大学入学者選抜それぞれのステージで以下の改革が行われることになりました。
- 高等学校教育改革
- 知識を身に付けるだけでなく、主体的・協働的な学びを促進する。学習指導要領の改訂。
- 大学教育改革
- 高校で学んだ内容を発展させ、学生が互いに刺激を与えながら成長するよう促進する。予想困難な未来におい、自ら問題に対して答えを見つける力を身に着ける。
- 大学入学者選抜改革
- センター入試を廃止し、知識理解力に加え思考力や判断力を問う共通テストを行う。一般入試、推薦入試、AO入試の区分を廃止し、新たなルールを制定。
まとめ
この記事では、総合型選抜と学校推薦型選抜の特徴や違いについて、実施している大学の具体例を挙げて解説してきました。
大学によって異なりますが、大まかな特徴は以下のようになります。
学校の成績 | 調査書 | 面接 | 小論文など学力判定 | |
総合型選抜 | あまり重要ではない | 不要 | あり | あり |
学校推薦型選抜 | 重要 | 必要 | あり | あり |
大きな違いとしては、学校推薦型選抜では学校の成績が重要視されるということがありました。どちらの選抜方法でも、合格するためには自己分析を行い、面接や小論文などで自己PRをしっかりと行う必要があります。入試スケジュールとしては、総合型選抜が9月から、学校推薦型選抜が11月から出願となります。これらの選抜方法でうまくいかなかった場合は、年が明けてから一般選抜方式で志望大学にチャレンジすることが可能です。高大接続改革により、大学の選抜方法が変化を迎えています。多種多様な選抜方法があるため、頭が混乱してしまうこともあるかもしれません。時間を取って、自分に合った選抜方法はどれなのかを考えてみてください。
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