関西の難関私立大学である立命館大学。立命館大学を志望し、受験勉強を進めている受験生も多いと思います。この記事では立命館大学の化学入試について、入試概要や対策方法などの合格するために必要な情報をまとめています。立命館大学の合格を目指している方は是非参考にしてみてください。
立命館大学の化学について
関関同立の一角、立命館大学の化学試験について記述していきます。今回は、2020年度の全学部統一入試における化学の試験概要を見ていきましょう。
【試験概要】
- 試験時間: 80分
- 配点: 100点
- 問題数: 約33問
- 出題形式: 基本的には数値を求める問題や選択肢の中から答えを選ぶ問題。論述問題が1題出題される年もある。
- 問題構成: 大問4題(大問1と2は理論化学と無機化学、大問3と4は有機化学)
【近年の傾向】
年度 | 大問 | 分野 | 内容 |
2020 | Ⅰ | ソルベー法(無機) | ソルベー法(アンモニアソーダ法)に関連する物質や化学反応に関する問題 |
Ⅱ | 電離平衡(理論) | 硫化水素の電離平衡をもとに硫黄の性質や電離平衡、溶解度積に関する問題 | |
Ⅲ | 蒸気圧と構造決定(理論、有機) | 飽和蒸気圧を利用して有機化合物の分子量を求めて構造決定する | |
Ⅳ | 構造決定(有機) | 1.脂肪族、芳香族の有機化合物の構造決定 2.高分子化合物の問題も一問出題されている | |
2019 | Ⅰ | 熱化学(理論) | 熱化学、中和滴定などの理論化学の複合問題 |
Ⅱ | 浸透圧(理論) | U字管と半透膜を用いた浸透圧の問題 | |
Ⅲ | 構造決定(有機) | 脂肪族の構造決定 | |
Ⅳ | 構造決定(有機) | 基本芳香族の構造決定だが合成樹脂の問題も出題された | |
2018 | Ⅰ | 2族元素(無機) | 2族元素の性質などが問われて、中和滴定についても関連させて出題された |
Ⅱ | アンモニアについて(無機、理論) | アンモニアの性質や製法に関連させて平衡についての知識も問われた | |
Ⅲ | 構造決定(有機) | 脂肪族の構造決定 | |
Ⅳ | 構造決定(有機) | 芳香族の構造決定 |
【各大問で出題される問題】
大問1
無機分野が出題されることと理論分野が出題されることがあります。無機分野ではある物質や反応に着目してそれに関連した問題が出題されます。理論分野では一つテーマが与えられてその分野の典型パターンが出題されています。分野がまたがることもありますが基本的にはその関連事項の分野しか出題されません。例えば熱化学の問題で中和熱を測定するために中和滴定を小問で問うことはあります。しかしどの分野でも基礎が固まっていれば複合問題になっても苦労はしない問題になっています。
大問2
大問1と大問2で無機と理論の分野を出題する形になっていて出題傾向は大問1と殆ど変わりません。ただ無機の知識のみを問う問題は少なく何らかの理論分野に絡めてくることが多くなっています。理論分野単体で出題することも少なくはありません。
大問3
脂肪族の構造決定を出題しています。入試に頻出の基本的な構造決定の問題となっており、有機分野の基本的な知識と構造決定の際の事柄を整理する能力を問われています。分子量を求める際に蒸気圧を用いて測定する方法が問題になったり理論の知識を活用することも稀にありますが有機の知識と構造決定の問題をうまく解く力があれば対応可能です。
大問4
芳香族の構造決定を出題されています。芳香族に関しての大問3の能力が問われることに変わりはないですが大問3か大問4で高分子化合物に関する問題が小問で1問か2問出題される年もあります。
【各小問で主に求められる能力】
(1)理論化学
熱化学、酸化還元、酸塩基などテーマは年によって異なりますが、どの問題も受験化学において基礎的な操作ができれば解ける事が多くなっています。受験化学用の参考書を一冊きちんと仕上げておけばほとんどの問題に対応可能です。無機化学や有機化学を題材とした問題の中に小問として出題されることもあるので過去問などで複合問題に慣れておくことも重要です。
(2)無機化学
無機化学の中でもある一つの分野を題材としてそれに関連する知識を問われています。受験化学の中では一般的な無機の知識が問われるので無機の各分野の基礎知識をまとめた講義系の参考書の内容を一通り暗記できていれば正誤問題などにも十分対応することができます。
(3)有機化学
大問3,4で出題される有機化学ですが、基本的には構造決定の問題がほとんどで構造決定の問題をスムーズにできるように演習を重ねる必要があるでしょう。
【各大問・小問の配点(概算)】
- 大問1
- 28点
- 小問8問
- 大問2
- 24点
- 小問6問
- 大問3
- 23点
- 小問6問
- 大問4
- 25点
- 小問8問
※入試年度や日程、設問数などによって配点に差があります。
【受験者平均点と目標得点率】
立命館大学の化学は、受験者平均点が約5割5分、合格者の平均点は約6割5分です。これは年度や入試日程によって差がありますが、過去問演習をする際には6割以上は獲得できるようにしておきたいところです。
大問ごとの問題について紹介+解き方紹介(2020年)
各大問ごとに問題内容の詳細と解き方について紹介します。
大問1
アンモニアソーダ法についての問題。小問は[1]〜[8]まであります。
[1]
冒頭の文章の反応a,bで発生する気体の発生装置と補集方法を選択する問題です。各気体の加熱が必要かどうかや水に溶けるか、空気より軽いかなどの一覧表を体系的に暗記することで基本的な気体について聞かれた時ならどんな問題でも対応することが可能です。
[2]
化学反応での酸化数の変化を求める問題で、覚えるべき元素の酸化数さえ覚えていれば一つの化合物の酸化数を足すと0になるという事実を用いれば全ての元素の酸化数を求めることがでます。この問題もそれさえ覚えていればどんな類題でも解くことが可能です。
[3]
アンモニアソーダ法の5つの主な反応についての問題で5つの化学反応式を書くことさえできれば穴埋めが可能です。それぞれの反応の役割はわからなくても反応式さえ暗記していれば問題ありません。
[4]
乾燥剤についての問題です。乾燥剤を用いるとき酸塩基反応などが同時に起こると都合がよくないので、その他の反応が起こらないような乾燥剤を用いる必要があります。基本的な乾燥剤についての知識があれば答えを出すことが可能です。
[5]
空気中で水分を吸収したり、放出したりする過程の名称を答える問題です。この風解と潮解については炭酸ナトリウムと水酸化ナトリウムでしかほとんど問われることがないのでピンポイントな知識として覚えておく必要があります。
[6]
アンモニアソーダ法について、反応させる順番についていくつかの用語を用いて記述する問題です。立命館の化学には珍しい記述問題である上に、アンモニアソーダ法の反応機構をきちんと理解しておく必要があるのでやや難易度が高い問題になっています。
[7]
アンモニアソーダ法の一つの反応についての反応機構を選択肢から選ぶ問題で、反応式を立てることができれば酸と塩基の反応であることがわかるので選択肢から選ぶことが可能です。
[8]
アンモニアソーダ法の5つの反応を組み合わせて結果的にどのような化学反応式を立てれるかが理解できたらあとはモル計算で答えを出すことが可能です。
大問2
主に電離平衡の問題。小問は[1]~[6]まであります。
[1]
アミノ酸のなかで硫黄を含むシステインが分子間で作るジスルフィド結合を答える問題です。高分子の問題だが基本問題なのできちんと勉強していれば解答可能です。
[2]
硫化水素と二酸化硫黄の酸化還元反応の反応式を答える問題で、それぞれの半反応式を書くことができれば、電子を消去することで反応式を完成させることができます。
[3]
加硫に関する問題で、これも高分子の範囲となるが基礎的な範囲なので答えることができるでしょう。
[4]
硫黄元素の検出方法を選択肢から選ぶ問題でこれもアミノ酸の範囲だが酢酸鉛を加えると黒色の硫化鉛が析出するのでそれさえ知っていれば他の選択肢と迷うことはないでしょう。
[5]
硫化水素の電離平衡の中の硫化物イオン濃度を求める問題と溶解度積についての問題です。硫化水素の二段階の電離平衡の式から硫化物イオン濃度を求めてそれを用いて各金属イオンと硫化物イオンの溶解度積から沈殿が生成するかどうかを判断する内容となっています。
[6]
モール法に関する問題でさらに小問2つに分かれています。一つ目はモール法が中性条件下で行われる理由についての問題でこれは中性状態でないと行いたい反応と他の反応をさせないためであり選択肢を見て考える必要があります。二つ目は数値計算の問題でモール法の仕組みを理解していればあとは計算をするだけとなっています。
大問3
蒸気圧を用いて分子量を測定してそれを用いて構造決定を行う問題。小問[1]~[5]まであります。
[1]
穴埋め問題で、混合気体中ではモル比と分圧比が一致することを知っていれば解ける問題である。
[2]
穴埋め問題でモルと分子量の関係がわかっていれば容易にわかる問題である。文章を読み取って単純な内容であることを見抜くことが重要になってくる。
[3]
さらに小問2つに分かれている。1つ目は沸点の時蒸気圧が大気圧と一致することと分圧の和が全圧となることを知っていれば解ける問題である。2つ目は[2]の式を利用して数値を代入すれば分子量が求まる。
[4]
[1]~[3]の過程で実際に構造決定に用いる化合物の分子量を求める。誘導に乗ることができれば答えを出すことができる。
[5]
与えられた条件からオゾン分解の分解後の化合物を推定する。冷静に条件を整理すれば答えを導くことができる。
[6]
オゾン分解後の2つの物質からもとの化合物を推定する。シストランス型についても理解しておく必要がある。
大問4
高分子についての総合的な問題。小問は[1]~[8]まであります。
[1]
化学結合と沸点の関係についての問題です。沸点は分子間の結合の強さに依存することがわかっていれば解ける問題となっています。今回の場合分子間に水素結合が働くことを見抜く必要があります。
[2]
脂肪族の構造から沸点が高いかどうかを判断する必要があります。それには水素結合が関連していることが多く、アルコールは分子間に水素結合を作りますが、エーテルは水素結合を作らないことを知っていれば解くことが可能です。
[3]
与えられた分子量から考えられる構造を書き出してAとDがアルコールとエーテルであることを考えると、残りの化合物にはカルボニル基があることは推定することができます。構造決定の問題で必要な整理する力が問われています。
[4]
無機の問題で、銀イオンは塩基性にすると酸化銀が生成され、アンモニアを過剰に加えると錯イオンを作り再び溶けることを知っていればAg2Oを導くことは可能です。
[5]
文章の条件から化合物A、E、Hの構造を推定します。構造決定の基本的な問題で、整理する能力が問われています。
[6]
環状の化合物の数を数え上げる問題で、不飽和数と環の関係を把握したうえで、数え漏れがないように確実にする必要があります。
[7]
高分子の問題でアクリル酸からアクリル酸ナトリウムを作り、高吸水性樹脂であるポリアクリル酸ナトリウムが作られる過程を理解しておく必要があります。教育課程の最後の方に出てくるおろそかにされがちな高分子の分野で少し深い知識を問われているので最後まできちんと理解しておく必要があります。
[8]
芳香族の知識が問われています。フェノールを作る途中でアニリン塩酸塩を作る際の還元反応が還元であることを把握しておく必要があります。
大問ごとの学習・対策方法
(1)理論化学
有機や無機分野の問題でも複合的に出題される事が多くなっています。また出題される分野に偏りもあまり見受けられないのでどの分野の大問が出題されたとしても対応できるだけの基礎力をつけておく必要があります。ただかなり煩雑な計算問題が出題されるわけでもないので受験化学における頻出の問題のパターンを知り、解けるようになっておくことで立命館の理論化学は十分に対応できるようになります。受験レベルの化学の問題集を一冊きちんと仕上げて計算をスムーズにできるようにしておけば決して恐れる程のレベルではなくなるでしょう。問題集を仕上げることができればあとは過去問を解くことで出題傾向に慣れておくことも重要です。
▼おすすめの参考書
- 化学重要問題集
(2)無機化学
無機化学中心の大問が出題されることも多く、決して侮ることのできない分野です。ただ基本的なレベルの暗記ができていれば十分に対応できるレベルです。理論化学や有機化学とは違って知識さえ入っていればすぐに答えが出る問題が多いので確実に知識を蓄えておく必要があるでしょう。ただ物質などを暗記するだけでなく反応機構なども一緒に絡めて覚えると対応できる問題の幅も広がります。講義系の参考書を一冊きちんと暗記するとかなり解ける問題が増えるでしょう。あとは実際の問題形式に慣れる必要があります。
▼おすすめの参考書
- 化学重要問題集
- 鎌田の無機化学
(3)有機化学
大問の4つのうち2つを占めていることが多く、得点源にするべき分野です。構造決定をさせる問題が多く情報を整理してきちんと正しい答えを導く能力が必要となります。構造決定の問題は有機分野の知識を定着させることももちろん重要ですがそれ以上に問題をたくさんこなすことで解けるようになってくるケースが多いのでなるべく早く知識を定着させて問題を多く解く必要があるでしょう。高分子の問題が小問で数問出題されているが構造決定に直接かかわってくるケースはあまりないので優先度としては低くなるのかもしれません。脂肪族、芳香族の構造決定をスムーズにできるようになることで得点源にすることが可能です。講義系の参考書で知識を固めた後に問題演習を多く行えばよいでしょう。
▼おすすめの参考書
- 化学重要問題集
- 鎌田の無機化学
全体のまとめ
関関同立の立命館大学の問題ということで難しく感じる人もいるかもしれないですが受験化学のレベルの基礎が身に付けば十分に戦えるレベルの問題となっています。化学は理論、無機、有機の各分野で勉強法は異なってきますがそれぞれで基礎知識を身に付けて問題演習を重ねることで合格への道も見えてくるでしょう。
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