「大学受験が近づくにつれ、不安で押しつぶされそうなってしまう。」
こんな気持ちになってしまうことはありませんか。
大学受験は、人生における大きな分岐点の一つです。
それゆえに、多くの受験生は、毎日自分と戦いながら頑張っていても、どんなに勉強しても安心できず、言いようのない焦りや不安を感じてしまうのです。
では、なぜそれほどまでに不安になってしまうのでしょう。
一番の理由は、自分の心を支配している「不安の正体がわからない」から。
今回の記事は、受験生の感じる不安の種類とその原因を探り、どう対処すれば良いかをお話ししていきます。
不安を解消し、落ち着いて受験に望みましょう。
不安とは?
不安の正体を知ろう
「クラス替えで新しいクラスに馴染めるかな」
「仕事でミスをしてしまった。取引先の方はなんて思うだろう」
「くじ引きでPTAの役員になってしまった。仕事も忙しいのに」
「転職して給料が下がってしまった。将来は大丈夫かな」
多くの人は、人生の様々なライフステージで何かしらの不安を感じた経験があると思います。
そもそも「不安」「不安を感じる」とはどのような感情や状態を指すのでしょう。
上記の不安の定義を、受験に当てはめて見ると、
「不安とは、受験や受験することについて心配、緊張感や恐怖を感じること」
「受験に対して不安を感じるのは、ふつうのこと」
ということがわかります。
大学受験に関して、不安な気持ちに苛まれているのは決して自分だけではなく、多くの、いや、きっと全ての受験生は不安を抱えているのです。
その中でも、特に完璧主義思考の人は予期不安を感じやすいとも言われています。
予期不安(Anticipatory Anxiety)は、将来のイベントや状況に対して事前に感じる強い不安や恐れのことを指します。これは、特定の事象(例えば、公の場でのスピーチ、試験、医療処置など)が起こる前に、その事象に関連する否定的な結果や失敗を想像することによって生じます。予期不安は、実際にその状況が発生する前に、精神的および身体的なストレス反応を引き起こすことがあります。
不安は意識すればするほど強くなる
「ストレスに対し、不安を感じるのはふつうのこと」ということがわかりました。
そして、不安が厄介なのは「意識すればするほど強くなり、時には身体症状として現れてしまう」ということ。
確かに何か心配事があると、ドキドキして胸がなんだか苦しい、冷や汗がでる、体がこわばる、言葉に詰まる、といった症状が見られたり、ひどくなると不眠や過呼吸などに繋がる場合があります。
まさに予期不安状態で、まだ受験前の段階から、
「受からないかもしれない」
「全落ちしてしまったらどうしよう」
「もし浪人することになったら….」
「浪人しても、また来年落ちてしまったら…」
と、まだ起きていない未来の出来事に対して不安を感じ、心が支配されてしまっているのです。
受験生が抱えやすい不安とその対策
日常生活において、
- 誰もが大なり小なり不安を感じていること
- 不安は意識すればするほど強くなり、時には身体症状として現れ
ということがわかりました。
では次に、大学受験を控えている受験生が抱えやすい不安はどのようなものがあるかを見ていきましょう。
受験生が抱えやすい不安で、代表的なものは
- 何から手をつければ良いのかかわからない
- 受験勉強が思うように捗らない
- 模試の志望校判定結果がふるわない
- 周囲の友人が合格した(または不合格だった)
- このままの勉強時間で間に合うのか
- 全落ちしたらどうしよう
などであり、受験時期別に見ると1.2:受験期前期、3:受験全期間を通して、4.5.6:受験期後期となります。
1.何から手をつければ良いのかわからない
高校生が初めて経験する大きな試練が大学受験です。
中学受験や高校受験を経験したことがあっても、難易度的にはその二つの比ではないのが大学受験と言えます。
下の表を見てみましょう。

(引用:栄光ゼミナール)
自分の居住する都道府県内の中学生がライバルである高校受験に対し、大学受験のライバルは全国区の高校生プラス浪人生であり、ぐっと増えることになります。
特に、受験に特化した勉強を1年間、またはそれ以上頑張ってきた浪人生や多浪生の存在は、現役生にとって脅威となります。
そして、母数が増えると必然的に上がるのが受験倍率。
倍率1〜4倍の高校受験に比べ、大学受験倍率は5倍と一気に跳ね上がります。
また、2次試験のうち前期試験の受け皿的な位置付けにもなる後期試験は、必然的に倍率が高くなり、医歯学部などの専門性の高い学部ではさらに高倍率となります。
全くの未経験からのスタートであるため、「まず何から始めれば良いんだろう?」「共通テストってどんな問題が出るんだろう?」「自分の勉強の仕方で大丈夫かな?」とあらゆることが不安材料になるのも無理はありません。
◆◆ 対策 ◆◆
まず最初に「大学受験は今まで自分が経験してきた受験とは別物である」ということを理解しましょう。
ほぼ全ての学生が対象となる高校受験に比べ、全体の約60%の学生が対象である大学受験では平均値となる偏差値50の位置も変わってきます。
高校受験時の偏差値より、大学受験時の偏差値の方が低くなってしまうのです。
人は具体的な対象に比べ、抽象的な対象を警戒しやすく、漠然とした不安を感じやすいものです。
つまり、初めて経験する大学受験の仕組みや流れを具体的に理解することは、不安を軽減することにつながります。
2.受験勉強が思うように捗らない
まだ大学受験を具体的にイメージできていない受験期前期は、焦る気持ちも少なく、通常モードから受験モードになかなか切り替えができない受験生もいます。
とはいえ、「勉強しなければいけない」と頭ではわかっているので、机には向かうものの手はスマホに伸びて無駄に時間を過ごしてしまったり、手っ取り早く取り掛かれる得意科目ばかりを反芻し、不得意科目が手付かずになっていたり。
また、気持ちが焦るがあまり、到底実現不可能な勉強プランや目標を立案し、早々に頓挫してしまって落ち込むパターンもあります。
最初に「受験モードになかなか切り替えができない」タイプの受験生の例をあげましたが、反対に「受験モードにスムーズに切り替えができ、序盤から勉強のペースを掴める」受験生もいます。
切り替えができないタイプの受験生は、うまく切り替えができ、順調に成績を伸ばしている友達と自分を比較し、落ち込んで不安になってしまうパターンもまたよくみられます。
◆◆ 対策 ◆◆
いきなり長期、例えば1年先をゴールに設定するのではなく、まずは短期、1ヶ月先をゴールに設定し、ゴールにある目標を達成するにはどうすればいいかを考えましょう。
そしてここでもポイントは「具体的に」。
ゴールや目標にはどうしても得点や偏差値を設定したくなりますが、どちらも抽象的なもの。
目指すものが抽象的=曖昧だと、そこに到達するにはどう努力すれば良いかがわかりません。
「1ヶ月で単語帳を一冊終わらせる」「1ヶ月でこの単元を終わらせる」「1ヶ月で苦手教科の理解がいまいちだった箇所を確実に習得する」というように、自分の努力に結果が比例するものを目標にすると、結果がわかりやすくモチベーションアップや、その後も継続することにつながります。
3.模試の志望校判定結果がふるわない
受験本番までに何度も受ける模擬試験。
結果が良くないと、「もうだめだ。」「本番もだめだったらどうしよう」と不安な気持ちがどんどん広がります。
ですが、模擬試験はあくまで途中経過地点での評価ということを頭におきましょう。
◆◆ 対策 ◆◆
どうしても志望校判定結果ばかりに目が向きがちですが、大切なのは「現時点からどう点数を伸ばしていくか」を冷静に分析することです。
分析し、自分の弱点や点数が伸びない足かせになっている原因が明確になると、どう攻略していくかの戦略を立てることができ、不安な気持ちが軽減されます。
また、気持ちの持ち方も大切です。
模試の点数や結果を気にすることはもちろん必要ですが、あくまでも経過地点での点数・判定です。
そこで、「もうだめだ」と考えると、どんどん不安が増長され、だめバージョンの妄想に気持ちが支配されて感情が乱れてしまいますが、「◯点だったけど、まだまだこれから!苦手な箇所がわかったし、攻略して挽回するぞ!」と考えれば、十分に逆転勝利に手が届くのです。
不安だからこそ、できることを確実にコツコツ積み上げていきましょう。
4.周囲の友達が合格した(または不合格だった)
夏〜秋にかけて、周囲の友人の中にもAO入試や推薦で進路が決まる人が出てきます。
一歩先に進路が決まったのを目の当たりにして、羨ましく思ったり、自分もAO入試や推薦入試を受ければよかった、と後悔したり。
時には勉強が手につかなくなったり、不安な気持ちに苛まれるかもしれません。
ここで思い出してみましょう。
例えばAO入試。
選考方法は、自己PR文、志望理由書、面接、小論文、レポート、学科試験など様々であるため、共通テストのように学科試験がメインである一般入試とは別の対策や戦略が必須になってきます。
また、専願が条件の大学も多く、合格すれば早く不安やストレスから解放される反面、条件的には厳しさもあるのがAO入試なのです。
どの受験方法を選択するかを決定する段階で、AO入試だけでなく、指定校推薦入試についても自分なりに調べて理解し、その上で選んだ一般入試だったはずです。
また、周囲の友達が残念にも不合格になる場合もあります。
ライバルとはいえ、友達であり一緒に戦ってきた戦友。
「友達が不合格だった」という事実に、自分までも心を痛め落ち込んでしまう人もいます。
◆◆ 対策 ◆◆
受験方法を選択した時を思い出しましょう。
過去のあなたは、AO入試、推薦入試、一般入試、とそれぞれを比較し、自分の力を最大限発揮できる方法として一般入試を選んだはずです。
AO入試や一般入試を選んだ友達が、一足早く合格を手にする姿を見ると、「あの時、AO入試に出願していたら、今頃自分も…」「推薦入試にしておけば良かったかも…」という思いがよぎるかもしれません。
ですが、仮定の話や過去の話に時間を費やす価値はありません。
決めたのは自分、受験するのも自分。
比較対象は周囲ではなく、過去の自分です。明日、今日より一歩でも進んでいるために、1日1日を丁寧に積み重ねることが不安を取り除くことにつながります。
そして、友達の残念な結果に心を痛めるのはあなたが優しい人だからです。
ですが、最終的に受験は自分との戦いです。優しい人は、友達との境界線が曖昧だからこそ、そこを自覚し、あえて自分で境界線を引き、自分の受験に集中しましょう。
5.このままの勉強時間で間に合うのか
- 計画した通りに進んでいない
- 気持ちが焦って集中できない
- 後回しにしていた苦手科目がこのままでは終わらない
など、受験期前期にはなかった悩みが出てきてしまうのが受験期後期。
思うように勉強が進まない焦りは不安となって現れ、やがて受験の疲れも重なって心身の不調として現れてしまいます。
◆◆ 対策 ◆◆
- 計画した通りに進んでいない
計画通りに進めようと無理をするのではなく、計画自体に無理がなかったかを見直し、必要であれば下方修正しましょう。
- 気持ちが焦って集中できない
無我夢中で走り続けていると、自分でも気付かないうちに疲労やストレスが蓄積します。
まずは焦りを落ち着かせること。
古典的と言われそうですが、深呼吸やストレッチをすると緊張やストレスのために浅くなってしまっていた呼吸が整い、不安やストレスが軽減します。
- 後回しにしていた苦手科目がこのままでは終わらない
苦手分野を細分化すると、苦手な中にも「最初の取り掛かり」になれる部分が存在します。
まるでチンプンカンプンな分野はまず置いておき、「頑張れば理解できそうな苦手パート」から最初に取り掛かるのです。
そうしていくうちに苦手意識が徐々に薄れ、他のパートにも挑戦できるようになります。
6.全落ちしたらどうしよう
共通テストや最後の懇談、そして2次試験の出願が終わる頃、多くの学校が自由登校になります。
今まで毎日顔を合わせていた友達と会う機会が減り、ただでさえ孤独な戦いである受験勉強が、最終モードに入ったことで輪をかけて孤独や不安を感じるように。
そうなるとどうしても最悪の結果を考えてしまいがちになり、「全落ちしてしまったらどうしよう」「浪人することになったら」と考え始めると止まらなくなってしまいます。
しかし、受験前の最後の貴重な時間を勉強が手につかない状態で過ごすことになってしまうと、元も子もありません。
◆◆ 対策 ◆◆
1年間、いやそれ以上の時間を受験に費やしてきたからこそ、合格することをゴールに設定してしまう気持ち、良くわかります。
でも、合格をゴールに設定してしまうと、残念ながら結果が及ばなかった時のダメージが大きいのです。
例え合否が不本意な結果となっても、それでもあなたの人生は続きます。
ゴールは「なりたい自分になること」。
全落ちしたとしても、人生は続き、ゴールの「なりたい自分」への道は続きます。
不安な気持ちに心が支配されそうになったら、まずは今まで1年間努力を続けてきた自分を自分で認めてあげましょう。
そして、心が少し落ち着いたら、次にどんな選択肢があるか、ゴールに到達するにはどの道を選択するべきかを考えましょう。
まとめ
いかがでしたか?
誰しも初めて経験する大学受験に対して不安を抱えています。
時にはその不安に感情を揺さぶられ、心や体に影響が出てしまうこともあります。
しかし、不安を上手にコントロールすることで、より良い結果につなげることができるのもまた事実です。
大切なのは「不安をただ感じるのではなく、それに対して具体的な対策を講じること」です。
そしてもうひとつ。
「過去のあの時頑張った自分がいる」という事実は、未来の自分を助けます。
気持ちを落ち着け、今まで努力を積み重ねてきた自分を信じ、受験までの残された時間ベストを尽くしましょう!







