目次
古文の特徴
古文は他教科に比べて点数も小さいことから時間も割きにくく漠然とした苦手意識を持ちやすい科目ですが、そのまま受験を迎えてしまうと大きな穴になってしまいます。また、単語や文法など基本となる知識がないまま現代文と同じ感覚で読んでしまい、なんとなく意味を取って読めた気になってしまうことも古文勉強を後回しにしてしまう要因になっており、実は現代語との違いや常識との違いこそ問われるポイントであるため、必ず勉強する必要がある科目です。
特に一問の配点が大きく点数の安定しにくい共通テスト国語では、基礎知識をもとに本文が読めれば比較的正解しやすい古文漢文を固めることは必須。他教科との兼ね合いから点数を取るための効率的な努力を目指す必要がありますが、大きな流れは単語+文法→読解テクニック→問題演習というシンプルなものです。
特に高校一年次に文法の基礎を学習した後演習を積むという点では英語とも共通しています。そのため基礎的な知識が疎かなまま一度ついていけなくなってしまうと、苦手なイメージをもったまま長期間苦しんでしまうことになってしまいます。ただし、単語数も文法も読解テクニックも英語と比較し格段に少ないので、短時間で挽回可能でもあるのが古文という科目です。苦手なままにするのは勿体ありません。今はまだ苦手科目でも、短期間での習得を目指して早めに得意科目に変えていきましょう!
古文の要素
① 単語
古文単語の基本は単語帳です。単語帳を周回することが古文単語の学習方法であり、市販の単語帳にのっているもの以外は文章に出てきたとしても覚える必要は薄いことに注意しましょう。一般的に覚えるべき受験古文単語は約300語、最難関大学でも600語と言われており、単語帳もその範囲で作られることが多いです。英語と比べれば少ない数ですが、この暗記を困難にしている原因は二つあります。
1つの単語がたくさん意味を持つ場合がある
歴史や場面に応じて意味が派生しただけで元の意味は変わらないのですが、現代の私たちからすれば全く違う意味に感じてしまいます。それぞれ覚えておかなくてはいけませんが、多くの単語帳は丁寧に原義説明がついており覚えやすくなっています。原義を中心に意味の関連や派生を絡めて覚えることが古文単語暗記のコツです。
例:はしたなし … 1, 中途半端だ 2, きまりが悪い 3, そっけない 4, 激しい
端(はした)は中途半端な様子をあらわし、「なし」は否定の意味ではなく「せつなし」と同じように状態を示します。そこから中途半端な様子、さらにそのような状態から来るきまり悪さを表すようになりました。このように原義から意味の関連をイメージすることが暗記のコツです。
現代語と同じ言葉が古文特有の意味を持つ場合がある
古文単語とはいえ古くは日本で使われていた言葉であるため、聞き覚えのある単語は多いです。しかしそういった時、現代の知識から安易に意味を取ってしまうのが誤読の一番の原因です。単語帳にのっている覚えるべき単語はきちんと暗記するようにしましょう。
例:いとほし … 1, 気の毒だ 2,かわいい
② 文法
古典文法は大きく分けて
・用言(動詞や形容動詞)の活用
・助動詞
・助詞
・副詞
・敬語
に分けられます。古典文法を習得するポイントは語呂合わせやリズムをつかって、着実に暗記量を増やしていくことです。活用や意味などは覚えるしかないため、学校で文法の授業がなされている場合は授業の進度に合わせて少しずつ習得度合いを高めていきましょう。文法事項がそのまま問われることもありますが、最終目標は文章を文法に従ってすらすら読めるようになることです。問題集や参考書を使って一通り習得した後は実際に文章を読む形で演習、復習していきましょう。その際絶対にしてほしいことは原文の品詞分解です。実戦形式で文法を確認し、曖昧なところがあれば毎回復習を欠かさないようにしましょう。面倒くさがらずに繰り返しアウトプットすることが古典文法の鉄則です。
③ 文法(発展)・読解テクニック
実は文法は上記の内容だけだと十分とは言えません。古文を読む際には上記の基本的な文法に加えて読解に役立ついくつかの法則やルールを覚えておく必要があります。
例えば、単語や文法がある程度完了した古文学習者がそれでも文章を読みにくいと感じる大きな原因として「主語の省略」があります。古文の特徴として主語に限らず多くの言葉が省略されることが挙げられますが、受験生はこれを補いながら読まなければならず、その際に様々なコツや公式を用いなければいけません。文脈に頼って補完するのも一つの方法ですが、取り違えてしまうと誤読につながってしまいます。
この児(かぐや姫)、養ふほどに、すくすくと大きになりまさる。
三月ばかりになるほどに、よき程なる人になりぬれば、髪上げなどさうして、髪上げさせ、裳着す。
学校でも一番初めに習う竹取物語の序文ですが、正しく文意がとれるでしょうか。特に二行目では主語が途中で変わっていますが、気づくことができるでしょうか。
「三月ばかりになるほどに、よき程なる人になりぬれば」
→(かぐや姫は)三か月くらいになる頃には、いい年頃の人になったので
「髪上げなどさうして、髪上げさせ、裳着す」
→(翁は)髪上げ(成人の儀式)など手配して、髪上げをさせて、裳を着せる。
ここで主語の変更を読み取るポイントは接続助詞の「ば」です。順接の仮定条件・順接の確定条件をしめす接続助詞ですが、前節が条件文となるため主語が前後で変わりやすいという特徴があります。これに加え、「手配する」を意味する動詞「さうす」や使役の助動詞「さす」と併せて考えると後半の主語はかぐや姫ではなく、翁であると読み取ることができます。
実践ではこのような助詞や読点、敬語を使った主語の判別や、連用中止法や準体法など細かな文法事項が必要であり、直接問題に問われる場合もあります。これらは古文読解の参考書や演習を通じて身に着ける必要があります。
④ 古文常識
単語、文法を抑えて一通り文章が読めるようになったら、次に固めるべきは古文常識です。文章が訳せていても、現代とは異なった常識や文化がある古文に対し現代の感覚がノイズとなって読み違えの原因になることがあります。これを防ぎ、読解を助けてくれる大切なツールとなるのが古文常識です。
例えば恋物語が描かれることの多い古文では、当時の恋愛文化を知っておかなくては理解しづらい状況が多々発生します。上流階級において女性は表立って顔を見せることがなく、男が評判を聞いたりのぞき見をすることから恋愛が発展することや、手紙や歌でのやり取りを経て女性側が会うにふさわしいと判断してから、男が夜に人目を忍んで女の家を訪れます。
こうした流れを知っていれば文章の内容を大方推測できる上、確実に読み進めることができます。歌を送る意味や女性側は女房(朝廷に仕える女官(にょかん)や女性の使用人)を通じて手紙の受け渡しをすることを知っていれば、場面把握や登場人物の関係も把握しやすくなり、読解に役立ちます。
⑤ 問題へのアプローチ力
以上4つの読むためのテクニックとは別に、問題を解くためのテクニックも重要です。
古文における代表的な問題形式は
・現代語訳
・文法
・内容説明
・理由説明
の4つです。
特に長文による時間的制約との闘いとなる共通テスト古文では、キモとなる内容、理由説明問題に対し特化した読み方をする必要があります。例を挙げると、リード文、注をきちんと読むことや最初に問題文に目を通すなどの単純なテクニックから、心情を表す形容動詞に着目したり文の終わりから主張を読み取ることなど問題を意識した読解テクニックまで、これらを身につけることで安定した得点がとれるようになっていきます。
⑥ 和歌
受験生が最後まで苦手にしがちなのが和歌です。文章を読む時と同じように読もうとすると読みにくい原因は和歌特有のルールや文法に対する知識が不足しているからであり、和歌のためのいくつかの補足知識を身に着けた後であれば基本は直訳に変わりありません。分量も少ないため和歌対策がのっている参考書をさらって基礎知識を身につけさえすれば問題ない範囲です。
例えば和歌の修辞で最も特徴的な「掛詞」と呼ばれる技法があります。一つの言葉に二つの意味を掛ける技法で、例を挙げると「あき」に「秋」と「飽き」の意味を含めることを指します。
あき風に 山のこの葉の 移ろへば 人の心も いかがとぞ思ふ(古今和歌集)
秋風で山の木の葉が色あせていくように、人の心も移り変わっていくものなので…
こうした和歌特有の技法は和歌用の解説書や問題集を使って学習する必要があります。問題に占める重量は大きくはないので、短期間にまとめて学習して和歌用の知識を一気に身につけ、演習を重ねていくようにしましょう。また、和歌だけが単独で出題されることはなく、必ず文章の中で取り上げられます。そのため、問題を解く際は本文中から「誰がどんな状況で、どんな心情を詠んだか」をつかむことがポイントです。
古文の参考書の種類・使い方
古文単語帳
300~600語しかない受験古文単語は、早めに覚えてしまい演習で確認するのが理想的です。そのため基本方針としては、短い時間で何度も周回する方針をお勧めします。ここまでは英単語と似た暗記方法ですが、古文単語では一つの単語が複数の意味を持つことが問題のポイントとして上げられます。これに対し各社の単語帳は大きく分けて二つのアプローチをしています。
- 原義から派生して論理的に訳を覚える
- 語呂合わせやリズムで訳を単純暗記する
多くの単語帳は1のパターンで、お勧めしたい方もこちらです。明確な読解のためには単語の訳を複数暗記してあてはめていくより単語の持つ感覚・イメージを文意に合う形で適用する方が自然で暗記量も減りますし、訳の丸暗記では対応できない和訳問題にも柔軟に答えを導くことができます。
2のパターンは、1の単語帳だと一向に覚えられないという人にお勧めする単語帳です。ゴロゴ単語帳などが代表的ですが、語呂合わせは何回も口に出して単語を見た瞬間詰まることなく思い出せるようにしましょう。また、訳語だけではなく、単語の説明も熟読してその単語のイメージや原義も頭に入れておくようにしましょう。デメリットは語呂以外の意味を追加しづらくなる点と、瞬時に意味が出なくなるために読解速度が鈍る点です。
パターン1
パターン2
古文文法書
文法対策の参考書にも2つの形式があります。
- 理解本 ・・・ 一から古典文法の勉強を始める人、古典文法への苦手意識が強い人
- 問題演習中心の本 ・・・ 学習した記憶はあるが精度や暗記に不安がある人
迷った時は1の理解本形式を取っている参考書を選ぶのがおすすめです。勉強の進行度合いにかかわらず効果的であり、文法の本質から暗記方法(語呂合わせなど)まで丁寧に書かれているため一から古典文法の勉強を始める人、古典文法への苦手意識が強い人は2より1の文法書を選ぶべきでしょう。
2はすでにある程度の知識がある人に向けた参考書です。本格的な演習に入る前に改めて文法を確認しておきたい人や、大方の内容は把握しているがまだ不安だという人はこちらの参考書を使用しましょう。こちらの参考書の良いところは、事細かな説明や冗長な記述がない代わりに短期間で周回できるという点です。
パターン1
パターン2
古文読解本
古文読解における苦手意識や躓くポイントを解決してくれる本で、内容としては前述の「文法(発展)・読解テクニック」「問題へのアプローチ力」などそれぞれをテーマに出版されています。単語、文法を一通りおさめた後これらの理解本に進んで実際に問題を解くために必要な知識やテクニックをおさめ、盤石にしましょう。
古文問題集・過去問
古文の成績を向上させるためには演習量の確保が必須です。古文の基本は品詞分解です。問題を解いた後はうまく訳出できなかった部分や引っかかったポイントを忘れないうちに訳を確認しながら全文の品詞分解を行い、活用や意味を含めた文法事項を総復習しましょう。
古文常識・和歌など
古文常識や和歌対策のための参考書も様々な形で用意されています。読解本の一部に収録されていることも多いですが、苦手分野を重点的に克服したいときには非常に効果的です。
古文のよくある質問
Q. 勉強しなくても何となく読めますが、勉強は必要ですか?
A.はい。古文は言葉こそ日本語と変わりありませんが、長い時間をかけて変化しており単語に至っては全く異なる意味を持つこともあります。文法も同じく変化しており、現代語と同じ感覚で読むと誤読につながる部分というのが問われやすいポイントでもあります。英語のように別言語として割り切って一から単語、文法を学習し、「古文の読み方」を学ぶことが大切です。
Q. 共通テスト対策には最短でどのくらいかかりますか?
A.はい夏までに単語、文法、読解方法、までは押さえ、秋以降に共通テスト対策の問題集や過去問で演習していくのが必要十分な学習ルートだと思われます。最短では単語と文法には1週間から1ヶ月、読解と演習期間に1ヶ月から2ヶ月が目安で、特に演習に関しては詰め込まず長期にわたって定期的に問題に触れていくことが成績向上のコツです。
Q. 学校の期末試験ではそこまで悪い成績ではないのですが、模試の点数があまりよくありません。
A.文法、単語のまとまった知識が曖昧であること、演習不足で初見の文章に対応することに慣れていないことが主な原因だと思われます。試験を振り返り、そもそも読めなかったのか、読めなかったのはどうしてかなど自分ができなかった原因を分析し、対策を練りましょう。文章がそもそも読めなかった場合は単語、文法を総さらいすることが第一です。初見の文章に対し解き慣れていなかった場合は問題集を学習計画に組み込むようにしましょう。または、定期テストでは話の内容を覚えてしまっていることで、読解テクニックを知らなくても点数が取れてしまっていた可能性もあります。読解テクニックの勉強が抜けている場合もあるので、自分のどこが不足しているかを確認しましょう。
Q. なかなか時間内に解き終わることができません。
A.文章を読む中でスムーズに単語文法の知識を使用できるようになることが大切です。単語の意味を思いだすのに時間を使ってしまったり、文法で躓いているようでは実際の試験に対応することはできません。単語帳、文法書を使った暗記から一歩先に進む必要があります。結論から言えば、これは演習不足によるもので、問題集や過去問を通じて初見の文章を読むことに慣れなくてはいけません。演習後は全文の現代語訳を参照して誤読個所を特定、修正するほか、必ず品詞分解を行って文法知識のアウトプットを行いましょう。暗記知識を繰り返し使用することがスムーズな読解につながる一番の方法です。もちろん前提として単語文法の暗記があり、曖昧だと感じる場合はもう一度勉強しなおす必要があります。また、特に時間的制約が厳しい共通テストではより速読が求められます。理想は全訳とはいえ対策が難しいと感じた場合は共通テスト対策の参考書を使って、要点や傍線部に注目して他の情報量が少ない箇所はさらっと拾い読みしていくといった速度ある読み方を身につけることも検討しましょう。
Q. 問題文は先に読んだ方が良いですか?
A.時間的制約が厳しくなりやすい古文では、あらかじめ問われていることを意識しながら読む必要が出てくるため問題文を先に読むのは効果的な手段だといえます。しかし選択肢を参照してしまうと、誤った内容をあてにしてしまい誤読につながってしまう原因になるため、問題文にとどめておくのが良いでしょう。また脚注やリード文は読解の助けになるよう書かれているものなので、これも必ず読むようにしましょう。
古文で身につくこと
昨今高等教育を語るうえでよく「古文なんて学んでも何の役にも立たない」なんて言葉が出てくることがあります。確かに専門的な仕事につきでもしない限り、この先古文の読み方を直接問われることは多くの人にとってはない経験でしょう。しかし古文に触れ、当時の日本の人々の考え方や習慣を知ることは自分の世界を広げてくれるきっかけになります。古文を単なる受験科目や教養と割り切るより、高校生という比較的多感な時期に前向きな気持ちで古文の世界を楽しむことができればこんなに素晴らしいことはありません。短歌がそれを示しているように、情緒や風流をとても大切にする古文の世界は現代にはあまりない、しかし私たちの中に確実にある豊かな感情を呼び起こしてくれます。
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