目次
地理の特徴
地理ってどんな内容?
地理は暗記科目だと思われ苦手意識を持ちがちですが、実際は社会科目の中では暗記量も少ない上に短期間で高得点を狙えるおトクな科目でもあります!その理由は、地理は暗記ではなく理解がキモな科目だから。世界史や日本史のように単語がそのまま聞かれることもほとんどありません。また、地理は系統地理と地誌に分かれており、系統地理で気候区分や地形だけでなく、農業、工業、自然問題など様々なテーマについてそれぞれ理解を図った後、地誌という分野ではそれらを地域ごとに確認していく流れを取っています。つまり系統地理さえ完璧にしていれば地誌でもほとんどのことが学習済みだったり、ちょっと考えれば自然と答えが導ける、そんな科目なのです。地理といえば地図とばかりイメージしてしまう人もいますが、地図は幅広い地理という学問をわかりやすくしてくれるツールの一つにすぎません。
系統地理 … | テーマごとに分けて学習する(農業、工業、気候…) |
地誌 … | 地域ごとに分けて学習する(東アジア、ヨーロッパ…) |
地理という科目の中身をより詳しくイメージしてもらうため、地理Bの教科書の目次を参照してみましょう。
例 : 帝国書院 新詳地理B の場合
第Ⅰ部では地図の歴史や性質、地図記号、地域調査など、地図に関する知識や小学生の頃に地理として習った内容が改めて登場します。入試問題でももちろん出題される範囲ではありますが、分量でいえばほんの一部であり、点数を取るうえで欠かせない本番は次の第Ⅱ部系統地理です。
系統地理で習う内容は大きく分けると
①自然環境…地形や気候(熱帯、温帯など)、環境問題
②産業…資源(石炭、石油、エネルギー…)や農業、水産業、工業、貿易、経済
③その他…人口、都市の性質や問題、生活文化(民族や文化)
に分けられます。いろんなテーマを広く取り扱っていますが、それぞれのテーマは関連しあっているため全体を通じた学習が必要です。
地誌は系統地理で学習した気候、農業、交通などのテーマを国や地域ごとに整理し直したもので、ほとんどが系統地理で得た知識の焼き直しやその補足となっています。なので、系統地理でどれだけ地理的理解を身に着けられるかが重要となってきます。
例えば、アフリカ大陸の南端にある南アフリカ共和国では地中海式農業や企業的牧畜といった欧米型の農業がおこなわれていますが、系統地理の気候を学習していれば南アフリカ共和国には温帯気候やステップ気候が広がっており、特に南西部には地中海性気候が分布していることから新しく暗記することなく理解できます。ヨーロッパ人の入植地となり他のアフリカ諸国と比べ産業が発達したこともこういった快適で住みやすい気候が背景にあり、地誌と系統地理がきちんと結びついていることを意識しながら学習するのが地理のコツです。
地理の性質について
地理では、細かい知識は問われにくく、一部の大学を除いて暗記量もほかの社会科目に比べると少なくなっています。生産量の順位やグラフなど一見暗記に見える問題でも、その背景には生産量が多い理由、数値が増えている、減っている理由があり、すでに学習した知識から推測はある程度可能です。
2021年度共通テスト問題地理B第二問では小麦の生産量、1haあたり収穫量、国土面積に占める耕地の割合を比較して国を選ぶ問題が出ました。小麦ほどメジャーな作物であればそのまま生産量の順位を覚えている人も多いし有効な手段ではありますが、この問題はそういった単純な暗記に頼らなくても答えは導けます。例えば「小麦1haあたり収量」の高さはその国での小麦生産が「土地生産性が高い集約的農業」によって行われていると読み取ることができ、アメリカやロシアと比べて国土の狭いフランスは土地当たりの生産性を高める必要があることから、フランスは「小麦1haあたり収量」が最も多くなるとわかります。「フランスが一番生産量が少なそう」といった受験生が犯しがちな感覚論から生産量だけ見てフランスを選ぶのは絶対NG!ここでは統計地理「農業」での理解が役に立っています。
地理に向いている人は?
・社会科目に時間を割けない人
・最低限点が確保できればいいという人
・考えるのが好きだ、得意だという人
地理は世界史や日本史と比べると格段に暗記量が少なくて済みます。特に共通テスト対策のみの場合は用語を直接問われることもないため、理解本を複数回さらって大方の理解が済んでいれば答えを出すための知識は手にしていることになります。また、2021年共通テストでは五つの大問のうち四つが統計地理の範囲から出されており、地誌の細かい知識は多くは問われません。以上のことから地理は社会科目に時間を割けない受験生にはもってこいの科目です。ただし時間的制約やその場で思考力を働かせる必要のある地理で9割以上を狙うのは難しく、暗記中心の世界史や日本史と比べて点数が安定しにくいという面もあります。共通テストで地理を選択する場合は8割を取ることが目標となるでしょう。
地理の問題は他の社会科目と違い、その場で考えさせる問題がほとんどです。その基盤となる知識は少ないですが、グラフや表から読み取って答えを出すにはそれらの知識をきちんと使いこなす必要があります。考えるのが好きだ、得意だという人にとっては非常に費用対効果の良い科目でしょう。
地理の要素と参考書の種類
教科書・理解本
地理学習では特に教科書、理解本が大切になってきます。前述の通り地理のポイントは暗記よりきちんとした理解です。今から地理対策を始めようという人、成績を上げたいという人はまず教科書、理解本をきちんと読み込むことから始めましょう。理解本は教科書より丁寧でわかりやすい説明がなされており、理解がキモの地理学習では理解本が必須です。一方教科書は理解本よりはわかりにくいですが、地理学習のポイントである論理構造が簡潔に指摘されており、こうしたまとまった表現に触れることは論述対策に非常に役に立ちます。
教科書
1. 新詳地理B(帝国書院) | 2. 地理B(東京書籍) |
理解本
問題集
インプット中心の地理ですが、自分の理解度を確かめるために問題集を併用するのは非常に有益です。理解本学習→該当単元の問題を解く、というループを組むのに役立つのは単元別問題集、もしくは一問一答です。単元別問題集が該当単元について幅広く理解を確認できるのに対し、一問一答では基本的な用語を覚えているかの確認が主になります。基本的な用語が暗記できない人や隙間時間で地理の振り返りをしたい人に一問一答は効果的です。また、用語の正しい理解が大切な地理では用語から用語の解説である問題文を参照する逆の使用法も効果的です。また、共通テストや二次、私大向けに対応した問題集もあり、共通テスト対策や論述問題集なども出版されています。こちらは理解本を周回し終えて演習段階に入った夏、秋以降に演習教材として取り入れるとよいでしょう。
単元別問題集
実力をつける地理100題 | 地理B標準問題精講 |
一問一答
かなりマニアックな用語や地名も掲載されているので、志望大学のレベルや問題傾向に合わせて取捨選択すること。
論述対策問題集
共通テスト対策問題集
瀬川聡の 大学入学共通テスト 地理B[系統地理編]超重要問題の解き方 | 短期攻略 大学入学共通テスト 地理B |
地図帳・統計集・資料集・用語集
様々な地域の特徴や性質を学ぶ地理では各国、各地域の位置関係を考えながら勉強していく必要があるため地図帳は必須です。また、受験問題で問われやすい統計、データ集も持っておくべきでしょう。資料集は教科書より一歩踏み込んだ詳細な知識やコラムが載っており、疑問点の解決や知識の拡大に役立ちます。ですが情報量が膨大なため時間のない受験生に向かず、必須ではありません。正確な用語の理解が大切な地理では用語集は非常に役に立ちますので、こちらも持っておくことをお勧めします。
新詳地理資料 COMPLETE 2020 | 新詳高等地図 (Teikoku’s Atlas) |
データブック オブ・ザ・ワールド 2021: 世界各国要覧と最新統計 (2021 vol.33) | 地理用語集 A・B共用 第2版 |
過去問
一通りインプットし終えたら演習教材として過去問をメインに演習を進めていきましょう。過去問は時間を測り、志望校の傾向をつかむとともに間違えたところや苦手だとわかった単元は教科書や理解本に戻って確認するというサイクルで理解を深めていきましょう。
地理でよくある質問
Q. 資料集の使い道について
非常に情報力が多く優れた教材ですが、範囲が膨大になるため主要参考書とするのは危険です。2年までは定期テスト対策や自分の疑問点を解消するために使って、受験を意識した高3~の学習では多用は避けるようにしましょう。
Q. 用語がなかなか覚えられません
細かい地名や都市名は本当に代表的なものだけ覚えましょう。(古期造山帯:アパラチア山脈、ウラル山脈、ドラケンスバーグ山脈、グレートディバイディング山脈、スカンディナヴィア山脈)地名は地図帳を確認したり、地図帳に書き込みながら勉強するようにしましょう。最終的にあなたの地図帳が受験に特化した情報が集まって目立っているようにしましょう。また、単元が終わるごとに一問一答などで確認をしてから次の単元に進むようにするとよいでしょう。
Q. まとめノートは作るべきですか
理解本は十分きれいにまとまってあるものが多いので、作る必要性はありません。きれいにノートにする必要はありませんが、地理では様々な分類をしながら学んでいくことが多いので、ただ理解本を読むより自分の手で実際に書いて整理しながら勉強した方が良いと思います。
例:農業 → | ・自給的農業 → | 焼畑農業、遊牧、 オアシス農業、 アジアの伝統的農業 |
・商業的農業 → | 混合農業、酪農、 園芸農業、 地中海式農業 | |
・企業的農業 → | 企業的穀物農業、 企業的牧畜、 プランテーション農業 |
Q. 地理A、地理Bの違いは
地理Aと地理Bでは下記のような違いがあります。
①内容
地理Aは地誌が比重の多くを占めるのに対し、地理Bは系統地理を主軸にバランスよく地誌も学習する。
②授業数
地理Aは地理Bの半分となっており、分量も少ない。
③受験
地理Bでの受験しか認めていない大学も多いため注意が必要。
④参考書
地理の参考書はほとんどがBで、地理A対策の参考書はほぼ売っていない。
Q. 秋からの学習で間に合いますか
前述の通り地理は暗記量も少なく、コスパがとても高い社会科目です。そのため共通テストのみでの利用を目的に直前から勉強を始めるというのも十分可能です。最低限系統地理だけ押さえて地誌は詰め込めば十分対抗できるでしょう。しかし二次で利用する場合はやはり長期間での計画的な勉強は必須と思われます。
Q. 教科書をメインに勉強するのはどうですか
悪くはないですが、理解本のほうが説明が丁寧でわかりやすく、知識もまとまっているため理解本をお勧めします。理解本で全体の概要やおおまかな知識を得た後で使用する分には大変優れた教材でしょう。また、背景や論述で問われやすいポイントが無駄な表現なくまとまっているため論述対策が必要な人は熟読しましょう。
Q. 白地図を用いた勉強は効果的ですか
一定の効果はありますが、主要な勉強法としてはお勧めしません。
白地図の使い方として有効なものは
①理解本学習中、学習後に主要情報をまとめるまとめノート的使い方
②理解本or問題演習後の位置情報を中心とした復習作業
が挙げられます。
①の場合、白地図を使うより地図帳にそのまま書き込むことで受験に特化した自分だけの地図帳を作り上げていく方法の方が逐一正しい位置を確認でき効果的ですし、主要な情報が一冊に集積されていく地図帳は非常に優れた受験教材になり見返す度インプット効果があります。
②の場合、一問一答の位置情報版としてアウトプット作業を白地図で行うことになります。もちろん位置関係は大切ですが、一問一答的に位置情報の学習をするより、理解本を繰り返し読んだ後問題演習の段階で自分の暗記、未暗記をはっきりさせる方が無駄がありません。最低限の単語は地理的理解のために必要不可欠ですが、位置情報は理解の中で自然と習得するのが理想的です。また、位置情報の出題が多い大学であるなど地図的アウトプットにこだわる理由がある場合は、地図出題をまとめた問題集を買って進めた方がよりよい演習作業になるでしょう。
地理で身につくこと
皆さんは地理に対して持っているイメージはどのようなものなのでしょうか。地図を読んだり、統計を覚えたり… 地理を退屈な暗記教科だと思い込んでしまうことは本当にもったいないことです。地理ほど日常生活に即し、自分の見える世界を拡張してくれる受験科目はないといっても過言ではありません。地図を見るとき、町を歩くとき、電車の窓から景色を眺めるとき、地名を聞いた時、地理的な思考を働かせればその町や集落、自然環境についてそのの成り立ちや特徴、その背景が浮かび上がってきます。また、地理の学習要領には国際関係や産業についても、現代社会を生きる上で基盤となる常識的な知識がたくさん盛り込まれています。農業、工業といったそれぞれの産業の特徴や生産形式から活動各地の紛争や環境問題まで私たちの生活に関するあらゆる実用的な知識、考え方を教えてくれるのが地理です。地理は私たちが常日頃接している生活に新しい視点を与え、より深く考えることができ、そして考えることそのものの面白さを教えてくれる楽しい科目です。地理を学習する上でも暗記ではなく、なぜ、どのようにそうなったのか考えることが上達の近道です。
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