唯一で明確な答えがある一般的なテスト問題とは異なり、小論文の場合は人によって理論の展開や答えの導き方が違ってくるという特徴があります。ここでは、受験生の少なくない数が苦戦する小論文を取り上げ、「小論文と感想文の違い」「小論文の具体的な組み立て方と文字数の考え方」「小論文を作るときの注意点」について、例文つきで解説していきます。
目次
小論文と感想文の違いは「理論構築」にあり
最初に、小論文と感想文の違いについて見ていきましょう。
小論文も感想文も、広い意味では「自分の思いを、読み手側に伝えるものである」という点では一緒です。
ただ、小論文は理論構築が主題となるのに対して、感想文ではこのような縛りがありません。そのため、感想文が得意でも、感想文の書き方に慣れすぎていると、書くのに苦戦してしまう課題も多くあります。
感想文は主観的な感情の動きを、小論文は客観的な理論構築が必要
感想文では、「自分はどのように感じたか/自分はどのようにしたいと思うか」を文章の中心に置きます。自分の感情を伝えることに重点を置くのが特徴で、非常に主体的な文章になります。たとえば読書感想文では、読み手側に本の内容やあらすじを説明する必要はありません。本の1シーンを切り取って、シーンの詳細な説明をすることなく、「このシーンを読んだ時に、自分はこのように感じた」などを書けばよいのです。
対して小論文では、「〇〇のような理由があり、自分はこのように感じた/自分はこのようにするべきだと思う」と伝えることが基本となります。
読み手に対してデータや根拠を提示して、「このような理由があるから、自分はこのように考える」として説明をする必要があります。
感想文は自由に文章を組み立てられる、小論文は組み立てに決まりがある
感想文では、自分の意思を相手に伝えるためならば、自由に文章を組み立てることが許されています。
たとえばもっとも印象的なシーンを取り出して最初に書いたのちに、そこに関連付けるかたちで別のシーンについての話をしてもかまいません。また、「学校の部活の合宿の感想を述べよ」という課題のときに、学校の部活の合宿と、地域のサークルの合宿を関連付けて語るなどのような手法を使っても、感想文としては訴求力の高い文章になるでしょう。
しかし小論文では、文章の組み立てに決まりがあります。
詳しくは後述しますが、小論文の場合は
- 序論……本論につなげるための文章
- 本論……与えられた課題に対して根拠を示しつつ、自分の意見を表現するところ
- 結論……文章を締めくくる部分
の3段階で構成します(文字数が多い場合は、本論部分が「本論1」「本論2」と2部展開になることもあります)。
小論文の文章は感想文のときとは異なり、序論→本論→結論と、一つの流れのなかで展開していくのが基本です。序論・本論・結論が分断されていてはいけませんし、課題とは関係のないエピソードを入れることも控えるべきです。
感想文の文体は統一されていればよい、小論文は「で・ある」調
感想文も小論文も、「語尾の統一」は重要です。
たとえばこのコラムは「です・ます」で構成されていて、見出しや箇条書きの説明以外には「で・ある」は使われていません。
「です・ます」と「で・ある」が混在していると、文章は非常に読みにくくなりますし、採点でもマイナスとなります。
ただ、感想文の場合は「です・ます」でも「で・ある」でも、どちらの語調であっても統一されていればよいのに対し、小論文では「で・ある」に統一するのが原則とされています。
感想文の感想には正解がない、小論文の場合は課題によって異なる
感想文は自分の感情を述べるものであり、自分の感情が主体となるものです。そのため、社会的規範や倫理を大きく外れた主張でない限り、そこに「正解」はありません。たとえば、「見ず知らずの人の命を助けるために、身代わりとなった人がいた」という物語を読んだ時、「無私の思いで他者を助けられたこの人は立派だ」とする感想を書いても、「この人にも家族がいた。他者を助けて家族を悲しませるのは間違っている」と感想を書いても、どちらも不正解にはなりません。
小論文の場合は、課題によって正解の有無が異なります。
たとえば、臓器移植などの課題には明確な正解はありません。「家族が臓器移植を希望していたら、その意思を尊重したい」とする意見を書いても、「自分が脳死状態になったときには臓器提供をしたいが、家族が脳死状態になった場合は踏み切れない」としても、そこには感想文同様「正解」はありません。
しかし「じゃんけんのルールを文字数内で説明せよ」などの課題の場合は明確な正解があります。
- グー/チョキ/パー、それぞれの手の形
- グーはチョキに勝ち、チョキはパーに勝ち、パーはグーに勝つというルール
- あいこの概念
などを過不足なく説明しなければなりません。
【感想文と小論文の違い】
感想文 | 小論文 | |
---|---|---|
視点 | 主観的 | 客観的 |
構成 | 自由度が高い | 序論→本論→結論 |
書き方 | です・ますorで・ある | で・ある |
正解の有無 | ない | 課題によって、正解の有無が異なる |
感想文と小論文、その表現の違いの例
ここまでを踏まえたうえで、感想文と小論文の違いについて具体的に文章で見ていきましょう。ここでは「グローバル社会」を課題として、その本論の例文を紹介します。
【感想文】
グローバル社会という言葉を聞いたとき、私が初めに思い出すのは、小学校3年生のときに同じクラスになったフィリピン人の友達のことです。片言の日本語しかしゃべれなかった彼女との交流は、初めのうちは大変でした。しかしお互い相手の国の言葉を少しずつ自然に理解できるようになりましたし、表情で伝えられることも多くありました。彼女の家でごちそうになったアドボという郷土料理のおいしさは、今も忘れることができません。
グローバル社会とは、何も難しいことではなく、このような日常との地続き、あの交流との延長線上にあるように、私は思います。また、…………
【小論文】
日本に在留する外国人の数も、海外に住む日本人の数、多少の増減はあるにせよ、基本的には右肩上がりで上昇している。
他国の文化を学ぶうえで、もっとも重要視するべきはやはり他国語、特に英語の学習である。かつてゲーテは「外国語をよく知らないものは、自国語もよく知らない」といったが、相手の国の言葉を知ることは、相手の国の文化をよく理解し、また他国から見た自国がどういうものであるかを知るための手がかりとなる。
中学2年生のうちの半数以上が「英語の学習が好きだ」と答えていて、英語の勉強に対して意欲的である。また、「英語の従業のなかで、英語の映画などを見てみたい」と答えた層は60パーセント近くにも上る。また、英語の歌を学びたいと答えた人も多く、これは「英文法の学習をしたい」と答えた人を上回る。
このような結果を踏まえて、私は、より良い英語学習の提案として、1本の映画を英語と日本語の字幕を両方つけたうえで、英語の音声で見るというものを挙げたい。これにより……
小論文の具体的な組み立て方と文字数の考え方
上では、「小論文は序論・本論・結論の構成とする」と説明しました。これについて、ここでより詳しく解説していきます。
小論文には、ほぼ必ず文字数の制限が設けられています。小論文の文字数のボリュームゾーンは800文字-1000文字です。定められた文字数を超過すると減点対象となります。また、不足分は指定文字数の1割程度でとどめるのが理想です(例:1000文字指定の場合は900文字―1000文字)。
1000文字の場合は、下記のように文字数配分を行い、まとめていきます。
- 序論:100文字―150文字……序論では、メインとなる主張の結論を先に記し、そこにプラスして本論に続く問題提起文や提案文を入れます。
例:グローバル化が叫ばれて久しいが、グローバル化を進めるうえでもっとも基本となるのはやはり他国語(英語)の学習ではないだろうか。
- 本論:700文字-800文字……本論では、メインの主張を行っていきます。このときに必要なのは「客観的な視点・客観的なデータを用いて、内容に説得力を持たせること」です。
上で本論の例文を取り上げましたが、具体的な数字やデータを取り上げて、それを根拠に自分の意見を展開します。
なお本論では、単純にデータを紹介するにとどまることなく、自分で考えた解決策や提案を行うようにします。上でいう「1本の映画を~」がそれにあたります。
また、オリジナリティのある主張を、説得力を持って提案できれば加点対象となります(グローバル化が課題の小論文において、きちんと根拠を説明したうえで、あえて自国文化の学習の大切さを訴えるなど)。
- 結論:100文字―150文字……最後に、課題の答えを示して結論を述べます。結論部分で新しい話をする必要はなく、「序文と本文で述べた持論を、簡潔にまとめること」を意識するとよいでしょう。
例:グローバル化においてもっとも重要なのは、相手の国の言葉を学ぶことだ。そしてそのためには、英語の映画教材などを用いて、より生徒が意欲的に楽しく前向きに学べるようにするべきである。
小論文を書くときのポイントと注意点
最後に、小論文を書くときの具体的なポイントと注意点を5つ紹介します。
簡潔な表現を心掛ける
小論文のボリュームゾーンの800文字―1000文字という文字数は、実際に書いてみると、「埋めるのが大変」と思うよりも、「足りない」と感じることが多い文字数です。
そのため、装飾文言や情緒的な表現は極力省く必要があります。持論の柱となる結論部分を除いて、同じ表現や同じ話を繰り返すことは避けます。
「だれでも知っている課題」=「簡単」とは限らない
小論文の難しさとして、「だれでも知っている課題」=「簡単」とは限らない、という点があります。
たとえば「じゃんけんのルールを600文字で説明せよ」など、だれもが知っている課題かつ正解が決まっているものの方が書きにくく、安楽死問題などの正解がないものの方が逆に書きやすいという話はよくあります。じゃんけんのルールの説明には書かなければならない要素があり、それを過不足なく、文字数内に収めなければなりません。
その一方、安楽死問題に関しては「持論を展開するために必要な要素を、ある程度自分で取捨選択できる」という点で、比較的自由度が高いといえます。
受ける学部・大学によって頻出の課題がある
「どんな課題が出るか」は、原則試験当日に発表されます。
ただ、受ける学部・大学によって頻出の課題はあります。
たとえば医療系では終末期医療や臓器提供、出生前診断などの倫理観をも問う課題がよく出されます。
外国語学部ではグローバル化やダイバーシティ、英語教育を問う課題が頻出しています。
経営学部の場合は、消費税の意味や最低賃金、所得格差といった課題が積極的に取り上げられます。
異なる学部・大学(A大学の法学部と、B大学の経済学部を受けるなど)を受験する場合は、特に注意が必要です。
※SDGsや少子高齢化など、どのような学部でもよく出される課題もあります。
本論の結論を決めてから、序論を構築すると破綻しにくい
小論文を書くうえでもっとも怖いのは、「序文で述べた結論と、本論で述べていることが違う」という論の矛盾や、「序文で述べた結論と、本論で述べていることに関連性がない」という論の不連続です。そして一度こうなってしまうと、書き直しをするにも時間が足りなくなるということがよくあります。
しかし、「与えられた課題の結論をまず決めて、そこから序論を作っていく」というやり方をとることでこのような状況に陥るリスクを大きく軽減できます。
述べたいこと、持論の柱となる結論を決めて、そこに至るために必要な序文を肉付けしていくイメージです。こうする文章が崩壊しにくくなります。
不確かな情報は書かない
「小論文を書くうえでは、客観的なデータや視点が必要」としました。具体的な数字を出せれば説得力が非常に増しますし、加点対象となり得ます。
ただ、不確かな情報を書いてしまうと、逆に減点対象となりかねません。大学受験ではインターネットは使用禁止のところも非常に多く、そのなかで正確な数字を出すのは至難の業です。「以前にこの課題に関係する統計を見たが、正確な数値までは分からない」という場合は、数値を出さず、「多い、少ない」「過半数を超える」などのように、ある程度幅を持った表現とするのが安全です。
例:
現在のインターネット普及率は
◎85パーセント程度に上っている(正確な数字が出せる)
〇過半数を大きく超えている(正確な数字は出せないが、正しい情報を書ける)
△高く、多くの人がこれを使っている(正しい情報ではあるが、範囲が広すぎる)
×80パーセントを切っている(誤った情報である)
小論文で高い点数を取るためには事前の練習が必要
小論文は、一般的なテストとはまた異なった特徴を持ちます。感想文を書き慣れた人でも苦戦する可能性があるのが小論文であり、明確な理論構築が求められるのが小論文です。
小論文の課題は、原則当日に発表されます。しかし頻出課題の小論文を実際に書いてみたり、専門の先生に添削してもらったりすることで、本番時に高い点数をマークできるようになります。
アクシブアカデミーでは、小論文の添削も行っています。アクシブアカデミーの無料受験相談はこちらから!
◆ 受験や勉強のお悩みをAXIVにご相談ください
・勉強しているのに定期テストの点数が上がらない
・大学受験の勉強をどのように進めればいいかわからない
・勉強のモチベーションを維持することができない など
このような受験や勉強のお悩みはありませんか?AXIVでは完全無料でカウンセリングを受け付けています。大学受験を知り尽くしたプロコーチがあなたのお悩みを解決します。保護者さまのみのご参加もOK!AXIVグループの公式LINEからぜひお申し込みください!
無料カウンセリングのお申し込みはこちら