関西の難関私立大学である同志社大学。同志社大学を志望し、受験勉強を進めている受験生も多いと思います。この記事では同志社大学の化学に入試について、入試概要や対策方法などの合格するために必要な情報をまとめています。同志社大学の合格を目指している方は是非参考にしてみてください。
同志社大学の化学について
関関同立の一角、同志社大学の化学試験について記述していきます。今回は、2020年度の全学部統一入試における化学の試験概要を見ていきましょう。
全学部日程について、同志社大学ではすべての理系学部で、「理科」が受験科目として課せられています。学部と学科に応じて、「物理・化学・生物」のなかのどの科目が使用できるかが異なるので注意が必要です。いずれの学部学科においても、1科目のみ選択する形となります。
試験時間は75分です。同志社大学の化学の配点は、150点満点の学部と200点満点の学部があります。というのも同志社大学の学部個別「理科」においては、受験生は150点満点の共通の問題を解き、学部によってはその点数を200点満点に換算する形で点数が算出されます。それぞれの学部の配点は下の表のようになります。問題構成は大問3つで、概ね理論化学、無機化学、有機化学が1題ずつ出題されますが、無機化学、有機化学のなかにも理論化学の内容を問うているものが多く、理論化学が重要であることがわかります。問題数は平均して55問前後になっています。出題形式は記述式になります。
【試験概要】
- 試験時間: 75分
- 問題構成: 大問3題(理論化学、無機化学、有機化学の1題ずつ)
- 配点: 各大問につき50点の150点満点
- 学部によって、150点満点を200点満点に換算されて計算が行われます。
- 各学部における満点
- 文化情報学部 150点
- 理工学部(機械システム工学科を除く) 150点
- 心理学部 150点
- 生命医科学部 200点
- スポーツ健康科学部 200点
- 問題数: 平均して55問
- 出題形式: 記述式
【「理科」の得点調整について】
理科の科目に応じて有利・不利があるかというとそのようなことはありません。大きく点数差がある場合は、得点の調整が行われます。同志社大学で用いられている得点調整の計算式について説明します。得点調整の計算式は、150点満点か200点満点かによって異なります。
150点満点の場合、調整されたあとの点数 = (自分の得点-選択した科目の平均点) ÷ 選択科目の標準偏差 × 15 + 選択科目全ての平均点となり、この点数が自分の点数となります。200点満点の場合、調整されたあとの点数 = (自分の得点-選択した科目の平均点) ÷ 選択科目の標準偏差 × 15 + 選択科目全ての平均点)× 4/3となり、150点満点のときの点数を200点満点に換算した点数が自分の点数となります。ただし、調整したあとの点数が0点より低い場合には0点となり、満点よりも高くなる場合には満点となります。
【各大問ごとに出題される問題】
- 大問1 理論化学-無機化学複合問題
- 大問2 無機化学-理論化学複合問題
- 大問3 有機化学-理論化学複合問題
【各小問ごとに主に求められている力】
年度により出題形式は異なりますが、どの設問も標準的な知識問題が多くなっています。理論化学分野では幅広い知識が求められますが化学反応式を書かせる問題は必ず出題されています。また短めではありますが、論述形式の問題があるため、自分の知識を正しくアウトプットする能力が必要です。覚えたことをノートにまとめたり、誰かに話したりすることで、一度表現しておくとよいでしょう。とくに酸化還元反応の半反応式を書かせる問題は解けるようになっておきましょう。無機化学分野でも、幅広く問われますが、無機化学工業分野や気体の製法、沈殿の生成と溶解に関わる反応はよく出題されていますので、これらを解く力が必要でしょう。有機化学分野では、主要な化合物の構造と性質の知識が問われます。また構造決定の問題では思考力が問われます。
【大問・小問ごとの配点】
大問が3つについて各50点になります。一部の学部では200点満点ですが、150点満点の答案を200点満点に換算した点数になります。小問ごとの配点は非公開であり、かつ年度によって小問の数も異なります。しかし、論述問題が出題された場合や、誘導付きの計算問題の最後の問いは配点が高いことが予測されます。知識問題の点数は一つ一つは高くないものの、量が多いため、かなりの割合を占めていることが予測されます。
【受験者平均点と目標得点率】
こちらが、同志社大学の2020年度入試の入学統計から引用した受験者全体の平均点と合格者の平均点です。どの学部学科もおおよそ150点満点の試験では、合格するためには、100点を超えることが大きな基準となっているように感じます。200点満点の学部では、135点から140点が合格の基準となっています。これらは、150点満点になおしたときは、100点から105点に相当するので、どの学部も化学で7割を超えることが合格には必要でしょう。
学部 | 学科 | 日程 | 受験者平均点 | 合格者平均点 |
150点満点の学部 | ||||
文化情報学部 | 文化情報学科 | 全学部日程 | 90 | 103 |
学部個別 | 87 | 98 | ||
理工学部 | インテリジェント情報工学科 | 全学部日程 | 97 | 106 |
学部個別 | 79 | 91 | ||
情報システムデザイン学科 | 全学部日程 | 96 | 108 | |
学部個別 | 78 | 88 | ||
電気工学科 | 全学部日程 | 98 | 105 | |
学部個別 | 78 | 86 | ||
電子工学科 | 全学部日程 | 98 | 104 | |
学部個別 | 80 | 89 | ||
機械理工学科 | 全学部日程 | 94 | 103 | |
学部個別 | 74 | 84 | ||
機能分子・生命化学科 | 全学部日程 | 97 | 105 | |
学部個別 | 79 | 86 | ||
化学システム創生工学科 | 全学部日程 | 96 | 106 | |
学部個別 | 78 | 86 | ||
環境システム学科 | 全学部日程 | 96 | 105 | |
学部個別 | 79 | 85 | ||
数理システム学科 | 全学部日程 | 98 | 108 | |
学部個別 | 79 | 89 | ||
心理学部 | 心理学科 | 全学部日程 | 92 | 115 |
200点満点の学部 | ||||
生命医科学部 (200点満点) | 医工学科 | 全学部日程 | 123 | 135 |
学部個別 | 123 | 135 | ||
医情報学科 | 全学部日程 | 117 | 134 | |
学部個別 | 120 | 134 | ||
医生命システム学科 | 全学部日程 | 126 | 142 | |
学部個別 | 124 | 139 | ||
スポーツ健康科学部 (200点満点) | スポーツ健康科学科 | 全学部日程 | 111 | 130 |
学部個別 | 111 | 132 |
各大問の詳細とその解き方
それでは具体的に2020年度の全学部日程入試で出題された問題について説明しながら、同志社大学化学の各大問の詳細とその解き方についてみていきます。
大問1
大問1では、理論化学と無機化学を中心とした出題が多いです。2020年度全学部日程の第一問は理論化学の問題でした。エンペドクレスの「四元素説」、ジョゼフ・ブラックの「固定空気」、キャベンディッシュの「可燃性空気」など化学史を通して酸素の発見を追う本文を読んだあとに、関連する設問に答える問題でした。これまでの傾向では、ケイ素や酸素、ハロゲンなど化学基礎で学習する基本的な内容が本文として出題されおり、化学史が本文として書かれることは、同志社大学の全学部の問題としては珍しいと言えるでしょう。しかし、本文と設問は必ずしも関連するものがすくなく、本文の内容を把握しなくても解ける問題がほとんどでした。
(1)では、化学反応式を書く問題が3つ問われました。酸化水銀(Ⅱ)が水銀に戻る化学反応式はこれまで書いたことのない化学反応式だったかもしれません。しかし、酸化数の変化に着目すると、酸化還元反応であると判断して、化学反応式を書くことができます。
(2)では、気体の密度や体積比それから基本的な性質についての問題であることから絶対獲得しておきたい内容でした。
(3)は、化学史のなかで、ラボアジエが「酸素がすべての酸において必要な要素である」と言ったということを題材に、その反例を設問のなかで導かせることで、ラボアジエのこの言説が誤りであることを気づかせる問題でした。
本文同様に化学史がテーマになっていますが、それらの知識がなくても解ける問題であり、本文と設問をよく読めばそれがヒントになるような問題でした。というのも(3)(ⅱ)の設問は「イギリスのハンフリー・デービーは、塩酸を電気分解しても酸素が得られないことを示し、「酸素はすべての酸に必要な要素である」とするラボアジェの考えを否定した。塩酸の電気分解により陽極、陰極で得られる気体をそれぞれ化学式で答えよ」というもので、前半の化学史の内容に関わらず、聞かれているものは、「塩酸の電気分解をしたときに、陽極と陰極で得られる気体はなにか」というシンプルな問いであることがわかります。このように、長い問題文を短く要約する力を身につけておくことで、時間を無駄にせず高得点を狙うことができるでしょう。さらに、この設問をよく読むと、「酸にとって酸素が必要である」ことの否定として塩酸の加水分解を行っているので、この設問の答えに”酸素が入ることは絶対にない”というヒントが得られます。設問の文は、読み飛ばして要約してもいいですが、このようによく読むことでヒントが得られるということを知っておきましょう。
(4)は、過酸化水素の還元に関して、酸化数や半反応式および酸化還元反応で生じる変化の定性的な考察に関わる設問でした。(ⅲ),(ⅳ)の設問は「正しいものをすべて選んで記号で答えよ」という問題であり、反応に対しての正確な考察が求められます。選択肢ひとつひとつは難しくないものですが、それらすべてを判断するためには、網羅的な学習が必要となります。「鎌田の理論化学の講義」や「セミナー化学基礎+化学」など基礎的な内容が網羅されている参考書を繰り返すことをおすすめします。
まとめると、この第一問の解き方としては、文章を読み解く力と、網羅的な知識が必要とされます。文章がヒントになっていることがあるため、わからないときもよく読み、少しでも可能性の高い解答をしましょう。また長い問題文を短く要約して何が問われているかを簡潔に理解することで、時間を大幅に短縮できるでしょう。
大問2
例年、無機化学と理論化学の複合問題が出題されます。2020年度の第二問は、融解現象を通して、極性や融解熱について考えさせる問題で、理論化学が主な内容でした。後半は無機化学分野の内容で、コロイドが引き起こす特殊な現象についての説明でした。コロイドの分野はどの問題も暗記の問題になりやすく、この問題も例外なく覚えていれば解答できる問題でした。毎年、第二問は無機化学の問題が多いですが、理論化学の内容をその中に多く含みます。今年は、理論化学がメインだったので、ますます理論化学の割合が高くなっているといえるでしょう。
具体的に問題をみると、(1)は適切な語句を記入する問題で、化学基礎の内容と無機化学のコロイドの内容でした。これは、解けなければいけないだったでしょう。(2)は、理論化学の熱化学方程式に関わる問題でした。問題文を読み解く能力が求められており、与えられた多数の数値から適切に用いなければいけませんでした。また単位に注意しなければならず、反応熱が1molあたりの値で求められていることに気をつけなければいけませんでした。(3)は、溶解積から沈殿の生成を考える問題でした。最終的に二次関数の解の公式で求める必要がありました。基礎的ではありますが、数学の知識を使うため戸惑った生徒もいたかと思います。このように、化学の内容も物質量をxmolとおいて計算するように代数的に解く問題は、このように解の公式を解いたりと数学の方法で算出する必要があることを覚えておきましょう。また、計算の途中で必要となる√3など根号をともなう数は、基本的に問題用紙の中の第一問の上に記載されています。見落とさないように注意しましょう。
(4)は、浸透圧に関する問題でした(ⅰ)は基礎的な内容だったので、確実に正解しなければなりませんでした。(4)(ⅱ)は、浸透圧の公式を用いて2つの式を書き出し、それらを連立方程式として解く問題でした。さきほどの(3)同様、数学的に解くため、変数の数だけ式が必要であるといった基礎的な事項を確認しておきましょう。また、どれが定数で、その状況でどの数が変化して、どの数が変化しないかに着目して解くと求める値がはっきりする場合があります。(5)はコロイドの問題で、例外なく暗記の問題でした。コロイドは、暗記すればできますが、暗記するときに勘違いするポイントが多いため、正誤問題を通して、曖昧な部分をはっきりさせて覚えておきましょう。第二問の解き方としては、数学的な処理を求める事が多く、時間が一番かかる分野であるともいえます。暗記で解答できるところを先に処理をして計算問題をあとに回すことが、受験上の戦略としては有効でしょう。
大問3
例年、有機化学が出題されます。2020年度の全学部日程の第三問は、有機化学で典型的な構造決定の問題でした。元素分析をし組成式を決定し、その後分子量を凝固点降下を利用して求め、分子式を決定したのちに、官能基ならびに構造の決定をするという手順通りの問題となっています。教科書でみるような元素分析の図と少々異なりはするものの、原理的には同じです。このような典型問題は、文章をくまなく読まずとも概観がつかめるようになっているべきです。
(1)の空所補充の問題は、考えずに埋められて、(2),(3)の組成式及び分子量の計算は、見た瞬間に手が動くようになっておきましょう。そうすれば、(1)から(4)までに他の受験生と比べて大きなアドバンテージとなっていたでしょう。同志社大学の全学部化学の第三問は例年、前半部分は基本的な暗記事項が問われます。ここを素早く解くことが大切です。また(5)(6)も、覚えていればかける内容が多く、有機化学といっても知識が重要な問題となっていました。オゾン分解は、高校の化学の内容を超えており、理解するのに時間がかかる受験生がいたかもしれません。このように、高校の範囲外の内容を利用して解かせる問題では、反応の仕組みや途中の過程(ここでは中間体など)については理解する必要はないので、「”何”から”何”に変化する反応か」だけを見て、無駄に理解をしようとして時間を費やすことのないようにしましょう。
最後に(7)、(8)の問題は、構造決定が少々難しい問題であったかもしれません。(5)で求めた官能基の条件から、徐々に候補を絞っていく必要がありました。パズルのように原子を配置していき、考えられる可能性を余すこと無く書き出すことを繰り返しながら、それを問題文で与えられた数値と合うかを一つ一つ検証することで求めることができます。少々難易度は高かったにしろ、前半部分を素早く解くことができれば、最後の問題にじっくり時間をかけることができたため、第三問で合格点を取る鍵は基本事項の習得にあったとも言えます。典型的な問題が多く、全体の概観がつかみやすい大問であるといえます。まとめると、第三問の解き方は、前半部分の基本問題をどれだけ早く正確に解き、どれだけ応用問題に時間を残しておくかが大切です。有機化学の問題のパターンは多くはないので、参考書にある問題を繰り返し、素早く解く練習をしておきましょう。
大問ごとの学習・対策方法
大問1
文章を読み解く力と、網羅的な知識が必要とされます。この力を身につけるためには、網羅的な問題集を何周もこなす事が必要です。また過去問を複数解くことで文章から適切に読み解く練習をすることが大切です。教科書の内容を一人で読めるようになれば、問題文でつまづくことも少なくなるでしょう。
大問2
数学的な処理を求める事が多く、時間が一番かかる分野です。数学的な処理を速くするためには、演習の量を増やし、計算を速くすることと、思考する時間を減らすことが考えられます。これらは、化学の基本的な問題集を繰り返ししていれば必ず身につきます。具体的に何周するのかを決めるのではなく、一問5分のように目標時間内に終わらなければ繰り返しするというようにストイックに問題をこなす必要があるでしょう。
大問3
前半部分の基本問題をどれだけ早く正確に解き、どれだけ応用問題に時間を残しておくかが鍵になる大問です。大問3も、大問2と同様、思考する時間を減らして、すぐに書き出せるようにする必要があります。社会の科目のように時間をかけながら思い出すのではなく、英単語のような瞬発力で答えられるまで繰り返しましょう。場合によっては、フラッシュカードのようなものに書き出して、一問一答形式で覚えていくのも同志社大学の対策としては良いでしょう。応用問題も、基礎の問題ができていれば時間をかけて解ける問題ですので、時間に余裕を持ってじっくり考えられるように、基礎を問題集などで補っておきましょう。
全体のまとめ
全体をまとめると、同志社大学の化学は、3つの大問で構成されており、大問1が理論化学および無機化学、大問2が無機化学、大問3が有機化学という構成になっています。しかし、どの大問でも理論化学の内容が絡んでいることが多く、無機化学・理論化学複合問題、有機化学・理論化学の複合問題がよく出題されます。そのため理論化学の網羅的な学習が必要であり、過去問などで長い問題文を速く読み解く練習をする必要があるでしょう。大問2では数学的な処理が多いため、試験時間に不安がある場合にはこの大問を後回しにして知識問題を落とさないということが必要になってきます。演習量を増やし、なるべく速く解くことをこころがけて対策していきましょう。大問3では、前半の基本的な問題を速く解いて応用的な内容をじっくり考えて解くことが大切です。
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